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気づいた剛力

アップルがいなくなって十分後、剛力は意識を取り戻しうっすらと目を開けた。

目に飛び込んできたのは、自分が逃がしたはずの恋人の姿。

彼は驚きのあまりガバッと立ち上がり、彼女の両肩を掴んで言った。


「お嬢さん、あなたは先ほど俺が逃がしたはず……どうしてここにいるのですか!?」

「それはね、剛力くん――」


彼女は事の一部始終を彼に話した。

逃げていたら偶然、喫茶店にいるアップルとヨハネスを発見した事。

公園に戻り、アップルと協力して剛力をベンチに運んだ事。

ヨハネスが不動に挑むも破れ、自分も襲われそうになったが、アップルの身を挺しての説得で不動を改心させられた事。

それらを聞いた彼は、ひとつの疑問を彼女に投げかけた。


「それで、アップルはどこですか?」

「アップルくんは『剛力くんを幸せにして』って帰っちゃったの」


その言葉を聞いた剛力の全身に激しい悪寒が走る。


「……お嬢さん、アップルは本当にそう言ったんですか」


真剣そのものの瞳で彼女の顔を覗きこむ。

ハニーは少し驚いたような顔をしていたが、コクリと頷く。

彼女は嘘をつくような人間ではない事は彼は知っていた。

けれどもアップルの言ったその言葉が嘘であって欲しいという思いがあったのだ。


「ハニーお嬢さん、残念ですがデートの続きはまた今度にしましょう」

「どうしたの? トイレにでも行きたくなったの?」

「そんなんじゃありません。ただ、急用ができただけです」


愛人に少しぶっきらぼうに返し、彼は走り出した。

アップルの自己犠牲を止めるために。

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