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第十一話~執務室にて~

寒い!!


3月12日:加筆しました

「報告します。桧並教官への伝令、完了致しました。市街地に出現したワイバーン討伐に向かった学生団員は重傷を負いましたが、命に別状は無いそうです」


若い男性団員の報告を聞き、私は思わずため息を吐く。

未来ある学生が危険な魔物と戦うと云うのは、やはり気持ちのいいものではありませんね。いくら自ら志願したといってもまだその幼い心に負担が掛かるのは避けたいのですが・・・。


「分かりました、学生団員の方達にはカウンセリングを行ってください。いくら普段から魔物と戦っていても、心に負担は掛かりますので」


「了解しました」


「それと、市街地と市民の被害状況、及びイレギュラーゲート原因解明はどうなっていますか?」


そう、今回のワイバーン出現は普段本部内の専用戦闘エリアに出現するはずのDゲートが市街地に出現した事により発生したもの。(予期せぬ場所に突如として発生する場合、これをイレギュラーゲートと呼ぶ)早急に原因を解明しなければ開拓団の信用に関わります。Dゲートの管理、及び調査と解明を目的としていると大々的に宣伝してしまっているが為に今回のような事があるとマスコミや世間からのバッシングは最早逃れられません。

はぁ、暫くは家に帰れないでしょう。八十代後半の老婆を馬車馬のように働かせるあたり、中々開拓団もブラックな職場のようですね。


「はい。今回のイレギュラーゲート発生の原因は未だ不明、市街地の被害状況は中心部の建物の倒壊が六棟、ゲート発生地点の公園は遊具などの建築物の損壊が多数。市民への被害は死者八名、重傷者十七名、軽傷者二十五名です」


表情一つ変えずに淡々と事後報告をする団員。

何故この方はこうも冷静でいえられるのでしょう。何の罪も無い一般市民が亡くなったというのに。いや、本来トップに立っている私こそ冷静に物事を判断していかなければいけないのでしょう。どうも私には、玉座にふんぞり返って指揮をとるようなことには向いていないようですね。それにこの方、優秀では有りますが信用は出来なさそうです。

其れにしても亡くなった方の人数が多いですね・・・いや、突然の事にしては、寧ろ少ないのでしょうが。


「これも全て我々の力不足が招いた結果ですか・・・。遺族の方々には、私の方で謝罪とお悔やみの手紙を書きますのでそちらを渡して下さい。市街地復興まで、どれくらい掛かりそうですか?」


「倒壊した建物の撤去だけでも最低一ヶ月は掛かるかと。完全に持ち直すまで数ヶ月は掛かると思われます」


「撤去だけで一ヶ月ですか・・・あそこにはマンション等も多く建ち並んでいたので仮設住宅の配備を急いだ方がいいですね・・・。分かりました、報告御苦労様です。通常任務に戻ってください」


「失礼します」


短く言うと彼は執務室から出て行った。


「其れにしても、前回のスタンピードよりまだ六十年しか経っていないのですが、何故イレギュラーゲートが出現したのでしょう?」


そこが気になるところなのですが、スタンピードに関しての情報が少な過ぎて予測を立てる事すら出来ていないのが、今の現状。辛うじて分かっているのがスタンピードが最低百年以上の間を空けて起こると言うこと。スタンピードの前兆として、イレギュラーゲートが出現することの、二つしか解っていません。


「これは、異界組の団員を増やすべきでしょうか、それとも、イレギュラーゲートに備えるべきか、これは慎重に思案する必要がありそうですね」


その時、執務室のドアが、ノックされた。


「団長、桧並です。此度の騒動で避難誘導をした者達を連れて参りました」


そうでした、今回の騒動に一役かってくれた方達に、お礼をするために呼んだのでした。


「どうぞ、入ってください」


「はい、それから、一つ一つご報告が」


報告?なんでしょうか?それに執務室に入ってからでも良いのでは?


「どうぞ、中へ入ってください。報告は中で聞きますから」


「いえ、その、ここであらかじめ話しておきたいのですが・・・」


執務室に入る前に話しておきたいこと?何でしょうか?


「分かりました、どうぞ」


「有り難う御座います。それでは、今回の騒動でイレギュラーゲート発生時に公園にいた女児がどうしても団長に会いたいと申していまして、その子の話を聞く限り、有益な物と判断してので今ここに、連れてきているのですが、一緒に入室してもよろしいでしょうか」


「どうぞ、お入りになってください。小さな女の子がいるくらいで私は怒りませんよ」


早く仰ればいいのに。子供好きな私としては元気にはしゃぐ子供を見ているとパワーをもらえる気がして頑張れるのですが。


「有り難う御座います。それでは、し、失礼しまりまするッ!!」


!?


「す、すみません!!失礼します!」


今のは一体?

そう言うと、彼女達は緊張した面持ちで執務室に入って来ました。





~遡ること十数分前~


「いいか、貴様ら。万が一にでも団長の前で粗相をしてみろ、もしそうなったら・・・・・わかっているな?」


「「ひっ・・・」」


きょ、教官の目が座ってる・・・。あれはガチの目だ、本当に殺りかねん。絶対に粗相をしないようにしよう。


「「・・・」」コクコク


ーーこのとき、全員の心は固い絆で結ばれた。迂闊に教官に団長の話を振ってはいけない、と。


「そ、そろそろ行きませぬか?余り待たせるのもどうかと思いますれば」


なんか変な喋り方になったぞ、俺。緊張すると敬語になるってのは聞いたことがあるが、これ、敬語なのか?


「そ、そうだな!い、急ぐとしよう」


そう言うと、ギギギギギギと擬音が聞こえて来そうな動きで教官は歩き出した。


・・・大丈夫か?この人?

俺は今更ながらこの人も大概ポンコツだと言うことを知った。


今いる避難所──学園内の応接室(本来は演習場。琥太郎達は今回避難誘導を行った為、演習場での質問攻めを考慮しての措置となった)から本部までは徒歩五分程度の距離にある。何なら、本部の方に避難しても良かったんじゃ?と思うかもしれないが、本部まで5分で行けるのは、"転移門"という特殊な門を使用したときだけで、本来はもっと時間が掛かる。それに加え、開拓団員の個人情報や、異界の調査書、異界で発見された植物等、一般市民に見せられない物が本部には多数管理されている。団員のプライベート及び、機密保持の為に避難所とすることが出来ないらしい。


「あ、そういえば」


俺には一つ、気になってることがある。


「どうかした?」


こてん、と首をかしげる麗奈。ナチュラルにこういう仕草の似合う女子は貴重だと思う。ぶりッ子が今の仕草をすると吐き気がするが、麗奈がするとよく似合う。あ、皐月も似合いそうだな。


「琥太郎?」


「ん?あぁ、すまん」


「何をうんうんと頷いているんだ?」


「えっ、頷いてました?」


「自覚が無いのですか?」


「あぁ、全く気付かなかった」


マジで?頷いてたのかよ、ひょっとして俺って行動とか顔に出やすいのか?


「子供の成長を見守る親みたいだったで?」


「ん?」ニコッ


「ピッ・・・」ビクッ

「ピッ・・・」ビクッ


鳥みたいな声を出して震える宗。学習能力が無いのか?お前は。それに雅也。お前まで何故震える。完全にトラウマになってんぞ。


「・・・」ブルブル


・・・あんたもか、教官。


「そ、その辺にしてあげて下さい。皐月の事を言っている訳では無いのですから、ね?」


「そ、そうやで!例えでそう言っただけで皐月の事や無いで!寧ろ誉めこtーーひでぶっ」


その場に崩れ落ちる宗。鳩尾に見事なボディーブローを決めた皐月は天使のような笑顔でこう言った。


ゴミ()は捨て置いて、行こっか?」ニコッ


「「は、はい・・・」」


マジで怖ぇわ、皐月。怒こらせないようにしよう。


「って、そうじゃなくて。聞きたいことがあるんですよ、教官に」


「私にか?なんだ、言ってみろ」


「度々話の中で、()()って出てきますよね?それじゃあ、()()があるということです。だけど今まで何処かに支部があるなんて聞いたことがないのですが、何処にあるんですか?」


そう、本部があるなら支部もあるはず、けれどそんな物があるなんて聞いたことは一度もない。そこがずっと気になっていたのである。


「あ、そういえばそうですね・・・」


「今まで全く気付かへんかったなぁ」


「確かにその通りだな」


「じゃあ、何処にあるのぉ?」


皆も気になるようだ。でも、一応これも開拓団から開示されていない情報。答えて貰えるかどうかは、分からない。まぁ、入団すれば判るだろうし、そこまで気にしてないんだけどな。


「それは・・・」


やっぱ言えないのだろうか?まぁ、無理ならしょうがないか。


「異界」


「へ?」


「異界、本部の支部があるところ。通称"冒険者ギルド"」


「え、何で知ってんのお前?てか、これ言っちゃって良いのか?」


「なな、お前はアホか!駄目に決まってるだろ!」


「おい、駄目じゃねぇか」


「そうみたい」


「『そうみたい』、じゃないだろ!?開拓団の機密情報だぞ!?何でお前が知ってるんだ!?」


え?そうなのか?じゃあ、何で知ってんだ?


「お母さんが酔ってる時に聞き出した」ドヤァ


そう言ってVサインをする麗奈。

・・・最早呆れて物も言えねぇ、機密情報駄々漏れじゃん。


「教官、何やってんすか・・・・」


「うっ・・・」


ーーまた一つ、教官のポンコツ伝説が増えた。



「ここが・・・」


俺は余りの光景に言葉を失う


「どうだ?すごいだろ?ようこそ、開拓団本部へ」


誇らしげに語る教官。まぁ無理もない、これほどの物を拝むことになるとは。


まず、だだっ広い。とてつもなく広い。地平線が見える程度には広い。下手な国立公園より余裕で広いんじゃないか?

次に、敷地全体がフェンスで囲まれており、よく見るとそのフェンスにも何が書き込まれていた。呪文か何かか?

そして、フェンスを越えると広がる林。そう、敷地内をぐるッと一周林が囲っているのだ。それに、遠くの方に森?それとも森林か?よく見えんが林とは別に山のような物も見え、ほかにも岩山のような所、湖のような所等、色々見える。

敷地面積に比例してるのか知らんが、正門も馬鹿みたいにでかい。高さ20m、横幅10mくらいあんじゃね?

此処までで、既に本部の凄さがお分かり頂けただろうが、まだ序の口。

先ほど学園から歩いて五分と言っただろう。訂正しよう。正しくは()()()()()()()()()から五分の距離に学園があるのだ。決して学園が小さい訳では無いのだ、学園のグラウンドだけでも東◯ドームくらいある。グラウンド()()でだ。演習場や工房、学舎等を会わせれば東◯ドーム10個程度は入るだろう。その学園さえも、本部と比べれば小さい小さい。本部の建物は4つはどある。

一つ、任務の受注、福利厚生、市民等の一般客を受け付けるメイン棟。

二つ、異界の植物や生物の研究をする、【生物研究棟】

三つ、魔物に対抗する武器や、色彩術の研究をする、【工房】

四つ、異彩の研究、及び団員の治療を行う、【医療院】

五つ、開拓団員の宿舎、【寮】

以上の五つが主な建物だ。これに加え、さっきの森林や岩山、湖などの、フィールドに監視塔があるらしい。何故監視する必要があるかと言うと、魔物を放し飼いしているらしい。魔物の保護区なようなもなだ。と、教官が自慢げに語っていた。別にそこまで聞いてねぇよ。

で、そんなもんを見た俺達は。


「「・・・・」」ポカーン


揃って口を空けて呆けていた。


「ふっふっふっ。すごいだろ?すごいだろ?」


さっきから教官がうるさい、子供かあんたは。

そんな事を考えていた俺はある意味当然の疑問を思い付く。


「ん?おかしくないですか?こんだけだだっ広いのに、外から見たら普通の役所みたいに見えてたんですけど・・・」


そうなのだ。普通これだけ広ければ遠くからでも判るだろうし、第一開拓団の本部は市を跨いでいないらしい。明らかに物理法則に喧嘩を売っている。


「あっ、私もそう思っていたんです。開拓団の本部は市を跨いでいないと聞いて居たのですが、どうみても市よりも広い敷地を疑問に思っていまして」


「あぁ、俺もだ。明らかに物理法則に逆らっているだろ、これ」


「皐月、全然気付かなかったよ・・・」


「わ、わいも広さに圧倒されて考えもせんかった・・・」


「こはるも・・・」


やはり皆も疑問だったようだ、一部を除いて。あ、こはるはしょうがない、子供だからな。


「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれた!教えて欲しいか?教えて欲しいのか?ふふっ、仕方がないなぁ、そんなに教えて欲しなら仕方ない。教えてやろう。ふっふっふっ」


「・・・」


う、うぜぇ・・・。とてつもなくうざい。

見ろ、他の皆もジト目になってるぞ。ありゃりゃ、こはるにまで白い目で見られてる。


「仕方がないならいいです。本部の団員さんに教えてもらうので、黙ってください」


「じょ、冗談だ!嘘!嘘だからぁ!お願いします聞いてください!」


ーーこの時、当初抱いていた教官への尊敬や、しっかり者のイメージは完全に瓦解した。


駄目だ、子が子なら親も親だわ。もう諦めた。


「・・・はぁ、分かりました。どうぞ、話してください」


なので俺はとっとと、喋らせることにした。


「ここの敷地が内と外で見え方が違うのは、フェンスに秘密がある」


「勿体ぶらないで下さい」


「いいだろう、それはfーー「フェンスに刻まれている色彩刻印の効力よ」ーー何でまたお前が!私が言おうと思っていたのに!それに、これも機密事項だぞ!何処で聞き出した!」


またしても麗奈に美味しいところを持っていかれた教官は麗奈に詰め寄る。てか、これも機密事項なのかよ。学生の俺らに言って良いのか?


「お母さんが酔ってる時に自慢げに語ってた」


「ですよねー」


やっぱ駄目だわ、この人。


「うっ・・・。お酒、止めようかな?私」


俺や皆から向けられる呆れを含む眼差しに、さすがの教官も居心地が悪いようだ。


「と言うか。教官、今さらっと機密事項俺らに言おうとしてました?」


「あっ・・・」


「「はぁ・・・」」


「い、今更一つも二つも変わらん!」


「一つでも駄目に決まってんだろうが!!」


・・・よくこんなんで教官やってられるな、この人。


「まぁ、いいです。それよりも早く行きましょう。これ以上言っても無駄なので」


「何か私の扱いが雑になってないか?」


「いいから行きますよ」


そして時は現在。執務室に入室した所だ。


一体どんな厳つい爺さんかと思ったら五十過ぎくらいの御婦人が執務室の椅子にゆったりと座っていた。

とても優しそうに微笑んでいる。若い頃は相当な美女だっだろうことが窺える。


「どうぞ、お座りになってください。今回は皆さんに御礼をするためにお呼びしたのですから」


この御婦人が本当に団員なのだろうか。とてもそうは見えないが。それから互いに自己紹介を終えたあと、こはるが突然声を上げた。


「さえこさん?」


ん?どうしたんだ、突然?


「あら?貴方はもしかして、歩道橋の・・・、確か、こはるさんだったかしら?」


「うん!さえこさんだよね!」


「まぁ!覚えていてくれたのね?嬉しいわ」


そう言って微笑むさえこさん。知り合いなのか?二人は。


「あ、ごめんなさい。少し嬉しくて、何故こはるさんがここに?」


「この子がイレギュラーゲート発生時に公園にいた女児なんです」


「まぁ、そうでしたか。大変でしたね?こはるさん、所でお母さんはどちらに?」


「っ!そ、それは・・・」


思わず言葉を詰まらせる。こはるの前で堂々と言って良いのだろうか?いや、こはるは母親の死を乗り越えようとしている。だったらハッキリと言うべきなんじゃないか?


「こはるの母親は・・・」


決意を固め、言葉にしようとしたその時。


「こはるのお母さん、死んじゃったの・・・」


今にも消え入りそうな、泣き出しそうなか細い声で、こはるは自身の母親の死を告げた。


「「っ!」」


「こはる・・・」ギュッ


思わずこはるを抱き締める。今はこうしてあげないといけない。そう思った。


「う、ううぅ、お母さぁん・・・うぅ」ポロポロ


そうだよな、まだやっと母親の死を認識した所なんだ。まだ、乗り越えた訳じゃない。


「よく、頑張ったな。偉いぞ、偉い。だから好きなだけ泣いていい」


こはるの頭を優しく撫でる。この子はとても強い子だ。だけど今はこのままでいいと思った。


そのままこはるが泣き止むまで俺はこはるを抱きしめ続けた。




「そうですか・・・こはるさんのお母さんは、もう・・・」


「はい、この子を庇って」


「すみません、私の配慮が足りませんでした。さぞ、辛かったでしょう」


そう言ってさえこさんは泣きつかれて、再び眠ってしまったこはるを見やる。


「いえ、こはる自身も母親の死を乗り越えようとしています。なので、こはるの事をどうか気にかけて下さりませんか?あったばかりで厚かましいのは分かっています。ですが、どうかお願いできないでしょうか、お願いします!」


そう言って、俺は頭を下げる。


「私の方からも宜しくお願いします」


澪が頭を下げる。


「わい、、、僕の方からもお願いします!」


宗も頭を下げる


「皐月もお願い!こはるちゃん今とっても寂しいの!だから、お願いします!!」


「自分の方からもお願いします」


皐月も、雅也も頭を下げる


「・・・」ペコッ


麗奈も、言葉こそ発しなかったが真剣な表情で頭を下げる。


「みんな・・・ありがとな」


俺は改めてさえこさん、いや、団長に向き直る。


「こはるの面倒は俺が見ます!なのでどうかお願いします!!」


「「お願いします!!」」


「皆さん、頭をあげて下さい。そんな事をしなくても、こはるさんの事をむざむざと見捨てるわけがないでしょう?」


「そ、それじゃあ・・・」


「えぇ、こはるさんのこと全力で支援させて頂きます」


「有り難う御座います!」


「やったね!こはるちゃん!」


「これでひと安心ですね」


「よかったぁ・・・」


「あぁ、本当にな」


「琥太郎さん」


突然名前を呼ばれ、思わず姿勢を正す。


「は、はい!」


「これからこはるさんは様々な苦労をする事になるでしょう。」


「は、はぁ」


突然なんだ?


「琥太郎さんはこはるさんにとって心の支えになってほしいのです。貴方にこの子を支えて行く覚悟はお在りですか?」


「っ・・・」


こはるを、支えて行く・・・。俺には覚悟はあるのだろうか?この子はこれから苦労する。それは俺が身を持って体験しているからよく分かってる。そんなこはるを支えに行けるだろうか?


ふと、その時、俺の里親であり、師でもあった義父の顔が思い浮かんだ。もうこの世にいない、もう一人の父親の顔が。


バチィィン!!


頬を強く叩く。

何を怖じ気づいてるんだ、覚悟はとっくに決まってるだろ!


「はい、あります。こはるをこれから支えて行きます、どんなことがあっても」


真っ直ぐと俺は団長を見据える。


「・・・はい、その志し、しかと受け止めました。こはるさんを宜しくお願いします」


そう言って頭を下げる団長。


「頭をあげて下さいって、逆に緊張しますから!」


「ふふっ、それでは頼みましたよ?」


さっきまでの緊張した雰囲気は霧散し、先ほどの団長に戻っていた。


・・・全く、喰えない人だな。


「はい」


こうして、団長との対面は無事終了した。

お読み頂き有難う御座います!!

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