それぞれの末路、団結の力
「侵入者を撃退しました。DP、経験値が入ります。」
引っ張った割に特に特筆することなく戦いは終わった。
まあ手に入ったDPの量からかなり格上の強敵だったと思うが、環境が味方してくれたようだ。
まず生命力の高いアメーバーですら即死んでしまうほど毒性の高い猛毒の霧と水、そして連中の用意した松明以外一切の光源がない暗闇に、足元の悪い水辺。
これらの要因により連中にとって自身を保護するための魔術や光源などの対策が必須。
つまりそれでだけで人手を取られるということだ。
対してこれらの悪条件はスケルトンに一切影響を及ぼさない。
彼らは言うなればただの骨だ。
毒の水も霧も一切関係ないし、アンデッドとしての特性として暗視を持っているので暗闇でも一切問題ない。
スパルトイに敵の主力を抑えさせたら後は魔術師やクレリックを殺して時間を稼ぐだけで連中は魔術による保護を失い、時間経過と共に弱っていく。
後はひたすらチクチク攻撃して最後はあっさりとスパルトイや水中に潜んでいたスケルトンアサシンに倒されていった。
「・・・信じられるか?この猛毒ダンジョンの罠じゃないんだぜ?」
いや本当、こんな猛毒が出来てるとか上の研究者たちはいったい何を研究しているのだろうか?
下手なダンジョンよりも殺傷能力が高いとか業が深すぎるだろ。
場面は変わってダンジョンの二階層。
ここはかなりの広さを誇る湿地帯エリアとなっている。
うっすら瘴気の混じる真っ白な霧に視界を遮られ、足元は冷たい水と泥、そしてその中に潜むアメーバーや大ムカデ、ローパーによる奇襲攻撃によりここに侵入した10人の団員達は疲弊していた。
だがそうはいっても彼らも特殊部隊に属する者たち、物理耐性のあるアメーバーには火の魔法を、硬いムカデには殻の隙間に刺突、または単純に打撃を行ったり、反対に柔軟なローパーには鋭い斬撃を繰り出すことで的確に弱点をついて処理していった。
本来ならば環境の悪さを考慮してもこんな雑魚モンスターが大量に来たとしても問題ないほどの力量を団員たちは持っているのだ。
だが、しかし現実には団員たちは欠員こそ居ないものの皆肩で息をして中には軽傷を負っている者すら存在していた。
それは何故か?
答えは簡単である。
アメーバーや大ムカデ、ローパーなどが例え大量に来ても捌けるのならば、更に多い数、超大量とも言える物量で押しつぶしたのだ。
その結果、彼らは疲弊し、装備も多くが壊れている無残な状態で周囲を包囲されているのだ。
「なんなんだ・・・?なんなんだよ此処は!?なんなんだ!?この頭おかしい物量は!!」
湿地帯に侵入した10人の団員たちのまとめ役であるレンジャーの男は僅かな時間でボロボロになったナイフで襲ってくるモンスターたちを切り払い続ける。
男はひどい状態で、装着していた皮鎧は酸でボロボロですでに厚手の服くらいの意味しか持たず、ここに入る前はよく手入れされて輝いていたナイフはひび割れ欠け既にゴミ一歩手前の状態である。
「ピギャアア!!」
「うるせえ!!」
だがそんな状態で振るい続ければ結果は見えたいた。
今また水中から奇襲をかけてきた大ムカデを切り払った結果、ついにナイフは根元からポキリと枯れた枝のように折れてしまったのだ。
「えっ!?・・・うわあああ!!」
折れたナイフを見た時、遂に男の心も折れてしまったようである。
折れた直後は咄嗟に迫ってきたアメーバーの核に折れた刃先を突き込み応戦したが、わずかにモンスターたちの猛攻が途切れた瞬間、男は冷静になってしまった。
そして己の状況を分析してしまい・・・絶望した。
男は座り込み、武器を捨て諦めた。
周囲の仲間から怒声を浴びるが男の心には何も響かない。
それから少しして結局ほかの団員たちも動けなくなってしまった。
ふと男は攻撃がやんだことに気づいて周囲を見渡す。
すると相変わらず自分たちを囲むモンスターの大群の中に彼らの進化系であるアシッドアメーバーや骸殻ムカデが居り、そしていつのまにか後衛として自分たちの中心にいた魔術師がジャイアントローパーの触手に捕まっていた。
恐らくモンスターたちのボスなのだろう。
三体の上位種が現れると同時にモンスターたちも静まり、三体がそれぞれ吠える。
「ピギャアア!(確かに俺たちは弱い!最下級のモンスターだ!!)」
「シャアアアア!(だが自らの弱さを自覚し、鍛錬し、策を練り、地の利を得た!)」
「ヴァア・・・・(幾十、幾百の同胞の献身のお陰で此処まで来たぞっ・・・)」
「「「■■■■■!!(これが団結の力だ!!)」」」
「ウルセエ!!」
男は何かしら理解できない怒りを覚えて戦意を再び奮い立たしたが、アシッドアメーバーに捕食されてあっさりとその生涯を閉じたのであった。
「オエエ!グロすぎるなあ。・・・まあいいや侵入者は全滅したみたいだし早速捕虜を見に行ってみるかな。」