12話 魔法兵器ゴーレム
正義の執行者の面々はエヴァや大臣達を連れてバルハランから逃げるように馬を全力で走らせていた。
「それにしてもどうして出発の準備なんてしてたんですか?」
エルが教会で発動した魔法、空間転移は対象になった物を名前の通り空間ごと転移させるものであり、エルはその魔法を使って自分とエヴァ、大臣二人、侍女を正義の執行者が泊まる宿の前へと転移させた。
そこでエルを待っていたのは馬と馬車を用意して出発の準備を完了させたグレイブ達だったのだ。
「まぁお前がお姫様連れて逃げてくるだろうってのは予想してたしな」
「へ?」
グレイブの答えに首を傾げるエル。
「お前今回の仕事の内容覚えてるか?」
「仕事って……エヴァ第二王女の護衛ですよね?」
「フッフッフ、実はそれは表向きで本当は違うんだなぁ、そうだろ大臣のお二人さん」
話を振られた大臣達はエルに今回の仕事の本当の目的を話し始めた。
「もちろん今回の仕事はバルハランまでの護衛というのもあるが、本当の依頼内容はエヴァ様の婚約阻止だったのだ」
「え……」
「我々もエヴァ様の結婚には反対でな……しかし我らにはそれを阻止する力がない、そこでお前達に依頼したというわけだ。大手のギルドは魔物の群れの噂を聞いて話すら聞いてくれんかったからな……」
「えーと、それって皆さん知ってたんですか?」
エルはグレイブに目を向ける。
「知ってんのは俺とミーシャだけだけどな。本当ならミーシャが調べてくれたあの第一王子の民衆にしてる悪行の証拠でも突き付けて結婚止める予定だったんだが、どうにもお前がやる気満々だったみてぇだから任せてみるかってことになってな」
「バレてたんですね……」
「お前が昨晩お姫様としてた会話も、その後宿を抜けだして城に下見に行ったのも全部な」
「ぐっ……」
自分の行動が全てグレイブ達に読まれていた事に恥ずかしさを覚えるエル。
「でもどうして俺にそんな大事な仕事任せたりしたんですか? 正直結構やばいことしてきた気がすんですけど……?」
「確か兵士達ぶっ倒してお姫様救ってきたんだっけか? いいじゃねぇかヒーローらしくてよ。特にあのアホ王子に一発ブチかましたってのが爽快でいいね、それにお前に任せるって言ったのはミーシャだぜ」
「ミーシャが?」
それに驚き思わずミーシャの方を見るエル。
昨夜あれだけ怒っていたミーシャが自分にエヴァの婚約阻止を任せたということが信じられなかったのだ。
「べ、別に好きで任せたわけではありません。ただエルが王女様を勘違いとはいえ助けたのを見てこのギルドに相応しい力を持っているのか試したかっただけです」
素直じゃねぇなぁと茶化すグレイブをキッと睨むミーシャ。
「ありがとなミーシャ。俺を信用してくれて」
「別にお礼を言われるような事はしてません。というかそろそろそのセンスのないお面外したらどうですか?」
「いやまぁ外したいのは山々なんだけど……」
エルはチラリとエヴァが乗る馬車に目を向けた。
エルとしてはグレイブに貰ったドクロ仮面で正体不明の謎のヒーローを演じたつもりだったので、ここで仮面を外して正体を明かすのも恥ずかしいなと思っていたのだが、そんなエルにミーシャは声でバレてますよね? と冷静な突っ込みを入れる。
そんな会話をしている時だった。
「ねぇみんなー、あれなんだと思う?」
エルの前に座るユリカが前方を指差した。
そこには何か巨大な凸凹した塊があり、よく見ればそれは徐々に大きくなっていっている。
「おいおい、あんなのまで使いやがってお姫様ごと俺達を消すつもりか?」
その塊が何なのかをいち早く察知したグレイブはフローズとミーシャに馬車の護衛と進路の変更を指示した。
「グレイブさん、あれもしかしてゴーレムですか?」
「多分な。しかもあの大きさはただの人間が作ったゴーレムじゃねぇ、かなり大規模な魔力が込められてやがる」
周りの大地を吸収するように見る見ると大きくなっていくゴーレム。
石や土で作られたその体は人間のように手足を作り、頭の部分には顔の変わりに赤く光る目玉のようなものができあがる。
エルはその大きさを見たとき、前世の世界のテレビで見た家を足で踏み潰す巨大な怪獣を思い浮かべた。
「ヒヒヒヒ!!! どうだ!? これがバルハランが誇る最強魔法兵器ゴーレムだ!!!」
グレイブ、エル、ユリカの前方に立ち塞がるゴーレムからゲルタブの声が三人に向け発せられた。
「この声はあの豚野郎!」
「あんだけデカイゴーレムだ。自動操作が出来ねぇんだろ。おそらく違う場所でアホ王子が操作してんだ」
これはグレイブが言う通りであり、ゴーレムを操っているのはそのバルハラン城にいるゲルタブであった。
ゲルタブはバルハランに遣える5人の魔法使いによってゴーレムと同期し、その巨大な体を操作していた。
「貴様ら全員皆殺しだ!!! このゴーレムはその膨大な力を安定して扱うために魔力を蓄えるコアを10箇所に分けている! もしもその全てを今ここで放出したらどうなるかなぁ?」
ゴーレムが手を広げると、胸の部分が赤く光りだし、そこに巨大な穴が空いた。
その穴に10箇所に分けた魔力が集まっていき、エネルギーの塊を作り出していく。
「やっぱお姫様ごとやるつもりみてぇだな。どうするエル、やるか?」
「はい。せっかくここまで俺に任せてくれたんですから最後まで俺にやらしてください」
「おっけい、ぶちかましてこい!」
グレイブはエルの馬に乗るユリカを持ち上げて自分の馬へ乗せるとそのままミーシャ達の元へ馬を走らせた。
残ったエルは馬から飛び降り、前方にそびえ立つ巨大なゴーレムへ裁きを下す者を向けた。
「ドクロ仮面! 貴様一人で何ができる!? そんな小さな武器でこのゴーレム相手にどうしようってんだあぁ?」
「なんか最後の最後で巨大化する戦隊ヒーローの敵思い出すなぁ」
「何言ってんだ!!! さっさと消えちまえぇぇぇ!!!」
ゴーレムの胸から放たれた赤い光。
それは地面を深くえぐりながら真っ直ぐエル目掛けて発射された。
「そういえば膨大な力を安定させるために魔力の発生源を10箇所に分けてるとか言ってたな」
エルは静かに裁きを下す者をの引き金を引いた。
「大したことねぇな、俺は自分の魔力を制御するために308箇所に分けてるぜ」
裁きを下す者から撃ち出された魔力のこもった弾丸とゴーレムの放った魔力のビーム。
それは力の差は歴然だった。
弾丸はゴーレムの放ったビームを切り裂きながら真っ直ぐゴーレムに向かっていき、その巨体に撃ち込まれた。
「ば、ばかな!? 僕のゴーレムの最大出力だぞ!? こんなに簡単に──」
エル後ろを振り返りゴーレムに背を向けて最後の決め台詞を呟いた。
「執行」
光の十字架に包まれ燃えるゴーレム。
それと同時にバルハラン城でゴーレムを操っていたゲルタブにもその衝撃はゴーレムと自分を繋いでいた魔法を通って伝わり、ゲルタブは奇声を発しながら泡を吹いて倒れた。
「終わったな」
エルの言葉と同時に光化していく裁きを下す者。
燃え尽きて灰になったゴーレムを見届けるとエルは馬に乗って仲間の元へと走り出した。




