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僕とボク  作者: ドク
14/24

#014 不安と困惑

午前五時を過ぎたところで体に違和感があり目が覚めてしまった。頭痛がするしさらに腰も痛い。時々激しい腹痛まで襲ってくる。頭痛は昨日一日寝ていたから寝過ぎのせいだと思う。でも、お腹の痛みは今まで経験したことがない。仰向けのままお腹を擦っていると、少し楽になった気がする。


吐き気もするので、痛みが治まるのを待ってトイレに行く。でも吐きたいわけじゃない。なんだろうこの尋常じゃない体の不調。ものすごく不安になる。とりあえず、トイレに来たんだから……トイレに座り……


「ぎゃーーーー」










なんとか気持ちを落ち着け部屋に戻る。ドアを閉めようとして再び激しい腹痛に襲われ、お腹を抑えて座り込む。呻いていると綾花さんが起きたみたい。「綾乃?どうしたの?」といいながらベッドから降りてきて背中を擦ってくれる。しばらくして痛みも和らいできて声が出せるようになったので、電話……とだけ言う。綾花さんが僕の携帯電話を持ってきてくれたので番号を直接打ち込み発信ボタンを押す。





「もしもし?」


「僕……だけど……あや……綾乃さんの……どうしよう……す……ごく……い……痛い」


なんとか声を絞りだす。涙声だし痛みでそれ以上言葉が続かない。


「わかったから落ち着きなさい。綾乃さんを行かせるから待ってなさいね」


お母さんがそう言って電話を切る。




綾花さんが体を支えて僕をベッドに連れて行ってくれる。横になると少し楽になった気がする。

電話を切って二十分くらい経った頃、インターホンが鳴る。綾花さんが部屋を出て玄関に向かう。


廊下からパタパタとスリッパ特有の足音がして綾乃さんと綾花さんが入ってきた。


「どうしたの? 大丈夫?」


心配そうな顔で覗き込みながら綾乃さんが問いかける。僕は綾乃さんの手を握りしめ、涙目で少しずつ声を絞り出す。


「すごくお腹……が痛い。血も出るし何かのび……病気? 綾乃さんの体を病気にし……しちゃった?」


綾花さんと綾乃さんが見つめ合って、少し沈黙が続く。


「「あー! あれかー」」


ニ人が納得したように同時に言い、そして部屋を出て行く。あれって何?


「はい、これ飲んで」


先に部屋に戻って来た綾乃さんが、カプセル薬とお水を手渡してくれる。受け取ったところで綾花さんが何かを手に持ち戻って来た。僕が薬を飲んでいる間にタンスに向かい何かをやっている。


「はいこれ。トイレでこれにはき替えてね」


そう言いながら綾花さんがパンツを差し出す。それだけで渡されると受け取りにくいよ……













「生理で大袈裟に騒がれたらびっくりするよ。どうしたのかなって思ったじゃん」


笑いながら綾花さんが言う。


「そんな事言われても、あの痛さは今までに経験がないし、出血までしたら焦るよ。本当に病気かと思ったんだから」


薬が効いてきて痛みも治まり、僕たちは部屋のテーブルを囲んで座っている。


「ボクも初めての時から慣れるまでつらかったし、大変だったと思う。来月は今より楽だと思うよ。それにしてもおかしいなあ……。予定より早いんだけど」


綾乃さんが首を傾げる。予定とかあるんだ。それに毎月こんな思いするのか……。女の子ってよく平気でいられるなあ……


「たぶん五段階段のせいかな? ショック受けたりすると乱れたりするじゃない?」


「五段階段って、あそこ通ったの? 男子しか使わないのがおかしいって思わなかったの?」


綾花さんの言葉に綾乃さんが反応して、僕に詰め寄る。こ、怖い。


「考え事してて気付きませんでした。ごめんなさい」


「あんまり責めないであげてよ。寝込んじゃうくらいショック受けてたんだから」


綾花さんが(かば)ってくれる。

暫く何かを考えていた綾乃さんが、ポンッと掌を合わせる。


「あー、三時間目の終わりにボクが変な声出したのって、碧さんのせいなんだ」


月曜日から今朝までの状況を簡単に説明された。

無意識に声が出てその後熱発し、翌日寝込む?

話を聞いて紙に時間と合わせて書いていくと、僕達の状況がほぼ一致する。


「入れ替わったニ人ってこんなことが起こるのかな?」


綾花さんが呟く。小夜ちゃんに聞いてみるのが確実かな。そう思い呼びかけてみる。


「小夜ちゃんいる?」


反応がない。ただの独り言のようだ。ちょっと悲しい。


「ボクちょっとトイレ」


「あ、アヤは飲み物取ってくるね」


そう言ってニ人が立ち上がりドアに向かう。綾乃さんがドアノブに手をのばそうとした時、ドアから手が生えてきた。


「きゃーーーーー!」

「みぎゃーーーー!」

「ぎゃーーーーー?」


綾乃さんと綾花さんが悲鳴をあげながら僕に抱きついてきて、僕はその場で腰を抜かす。ニ人の悲鳴につられて僕も叫んでしまう。手の主は小夜ちゃんでした。

ニ人には悪いけど、ドアの近くにいなくて良かったと本気で思ってしまった。あれは怖い。

離れていても腰を抜かしたんだから、ドアの前にいたらどうなっていたか……




「ごめんなさい、ごめんなさい」


しゅんとして謝る小夜ちゃん。部屋の外に現れてしまい、ドアを開けようとドアノブを掴んだつもりで、手がすり抜けてしまったようです。

僕達も、呼びだしていながら驚いてごめんと謝る。

永遠とごめんなさいラリーをしていても仕方がない。

僕が小夜ちゃんに質問する。小夜ちゃんの答えはこうだった。




僕が綾乃さんの体のことを大切にしているので、ショックを受ける状態になると、体が記憶している恐怖や不安を感じ取って心が乱れ、それが綾乃さんにも伝わる。そして綾乃さんは異なるニ人の精神状態を脳が処理できなくて高熱を出し、脳が落ち着くまで体を動かせなくなる。


よくわからないけど、つまり僕の失敗が綾乃さんにも負担になるってことかな。気をつけよう……






それから綾乃さんには話していない僕の近況を話し、綾乃さんの近況を聞き、お互いの数日間の情報を交換する。気になっていたクラスの女子の中で芹佳さんと友美さんとの関係も聞き、僕も呼び方を気をつけようと思った。

その後、小夜ちゃんの過去話を聞いた。


中学生の時に自殺……そんな過去があったんだ……


話を聞いてる間ずっと泣いてた綾花さんも落ち着き、小夜ちゃんに何か耳打ちしている。

小夜ちゃんが目を輝かせて綾花さんを見つめ、笑顔を見せた。

小夜ちゃんの笑顔ってすごくかわいい。見てる僕まで幸せな気持ちになる。


何を囁いたのか聞いてみたけど、綾花さんも小夜ちゃんも教えてくれない。でもいいか。小夜ちゃんのあの笑顔が見れたし。


気づくと午後ニ時を過ぎていて、「下校時間に重なる前に帰りたい」と、綾乃さんが帰り支度を始めた。

ニ人まで学校を休ませてしまい悪いことしたなあと思い謝ると「気にしないで」といい綾乃さんが出て行った。


「あ、これは二人だけの秘密にしててくださいね。理子さんは感じ取ってしまったみたいですけど」


そう言って話し始めた小夜ちゃん。

実はあの階段で、僕は少しの時間だけ綾乃さんになっていたって言われた。心の僕と体の綾乃さんがシンクロしてたから、だとか。

あの時聞こえたような気がした、細く弱々しかった声は僕、というか綾乃さんの声だったって。


でも、あの声を聞いた後くらいからの記憶がないんだよなあ。

何があったのか気になるけど、聞いてはいけない気がする。

綾花さんがボクを抱きしめて謝ってたような夢を見てた気がするけど。





小夜ちゃんもその話しをした後いなくなったので僕はもう一度寝ることにする。


明日はちゃんと学校に行こう……

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