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僕とボク  作者: ドク
20/24

#020 サプライズ

「あーもう最悪」


僕達は出発ロビーで飛行機の搭乗時間が来るのを待ってるんだけど、何回目かわからないくらい芹佳が愚痴ってる。


出発ロビーに向かう途中、ゲートを通った時にピコーンなんて音がなって、新人さんらしい男の職員さんが芹佳に近づくなり、いきなり芹佳の腰の辺りを触ってボディチェックを始めたの。

触られた瞬間に「みにゃぁ」と叫ぶ芹佳の声に気づいた女性職員さんが、その男性職員さんに強烈なビンタを炸裂させちゃった。


「いきなり女の子の身体に触るなんて、なに考えてるの! なんの為に男女の保安員が配置されているのか考えなさい」


芹佳は腰を抜かして動けなくなっちゃったので、理子と友美が両脇を支えて隅に連れていき、折り畳みのイスに座らせる。

立ち上がれるようになったところで女性の職員さんが再チェックしてた。


スカートの丈を上げるのに使ってたゴムベルトのバックルに反応してたみたいで、ベルトはその場で先生に没収されちゃった。

学校に戻ったら職員室まで取りに来いなんて言われてたけど、芹佳が愚痴ってるのは没収されたことじゃなくて、いきなり身体を触られた事。


僕も綾花に胸を触られた時はびっくりしたけど、あれとは比較にならないくらい驚いたと思う。腰を抜かしちゃうくらいだし。

でも、どうしてスカートを短くするのかな。僕はできるなら長くしたいくらいなのに……


「いいじゃんか、一瞬ちょこっと腰触られただけだろ? あれくらいで騒いでたら夜困るだろ、将来」


「よる? ……夜? ……!?!! ばばばばバカなの理子」


「なにがぁ? なにを想像したのかなぁ?」


いたずらっぽく笑う理子。ちょっとひどいよ。


「理子ひどいよ。急に触られるとゾワゾワゾワーってして、気持ち悪いし驚くんだからね」


「わかってくれるの綾乃だけだよー。ハグして慰めてー」


……え。女の子に抱きつかれたら、どうしたらいいかわかんないよ……


「えいっ」


「ぴっ」


両腕を広げて僕に抱きつこうとしてた芹佳の横腹を、理子が人差し指で突いた。だからやりすぎだってのに。まあ、助かったけど。


「理子やりすぎ。芹佳大丈夫?」


その場でぺたんとアヒル座りしちゃった芹佳を、碧が手を取って立たせて、友美と一緒に近くの椅子に連れていって座らせた。


「友美ありがとう。小木曽くんも。あれ、今芹佳って言った?」


「あ、ごめんなさい。芹佳さん」


「んーん、芹佳でいいよ。てか理子! 次やったら本気で怒るよ」


「あはは、ごめんごめん」


「ぜんっぜん反省してないでしょ」


ぷくーっと頬を膨らませて理子を睨んでいる芹佳だけど、後ろからこっそり手を伸ばしてくる友美に気づいてないみたい。


「ぶっ」


頬を人差し指で押された芹佳からオナラみたいな音が出た。

それを聞いてみんな大笑い。

悪いと思いながら僕も笑ってしまった。でも芹佳も一緒になって笑ってるし、いいよね?

あー、お腹痛いし苦しい。


「楽しそうね、あなた達」


僕達の事なのかな? 声のした方を見ると、さっき男の保安員さんにビンタしてた女の人が立っている。


「さっきはごめんなさいね。お詫びと言う訳ではないのだけど、あなた達にこれを届けにきたの。よかったら食べてね」


お礼を言って袋を受けとるとアイスクリームだった。

グリーンシールアイスクリームって聞いたことないけど、沖縄では有名みたい。フレーバーのシークヮーサーって何だろう? 試してみたいけど、紅いもも気になる。


「これ、もーらいっ」


言いながら芹佳が取ったのはマンゴー。次に綾花がストロベリー。碧もストロベリーを選んだ。うーん、どれにしよう……


「綾乃早くしないと溶けちゃうから」


友美に言われて、最初に気になったシークヮーサーにした。

友美だってちょっと悩んでストロベリーにしたし、やっぱり悩むよね。理子は残った紅いもになった。


「おいしいね。私たちだけ特別みたいで特した気分♪」


ホントおいしい。甘いだけじゃなくて酸味もあって、すっきりしてて。


「なあ、ぁぉぃ」


「ひゃに?」


右側から僕の肩に腕を回して抱き寄せるようにして、理子が耳元で囁く。アイスクリームの冷たさと、ちょっとびっくりしたのもあって、変な返事になっちゃった。


「アイス一つで機嫌直す女って、男は芹佳みたいなのが楽で付き合いやすいだろ?」


「あははは」


返事に困って笑ってごまかした。


……あれ? 僕はまだ女の子と付き合った事なんてないけど、付き合うとしたら、相手はやっぱり男?

碧を何気なく見ていたら目が合ってしまい、慌てて目をそらした。

何を考えているんだ、僕は……


「綾乃、集合かかってるよ。急いで」


綾花に言われて、慌てて数口分残ったアイスを一気に掻き込んだ。


「んーーー」


頭がキーンとして足をバタバタさせたら、理子に膝を押さえつけられた。


「落ち着けよ。ちょっと自分のスカート見てみ」


スカート?

視線を落とすとスカートが乱れていて、太股が……

もう少しでホントに危ないとこだった。


「前の椅子の背もたれで見えてないハズだけど、気を付けなよ。それがなかったら中丸見えだよ、あれじゃ」


「う、うん。ごめん」


アイスのカップを横の椅子の上に置いて、スカートを直して立ち上がる。あれ? カップがない。


「ゴミは友美が捨てに行ったよ。あたし達は先に行こう。急ぐけど走らない、大股にならないように気を付けなよ」


理子に手を引かれて集合場所に着いたら、先生が搭乗券を配ってた。僕達はまだもらってないのに、先生の手から券がなくなった。……なんで?


「君達のはこの封筒の中だ。四人が座れる場所を前後で二列確保しておいたから、この紙に誰がどこに座るか記入してくれるかな。書き終わったら券を渡すよ。前の列の右側は空席になるから、前三人、後ろ四人になるな」


座席は前の左から、綾花、碧、僕

後ろの左から、友美、芹佳、理子、希美


この座席で記名して先生に渡すと、その席に合わせた券を渡して、搭乗ゲートの職員さんに券を預けるように言うと、ゲート横の職員さんにさっきの紙を手渡した。

もしもの時のための座席管理で必要らしいけど、そのもしもが起こらないことを祈るよ。


僕の右側は空席って言ってたので、誰も座らないのかなって思ってたんだけど、綾花が小夜ちゃんを呼んで、僕の右側に座らせた。この前、部屋で綾花が小夜ちゃんに囁いて、小夜ちゃんが目を輝かせたのはこれだったんだ。


「沖縄に着いてからの、バス移動の時に呼ぼうと思ってたけど、空席があるって言ってたから、今来てもらっちゃった。飛行機から一緒できて良かったよね」


生前行けなかった修学旅行に僕達と参加する。

綾花のサプライズプレゼントに僕達も驚いたけど、楽しくなりそう。小夜ちゃんにも楽しい旅行になるといいな。




僕達が機内に乗り込んで十数分後、機長の挨拶や緊急時の脱出方法の放送があった後、飛行機がゆっくり滑走路に移動していく。

飛行機ってどんな感じで飛んで行くんだろう? なんて思っていたら、外から凄い音がして、体が座席に押し付けられた。凄い力で体が動かない。怖くなって少し前に体を動かそうとしたら、急にフワッとして、前の席に顔をぶつけた。


「いにゃ」


顔をぶつけた時の音と、僕の変な声で注目されてしまった。ハズカシイ。


「大丈夫? どこかケガしてない?」


碧が心配そうにこっちを見てるけど、後ろの席からは理子の笑い声が聞こえる。

しばらくしたら女の人が冷やしたタオルを持ってきてくれたので、後ろの理子に言って座席を倒し、タオルをオデコに乗せて休んでいたら、いつの間にか寝ちゃってた。







「もうすぐ着陸だけど、綾乃どうする?」


「着くまでこのままでいいんじゃないか。またどこかぶつけるかもしれないし」


「そうだね。着いたら起こしてあげよっ」


遠くで芹佳と桐生と理子の会話が聞こえる気がした。と思ったら理子に起こされた。着陸の前に、座席を戻すようにアナウンスがあったので起きろってことらしい。


初めての飛行機を寝て過ごしたのは少し残念だけど、悔しがっても仕方ないし、沖縄を思いっきり楽しみたいな。

飛行機のドアの所で、僕にタオルを渡してくれた女の人がいたので、お礼を言ってタオルを返して飛行機を出た。




「この中に突撃しなきゃいけないんだ……」


預けた荷物を受けとる場所に行くと凄い人だかりで、思わず呟いた。


「綾乃のも、アヤが取りに行くからここで待ってて」


そう言って綾花が向かって行った。僕は邪魔にならないように少し移動して、小夜ちゃんと二人でみんなを待つ事にした。


「はい。一応荷物の番号確認してね」


綾花からバッグを受け取って番号を確認する。うん、大丈夫。

理子が「トイレに行くから荷物見てて」と言うと、芹佳も行くと言うので、二人を待つ間にバスの座席を決める事にする。


「じゃ、右は理子と希美で左に芹佳と友美、後ろにあやたちでいいよね? あとで理子たちにも聞いて決めるけど」


その理子達は少し離れた所で、クラスの女子三人と何か話してる。移動だけでも自分達のグループにしないかと、提案してくれた子達だよね。出入口の方見たり指差したりしてるけど、何かあるのかな?


「おまたせ。綾乃の荷物、バスまで預かるよ。行こうか」


僕は返事もしてないのに、理子は僕のバッグを取って出入口に向かって歩き出した。

そんなに重くないから平気なのに、なんで僕の荷物持ってくれたんだろ? よくわからないまま付いていって建物を出た。


「あわわっ」


凄い横風に驚いてスカートを押さえた。荷物持ってたら多分何もできなかったかも……あれ?


「集合場所はあっちだね、みんないるし」


慌ててスカートを押さえた僕と対照的に、全然平気そうに、桐生が僕と並んで歩きながら前を指差した。

みんな平気そうにしてるってことは、あれも大丈夫な風?

あの時の風よりはマシだったけど、強い風だったのに。


僕は集合場所までスカートを気にしながら歩いていって、早くバスに乗り込んで安心したいと思いながら先生の話しを聞いていた。


これからバスで中城村と言う所に行くらしい。先生の話しが終わって、みんながバスに乗り込んだ。僕はほとんど話しを聞いて無かったけど「なかぐすくそん」と聞こえたので、これが読みなのかな? 沖縄って人名も地名も難しいな。


バスでは後ろの席に、碧、綾花、小夜ちゃん、僕の並びで座った。

これから行く中城村って何があるのかな? 普通に観光で行っても見られない物を見せてもらえるらしいけど、先生も初めての事らしいし、地元沖縄の人でも知らない人が多い物を見られるらしい。


何があるのか楽しみだね。

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