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キスをしたい時は

「フン、訳の分からぬ事を抜かす奴だ! 俺はなぁ、お前の名などしらーん!!」


不動は意味不明な答えを突きつけられて困惑し、実力行使で解決しようとパンチの雨を見舞うが、ヨハネスは暑いはずのインバネスコートを羽織った状態でその猛攻を難なく避けていく。そして不意に間合いを取って一気に飛び上がり、彼の甲板にドロップキックを炸裂させた。


「グッ……」


小柄で軽いとは言え飛び蹴りをまともに食らったのはやはり痛かったらしく、不動は一歩後退する。少年探偵はそこにスライディングキックで体勢をよろめかせると、背後に回り彼の両肩に、まるで鳥のように飛び乗った。そしてそのまま凶器エルボースタンプで強襲する。

足で彼の足をしっかりロックしているため、両腕を使う事ができず、不動は彼の肘打ちを幾度も受け続け、ついに両膝をついた。ヨハネスはサッと彼の肩から身を翻して華麗に着地し、彼の闘いぶりに呆然としているアップルに言った。


「ここは僕が引き受けるから、きみは剛力くんをお願い!」


アップルはコクリと頷き、愛する人に歩み寄る。剛力の瞼は閉じ、死んだように動かない。眠っているのだろうか。

彼は思案する。

ヨハネスが言ったように心臓と脈は正常に動いている。骨にも(パッと見ではあるが)異常は見られない。そうすると、彼はただ気を失っただけと解釈するのが妥当だった。問題はどうやって彼を起き上がらせるか。一生懸命考えた末に彼が思いついたのは、


「剛力、僕の愛で目を覚まして……」


アップルは彼の顔を覗きこみ、キスをしようとする。

呪いをかけられたお姫様はキスで目が覚める。

呪いに効くのだから失神にも効果があるに違いないと思い、彼の唇に迫る。

読者はここで彼がただ単にキスをしたかっただけなのではないかという非情なツッコミをしてはならない。脳内がメルヘンである彼にはそれしか方法が思いつかなかったのだ。今にも彼と剛力の唇が重なり合おうとしたそのとき、ハニーが公園に遅れてやって来た。だが、キスをしようとするのに夢中なアップルは彼女に気づかない。少々状況判断に戸惑う彼女であったが、取り合えず彼に声をかける。


「アップル君……?」


その声に初めて弥生の存在に気付いた彼は、彼女の手を握り泣きそうな声で願う。


「お願い! 剛力には今の事言わないでいてくれないかな?」

「う、うん……」


彼女の答えに安心感を得た彼は今の状況を説明し、ふたりで剛力をベンチに引きずって連れて行き寝かせる事に成功した。

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