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僕とボク  作者: ドク
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#005 これからのこと

最初に話を理解し、小夜を見ることができた綾乃さんの妹、綾花さんが理子を見ながら口を開く。


「アヤは………えっと………ねえ、なんて呼べばいいの?」


綾花さんが何かを言いかけ、困ったような顔を僕に向けてきた。一同沈黙する。たしかにこっちの碧だのそっちの綾乃だの呼ぶのはおかしい。


「外見のまま呼ぶしかないんじゃないか。あたしも最初、二人をどう呼ぶか悩んだけど、外見で呼ぶことにしたし。」


「それにしても、希美達も早く信じてくれたら安心して綾乃を任せられるんだけどなあ」


無意識なのか理子が呟く。それを聞いて小夜が珍しく口を開いた。


「みんなで思い違いをしているみたいですけど、私を見ることができるのは、完全に信じた人だけじゃないんです。もちろん、それが確実ですけど。理子さんが私の存在に気づいた時、まだ何も話を聞いてなかったですよね」


それを聞き、理子がその時を思い返す。あたしが死神ちゃんに気づいたのは碧が“理子助けて。僕…”と言った直後。綾花の時も”ぼく”の言い方の違和感……そうか。


「違和感だ……。なあ希美、悠さん、碧に何か違和感ないか? いつもの碧とは違う何か」


違和感を探せとかむちゃ振りをする理子。なんだそりゃと思った僕を他所に、二人が綾乃さんを見つめる。


「そういえば、さっきから髪を耳に掛ける仕草してる気がしてたんだよね」


「碧兄が正座してる事くらい? あれ? ホントだ! 今左手で髪を耳にかけようとした!」


桐生と悠がいつもの僕なら絶対にしない事に気づいた。

それを聞いた理子が左に座る小夜の肩に手を置き「見えるか?」と問う。

二人がコクコク頷く。それにしても小夜って触れるんだ。後で聞いてみたら触れなかったけど肩の場所で手を止めて、手を置いてるように見せていただけらしい。まあ、そうだよね。


これで全員が小夜の存在を確認することができ、それからは話が早かった。状況を全員が理解し、ここに集まった理由、これから二人を助けていくということで話を進めていく。

理子の提案で皆のことは名前で呼び合う事、僕達のことは外見で呼ぶこと、が決定した。これは呼ばれ慣れるようにする意味もあるらしい。


「でもその前に、2人にしか克服できないことがあるよな。それは自分たちで頑張ってもらうしかない」


理子の言葉に僕たちは首を傾げる。


「わからないか? 体、つまり性別が入れ替わったんだ。トイレとかお風呂とか……まあ、あれだ」


僕たちは顔を真っ赤にして俯く。お風呂って裸だ。やばいよまずいよ。それにトイレって……

今まで気づかなかった事を言われ激しく動揺してる。落ち着け僕。


「それに体育もあるよね。綾乃が体育の時、アヤが綾乃の代わりに参加すればいいんだよね? 今までも時々入れ替わって遊んでたし。それとも女子更衣室入りたい?」


フルフルと首を横に振る。そんな事聞くなといいたい。

あ……首を振ったら髪が鼻を……


「くしゅん」


なんだ今のかわいいクシャミは。


綾花さんが笑いだした。ほぼ同時に僕と綾乃さんも。


「双子は楽しそうでいいな。で、碧はどうする? まさか悠が代わりになんてのは無理すぎるだろ」


「それなら問題ないよ」


希美が応える。僕達の学校の体育は選択参加で、体育の授業に出るか、空き教室でテストを受けるか選ぶことができる。男子は全員体育を選ぶが、毎回数人の女子がテストを選んでいるらしい。


それからもいろいろと話を進めていき、なんとかなりそうな気がしてきた。とにかく僕達の最大の問題は入れ替わったお互いの体での生活に慣れていくしかないってことなんだけど……


「なんとか話がまとまってきたな。あとはなるようにしかならないか……そうだ、全員の連絡先交換しとこうか。何かあったらすぐ連絡できるようにしたほうが安心だしな」


そう言って携帯を取り出す理子に続いて全員が携帯を取り出し、通信で番号とアドレスを交換する。






気が付くと外がうっすら暗くなっている。昼に巻き込まれたこのトラブルで一日が終わりそう。明日は日曜日だからいいけど、月曜日からどうなるのか不安でしょうがない。


「結構時間たったんだなあ。今日は解散にするか。碧も綾乃も一人で抱え込むなよ。あたし達がついてるんだからどんな小さなことでも相談してこいよ。一人で抱えると壊れちゃうからな。綾花と悠、家のこと頼むよ。希美もありがとな」





理子に見送られそれぞれが帰路につく。家がわからない僕たちはお互いの妹が家まで案内することになった。僕は綾花についていく。


「これから大変だね。アヤもどうしたらいいかわからないけど、綾乃はもっと不安なんだよね? あやにできることならなんでも手伝うから遠慮しないで言って」


優しい言葉に頷いて返事をして、僕と綾花は帰宅した。僕じゃない僕の家に………

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