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恋愛相談②

アップルは大好きな剛力と仲良くしているハニーを見て、彼が彼女と幸せにいるのならばそれが一番いいと悟り、早々に身を引こうと考えていた。

けれどもヨハネスはまだ直接本人に振られていないのだから、自分で勝手に決めつけて諦めるのは早計だと言うのだ。


「アップル君、思い切って君の好きな男の子に告白してみたらどうかな?」

「でも、僕男だからきっと振られるに違いないよ……」

「告白する前に失敗するかもって思っていたら、恋は実らないよ」


ヨハネスの優しい言葉に、彼は小さくコクリと頷き、


「……そうだね。僕、剛力に告白してみるよ」


フッと顔を上げてそう宣言する彼の瞳には、先ほどまでには感じられなかった自信がみなぎっていた。


「よし、そうと決まれば早速実行に移そう。何事もすると決めたらその日にした方がいいからね」

「うんっ」


こうしてふたりは喫茶店を出て、剛力のいるアップルの家へともと来た道を歩き始めた。



「このケーキ、美味しいなぁ」


ハニーはガブリエルのケーキ屋自慢の苺のショートケーキをフォークで一口ずつ切り取り、口へと運ぶ。彼女はケーキの頂上に乗っている苺は最後に食べる主義であるため手はつけていない。そしてその苺を万が一の確率とは言え剛力が奪わないかと、先ほどから子猫が威嚇しているような目つきで、彼を見つけている。

だが、彼はそんな彼女に顔色ひとつ変えない。


「ハニーお嬢さん、安心してください。お嬢さんの苺は食べませんよ」

「本当に?」

「俺が今まで嘘をついた事ありますかね」

「ないけど……でも、本当に取らない?」

「大丈夫です。それともお嬢さんは、俺を信用できませんか」

「うーっ、分かったよぉ。信用してあげる!」

「そう言っていただけて光栄ですよ」


剛力は自分が注文した――以前彼がアップルに一度食べてみたいと話していた――アップルパイを手に取り、一口かじってみた。口の中いっぱいに甘く優しいりんごの香りと甘さが広がり、アップルが大好物になる理由が分かったように、瞼を閉じ、パイを深く味わった。


「ねぇ、剛力くん」


彼がアップルパイを食べきった頃、ハニーが眉を八の字にした心配そうな顔で彼の名を呼んだ。普段は天真爛漫で明るい彼女がこのような表情をするのは珍しいため、何か困った事が起きたのだと彼はすぐに悟り、返事をした。


「どうかしましたか」

「うん、たった今、私のケータイの着信履歴を見てみたんだケド……」


彼女は自分の着信履歴を彼に見せる。そこには、同一の人物からの着信が幾度もされていた。

ハニーは剛力とのデートを優先するため、ケータイは予めマナーモードにしてあったため気づかなかったのであるが、上から順に十回も電話をかけている人物の名を見て困惑した。

その人物の名は――


不動仁王ふどうにおう……」

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