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たどり着いた先
「剛力くん、大丈夫かな……?」
弥生は肩で息をしながらも、身を挺してまで自らを逃がしてくれた剛力が心配でたまらなかった。彼はボクシング部のキャプテンを務めているほどの実力を誇るが、敵である不動はそれ以上の強さを誇るのだ。とても無事では済まない事は彼女にも理解できた。
踵を返して戻ろうかとも考えたものの、それでは折角の彼の犠牲が無意味になってしまう。
それだけはできないため、ハニーはぐっと涙を堪えて前を向いて歩き続ける。
疲れで少し目が虚ろになりながらも、一歩一歩足を進める。
彼女は、とある喫茶店を通り過ぎた。
その刹那、何かに気づいて少し後退して喫茶店の窓を覗くと、そこにはアップルとヨハネスの姿があった。彼女はヨハネスの事は知らないがアップルの事は知っているため、助けを求めるのと体力の限界で、最後の力を振り絞って喫茶店の自動ドアを潜りぬけ、彼らの席に向かう。
「弥生、どうしたの!?凄く疲れているみたいだけど……」
彼女はヨハネスの座っている椅子の隣に腰かけ、息も絶え絶えに言った。
「お願い……剛力くんを、剛力くんを助けて……!」