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僕とボク  作者: ドク
16/24

#016 準備

「すごい旅行になりそうだね」


学校を出て小木曽家のリビングに集合した僕達。最初に発言したのは綾花でした。


発言を求められた綾乃さんの返事は「バスの中でいい」だった。

困惑する先生に理子が補足する。


「前いろいろあって、長時間男子といるのが耐えられないんだって。あまり広めて男子たちにいじられると悪化するから、あたし達の部屋でいいかなって思ったんだよね。桐生さんもその辺の事情は知ってると思いますよ。まさか、本当にバスの中で過ごさせたりしないですよね?」


それを聞いた先生がしばらく考え、綾乃さんに近づく。綾乃さんのすごく緊張した表情を見て溜め息を吐き、他の生徒には秘密にすること、部屋の誰か一人でも反対が出たら先生の部屋にすることを条件に、僕達の部屋にすることが認められたのだった。

それにしても、いつの間にニ人でそんな打ち合わせしていたんだろう。全然気づかなかった。







「僕達は反対しないけど、芹佳さん……あ、芹佳と友美が反対したら部屋変えられちゃうんだよね? ニ人にも事情話しておいたほうがいい?」


「あー、友美達のことならあたしに任せて。みんなは気にしないでいいから。それより明日の相談しようよ」


明日の相談? 僕が首を傾げていると理子が鞄からホチキス留めされたものを取り出した。修学旅行のしおり? 受け取って中を見る。三泊四日の沖縄旅行。


「日焼け止めとか絶対だし、下着とかは新しいのにしといたほうがいいじゃん?」


「「し……したぎ……」」


理子の言葉に、僕と綾乃さんが同時に、反射的に呟いた。

夜お風呂に入る時も、朝シャワーを浴びる時も、綾花さんが僕の着替えも用意してくれていたので考えていなかったけど、今あるのは綾乃さんが買った物で、これからは僕が新しく買うことになるんだよね……


「あの……碧さん……男の子も下着買う時って、試着するの?」


「試着なんてしたことないけど……。サイズだけ見て買ってるだけで。綾乃さんは試着して買ってるの?」


問いかける綾乃さんに僕が答える。


「……はあ」


僕達の話を聞いていた理子の大きな溜め息。


「あたし達がニ人を呼ぶ時に外見でって話でまとまったのに、当人達がそれじゃ意味ないだろ! いきなりってのは難しいかもしれないけど、できるだけ早く呼び方変えて、慣れていきな……ん?」


理子が何かに気付いたようで、桐生に話しかける。


「ホームルームで自己紹介した時、自分の名前じゃなくてお互いの名前を紹介したのって、そういう事?」


「うん。碧って言いにくいみたいだったから私が考えて。だめだったかな?」


「まあ、今の二人の状態だとあれで正解だった気がするけどな。それよりニ人共、できるだけ早くしなよ?」


「「……はい」」







そして土曜日。僕達は理子のメールであの公園に集合する。

芹佳と友美はそれぞれが用事があるとかで不参加になったので、いつものメンバーで出かけることになった。


ドラッグストアで日焼け止めクリームとフェイスタオル、虫除けスプレーに絆創膏と痒み止め

などを買った。タオル以外は全員で回して使えるからと割り勘で。

その後百円ショップで、小さなボトルが三個セットになっている物を買う。

何に使うのか綾花に聞いてみたら、いつも使ってるシャンプーとかを詰め替えて持って行くためだとか。

ホテルに備え付けのを使えばいいのに。なんて思ったんだけど、いつも使ってるものがいいからという事らしい。女の子っていろいろ大変なんだね……。




これは後で知った事なんだけど、こだわる人とこだわらない人が半々くらいらしい。僕達グループの女の子がたまたま、こだわる人だけの集まりになっていただけみたいで、芹佳と友美は、ホテルがどんな物を置いてるのか楽しみとか言ってた。




水着を買いたいという理子の発言は、僕と綾花とあや……碧の乗り気じゃない雰囲気で中止になり、下着を買うことに……まだハードルが高いよ……

試着する勇気がなくていつまでも選べない僕の代わりに、綾花が選んで試着して、買うものを決めていく。楽しそうに選んでいく桐生と綾花と理子の中に入れない僕とあや……碧は、仕方なく売り場の近くにある休憩席に座って待つことにした。


下着売り場に着いて約一時間後、三人の買い物が終わって僕達のところに集合する。女の子の買い物ってすごく時間かかるね。僕なんて選ぶ時間よりレジ前で並ぶ時間の方が長いのに。あ、そういえば買い忘れがあった。どうしようかと考えていると桐生があや……碧に紙袋を渡す。受け取って中を見て固まっている。何?


「トッ・ラン・ク・ス~」


変なリズムをつけて言う桐生。買ったんだ。でもよく買えたなあ。


「男が女物の下着買うのは絶対無理でしょ? 逆は全然オッケーなんだよね。でも、碧ちゃんはまだ無理そうだから私が買ってきたよ~」


こういう事は女の子の方が潔いというか勇気あるっていうか……


結局僕達は何もしないまま、下着と靴下を新調してしまった。少しずつ自分で買う練習もしなきゃだなぁ……

今度綾花に手伝ってもらって頑張ろう。







買い物が終わった僕たちは、近くのマスドで休憩することになった。マスタードーナツと言う有名なドーナツチェーンのお店だけど、クレープと同じく今まで縁がなかったお店で、ドーナツが食べたいという桐生に誘われる形で移動したのだった。


僕は相変わらずの優柔不断ぷりを発揮し、注文を決めたのは綾花。

席に着いた僕の目の前には、フレンチクルーラーとポンデストロベリーと言うニ種類のドーナツと、アイスティがある。この前のクレープもだけど、なんで女の子がよく行くお店の商品ってこうも難しい名前が多いんだろう。


僕の隣に座る綾花の前にはポンデダブルショコラとシュガーレイズド。これも難しい名前。

綾花の正面の理子はエンゼルフレンチとゴールデンチョコレート。

理子の隣のあや……碧はマスドビッツ6とチョコレート。

その隣で僕の正面の桐生の注文には驚いた。エンゼルクリームとライスバーガーあん&カスタード。


あんことカスタードをご飯で挟むってどうなんだろう……

エンゼルクリームっていうのもクリームが多すぎて胸やけしそう。飲み物はみんなアイスティだけど、桐生だけウーロン茶。

ライスバーガーを一口食べた桐生に感想を聞いてみると、


「お萩とプリンを同時に食べてる感じ」


よくわからないけどこれは僕はやめておこう。どっちもそんなに嫌いじゃないけど、同時には食べたくないし。




ドーナツも食べ終わり、そろそろ帰ろうと店を出る。暫く歩いていると理子の携帯電話が鳴る。メールだったようで何度か送受信を繰り返している。パタンと携帯電話を閉じた理子が桐生に何かを耳打ちしている。頷く桐生を確認すると


「ちょっと用事ができたからここで解散でいいよな? また月曜日な」


理子と桐生が来た道を戻り、僕たちは家に向かって歩き出す。家が近いあや……碧と別れて僕たちはニ人で歩く。


「あの、ちょっとお願いがあるんだけど」


「なに?」


「修学旅行から帰ってから時間ある時でいいんだけど、その……服とか下着とか買う練習もしたいから……手伝ってもらえる?」


結構頑張って勇気を出して言ってみたのに、綾花には爆笑されてしまった。ちょっと涙目になった僕を見て


「ごめんごめん、行く勇気がでたらいつでも言ってね」


「ありがとう」


修学旅行の出発は月曜日。楽しみと不安が交錯しています……

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