桃から生まれた桃子
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。すると、洗濯をしていたおばあさんのもとに「どんぶらこ~どんぶらこ~」と大きな桃が流れてきました。おばあさんは桃を家に持ち帰ることにしました。
おじいさんが山から帰ってくると、さっそく大きな桃を切ってみました。すると、なんと中ならそれはそれは可愛らしい赤ん坊が出てきたではありませんか。おじいさんとおばあさんはこの赤ん坊に「桃子」と名付け大切に育てました。
時は流れ、桃子は美しい娘へと成長しました。
この頃、近くの村々で鬼が暴れているという噂が流れておりました。桃子が住む村の人々もいつ自分たちの村が襲われるか気が気ではありませんでした。
「おじいさん、おばあさん。話があります」
「どうした桃子よ」
「私は鬼退治に鬼ヶ島に行こうと思います」
「なんと!」
「どうしてお前がそんな危険な真似を!」
おじいさんとおばあさんは桃子の考えに反対しました。
「私はこの村が大好きです。この村を守りたいのです」
しかし、桃子の決意を固く、とうとうおじいさんとおばあさんは桃子を行かせることにしました。
「では、行って参ります」
「気をつけて」
「必ず帰ってくるんだよ」
「はい」
桃子は袴姿で腰に特製のきびだんごを携えておりました。
桃子は鬼ヶ島に向かって旅に出ました。
道中、1匹の犬と出会いました。
「やあ、桃子。どこへ行くんだい?」
「鬼ヶ島に鬼退治に行くところよ。もし良かったら、私と契約して一緒に鬼退治に行かない?」
「いいともいいとも」
桃子は犬にきびだんごを上げました。犬は美味しそうにきびだんごを食べました。
次に1匹の猿と出会いました。
「おいおい、桃子。どこへ行くんだ?」
「鬼ヶ島に鬼退治に行くところよ。もし良かったら、私と契約して一緒に鬼退治に行かない?」
「そいつはおもしろそうだ。俺も行こう」
桃子は猿にきびだんごを上げました。猿は美味しそうにきびだんごを食べました。
今度は1羽のキジと出会いました。
「桃子さん、桃子さん。いったいどこへ行かれるのですか?」
「鬼ヶ島に鬼退治に行くところよ。もし良かったら、私と契約して一緒に鬼退治に行かない?」
「私でお役に立てるなら是非ご一緒させてください」
桃子はキジにきびだんごを上げました。キジは美味しそうにきびだんごを食べました。
こうして桃子は犬、猿、キジの仲間と共に鬼ヶ島へやってきました。
鬼たちは奪った宝を山積みにして、酒盛りをしていました。
「さあ、行くぞ皆の者!」
桃子は犬、猿、キジにきびだんごを投げました。犬、猿、キジはきびだんごをぱくりと食べました。
「今その秘められし力を解放せよ!はあっ!」
なんということでしょう。桃子の掛け声と共に3匹の姿が変わっていくではありませんか。
「ガァア!」
犬は双頭の狼へとその身を変貌させました。
「ウキャア!」
猿はみるみる巨大化し大猿になりました。
「キィイーー!」
そして、キジはその身に火焔を纏い火の鳥になりました。
桃子もきびだんごを食べました。
「ーーいざ、参る!!」
桃子の周りに光の粒が舞い散ります。光は桃子の右手に収束していくと、1本の光の刀になりました。
「何奴だあ!」
鬼たちが桃子たちに気づき、武器を手に立ち上がります。
大量の鬼の軍団が桃子たちに向かって雪崩れ込んできます。
狼はその鋭い牙で鬼の首を食いちぎりました。大猿は巨大な足で鬼を踏み潰し、大きな手で薙ぎ払います。火の鳥は鬼の間を縦横無尽に飛び回り、鬼を炭へと変えてしまいました。
桃子の前には赤鬼が立ち塞がります。
「貴様、よくも!」
「これで悪さはもう終わり!」
桃子は赤鬼に向かって走り出します。
「うおー!」
赤鬼は丸太のような金棒を振り回しました。桃子は金棒の下を潜り抜けると、下から上へ光の刀を一閃させました。赤鬼は縦に真っ二つに切り裂かれました。
鬼たちはあっという間に退治されてしまいました。
「成敗完了」
桃子がそう言うと、狼牙は犬に、大猿は猿に、火の鳥はキジに、光の刀は光の粒になって消えました。
桃子と犬と猿とキジは、宝を荷車に積み村へ向かって歩き出しました。
無事に帰ってきた桃子におじいさんとおばあさんは大変喜びました。
それからーー。
悪さをする物の怪の噂を聞くと、桃子は犬と猿とキジをお供に連れて物の怪退治に行くようになったそうですよ。
おわり