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僕とボク  作者: ドク
15/24

#015 3年生なのに?

「「綾乃おはよー。もう大丈夫なの?」」


僕が教室に入ると、教室にいた数人の女子が一斉に挨拶してくれた。ニ日休んで心配掛けちゃったかな。ちょっと反省。


「大丈夫です。心配掛けてごめんなさい」


返事をするとみんなが笑顔で「よかった」とか「むりしないで」と言ってくれる。みんな優しい。


「おはよー。ぁぉぃだよな?」 


おはようと言いながら席についた僕に、理子が碧の部分だけ小声にして尋ねてくる。


「そうだけど?」


「口調といい、声のトーンといい、綾乃にそっくりだったんだよ。元に戻ったのかと一瞬思って確認したんだけど。そっか、戻ったんじゃないのか……」


「え?」


特に意識してないんだけど口調変わったのかな? そんなことを考えていると理子がニ枚のプリントを僕に渡す。欠席免除証明書?


「昨日、校医の先生に会った時に綾乃の様子聞かれたんだけど、姉妹で休んでるって言ったら特別に発行してくれたよ。一日保健室にいたことになってるから、綾花にも口裏合わせるように言っといて。あ、一枚は綾花のだからホームルーム前に渡してきなよ」


黒板の上の時計を見ると、ホームルームまであと六分。僕は急いでニ組の教室に行き、近くにいた女子に綾花さんを呼び出してもらってプリントを渡した。プリントを見た綾花さんはそれだけで意味がわかったようで、「ありがとう」と言って席に戻る。僕も急いで教室に戻って席に着くと担任が入ってきた。


「おはよう。今日は欠席者はいないな。男子一番と女子一番、これを取りに来ーい」


そう言われて男子と女子の出席番号一番の子が、担任からプリントを受け取り全員に配っている。男子は普通の白い紙で、女子はクリーム色の紙。受け取って何のプリントなのか確認する。


【修学旅行前健康状態アンケート】


え? 三年生になって修学旅行?


「時期的に珍しいって顔してるな。大学入試の勉強の気分転換で試験的にやってみたら、受験ノイローゼも減って以前より合格率が上がって、今年から正式採用なんだってさ」


首を傾げる僕に理子が教えてくれる。西高はニ年の夏にやっちゃったから、綾乃さんは修学旅行に行けない事になるんだ……


「五時間目のロングホームルームで回収するから、それまでに記入するように。グループ分けもその時に決めるぞ。各班五人ずつだが、北村のグループは四人でいいな?」


「はい」


女子は十九人しかいないから、四人のグループが一つできちゃうんだね。本物の綾乃さんだったらやっぱり、あの三人しかいないよね。


ホームルームも終わり先生が出て行った後、一時間目の準備をする。


「綾乃ー、私達四人でいいよね?」


机の上に教科書とノートを出していると芹佳が声をかけてきた。


「よろしくお願いします」







体育もなく、移動教室での授業もない今日は、午前中は無事に過ごすことができた。そして五時間目のロングホームルームの時間。先生が廊下で何か話している。そう思ったらドアが開いて先生が入ってくる。


「グループ分けはもうできてるかー? アンケートはこの時間内に書いて提出。それから今年はゲストがいるぞー。」


ゲスト? 誰だろうと思っていたらドアが開いて入って来たのは……


「西高も来年から修学旅行を三年に実施するらしくて、代表生徒を同行させて欲しいと依頼があってな。ほら、自己紹介」


桐生希美(きりゅうのぞみ)さんです」


小木曽碧(おぎそあおい)くんです」


お互い自分の紹介ではなく、相手の紹介をする。なんでかな?


「よろしくお願いします」


ニ人が同時に礼をする。先生が空いてる席に座るように言うと、ニ人が女子の列の一番後の席に進んでくる。

一列七席が三列あって、僕の席以外の後2席は空き席になっている。

僕と目が合った桐生が一瞬だけ微笑んでウインクして、廊下側の席に座った。僕の隣に綾乃さん。なるほど、ウインクの意味はこれね。


「北村、桐生さんを入れてやってくれ。で、小木曽君だが……」


「別々より一緒の班がいいと思うけどだめですか?」


言いかける先生の言葉を遮り、理子が発言する。

「他校で別行動よりいいかもな」と先生も納得し、僕達の班に入ることになった。綾乃さんもホッとした様子。理子グッジョブ!


更に、綾花さんも同じ班になるようで、七人のグループになってしまった。

双子で同じクラスにいると先生が混乱するとかで、別々のクラスにする代わりに、校内行事では同じグループにする条件になっていたみたいです。


「次に、だ。小木曽君はどの班と一緒の部屋にするかだが」


「それもあたしたちの部屋でいいよね。おなじ班なんだし」




     ざわ     ざわ

       ざわ     ざわ




理子の発言で教室中が騒がしくなる。芹佳が驚いた顔を理子に向けているし、理子の隣の男子はなぜか悔しそうに震えている。

他の男子たちも「なん……だと!?」「俺も俺も」と呟いている


  男子A「俺が俺が」

  男子B「いや、俺が俺が」

  男子C「じゃあ、俺が」

男子A&B『どっか行けよ』

  男子C「はあ? 何か違くねえ?」




頭をポリポリと掻きながら先生が口を開く。


「全員静かに。宮沢と同じ班のみんな挙手」


理子と友美と芹佳、そして僕が手を挙げる。挙手した全員と西高のニ人、そして綾花さんも連れて、放課後に第二指導室に来るように言われて、この話が終了した。残りの時間はアンケートを記入して提出するように言われたので、朝受け取ったプリントを取り出す。

食物アレルギーの有無や治療中の病気の有無など、健康状態に関するアンケートだけど、最後のニつの質問で回答に困ってしまう。


 日程中及びその前後で生理の可能性が

   ある・ない

 生理中痛み止めが必要になることが

   毎回・時々・必要ない


アンケートが男女別になっていたのはこれで納得。痛み止めは昨日綾乃さんが手渡してくれて、飲むと楽になったので今朝も飲んだし、“毎回”にしておこう。修学旅行は来週から。周期って次に来るのはいつなんだろう?


「もう全部書いた?」


理子が振り向きながら言い、僕のアンケート用紙を覗きこむ。


「あと一つだけどよくわからなくて」


どれどれ? と覗き込んできた。

「綾乃ならこっちだね」と言いながら僕のシャーペンを奪い取り“ない”に丸をつけた。

え? どこを見てそれがわかったんだろ? 僕の頭の中はハテナマークで埋め尽くされている。


「こういうのは軽く適当でいいんだって。それに痛み止めが必要ってとこに丸付けたんだから最中だろ? 強制不参加になる事もあるから“ない”でいいんだよ」


そうなんだ。理子のおかげでアンケートも全て回答したので、班分けの紙を取り出し記名していく。


リーダー:宮沢理子(みやざわみちこ)

メンバー:桐生希美(きりゅうのぞみ)    小木曽碧(おぎそあおい)

     相沢芹佳(あいざわせりか)    斉藤友美(さいとうともみ)

     北村綾乃(きたむらあやの)    北村綾花(きたむらあやか)













ホームルームが終わり、僕達は急いでニ組の教室に行き、綾花が出てくるのを待つ。教室から出てきた綾花に簡単に事情を話し、全員で第ニ指導室へ向かった。

部屋の中は四台の折りたたみ式の長テーブルが□形に設置されている。僕と芹佳と友美が並んで座り、その向かいに綾乃さん、桐生、理子、綾花さんが座って先生が来るのを待つ。




少し遅れて先生も来て、部屋割りの話しを再開する。


「同じ班で行動する方が都合がいいのはわかるがなあ。部屋を同じにするのはマズいだろう?」


「「どうしてですか?」」


理子、桐生、綾花さんの三人が同時に即答する。息が合い過ぎていて、先生だけじゃなく僕たちも驚いてしまった。


「どうしてって男と女を同じ部屋にはできないだろう。何かあったらどうする?」


「「何かって何ですか?」」


……息が合っているのでしばらく三人に任せよう……


「学校行事では常に男女別になっているだろう? トラブルを避ける意味もあってだな」


「「だから、何のトラブルですか?」」


「何があっても、どんな人でも、差別や仲間はずれはだめだって先生言ってましたよね。それなのに先生が差別や仲間はずれをするんですか?」


「あーー……。さっきから黙っている三人は言いたい事ないのかい?」


理子の発言に一瞬言葉を詰まらせた先生が僕たちに問いかける。


「僕は理子の意見と同じです」

「私はどっちでも」

「……」


僕、友美、芹佳の順で発言する。と言っても芹佳は無言でしたが。


「相沢の意見は?」


「私は賛成する理由も反対する理由もないので。それより小木曽さんの気持ちはどうなんですか?」


全員の視線が綾乃さんに集中する。綾乃さんが発した言葉は……

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