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IdeaLand  作者: 中川のたり
13/23

Ex.魔の王1

「ずれたわね」

『!!?!』

「何?ずれたって」

「あぁ何でもないわ、ユート。ちょっと耳塞いでてくれる?そう... 暦もわからないなんて、頭が足りないんじゃないの?二重の意味で。」

『#*+&%€€€$』

「もういい?」

「ええ、じゃあいきましょうか...駄目親はほっといて。」

「??」

『....•••』

魔王について、

森の住民A

「魔王サマ……前の……アルジ。ツヨイ。」

皇国民B

「魔物の王ごときが人間サマに勝てるわけがなかったんだよ!聖王様万歳っ!」

森の城の住民C

「主様が倒されたという、魔物の王様ですよね?自分は辺境の出なのでよくは……」

黒の姫

「拉致ったことを今激しく後悔しているわ、 淫乱糞ヴィッチ。今すぐ素っ首括りなさい」


「ちょっと、ひどいですよ。貴殿方が魔王について知らないから御説明さしあげてるというのに」

あらあらと、紙芝居のようなプレゼンを中止し頬を押さえて困り顔をするのは深紅のドレスを身に纏う魔族の姫。


魔王。


曰く魔の母、魔物の王、災厄、殺戮者、覇王。

呼称は様々であるがその全てが世界の負の部分を選び抜いた物である。

全世界の敵である世界で最も禍々しい者。

全魔族を統べ、全人類を滅ぼさんとする者。

魔を体現し、呼吸をするように死をもたらす者。

遥けき寿命と膨大な魔力、そして言葉一つで周囲を焦土に変える力を持つ破壊の申し子。

それが魔王。

ルナがある目的の為といいその魔力にモノを言わせて作ったひたすらに頑丈な鎖に繋がれた少女を連れてきた時にはその場にいた皆がなるほどどうしてそういうもの《魔王》であると一も二もなくその存在を肯定した。

のだが。

(あ、なにこれ。すごいプレッシャー。あっ……だめ……っふぅ……)

恍惚の表情でほっと熱い息をもらすこの者が真の意味で魔王足る者であるなどと

部屋にいる誰もが認めたくなかった。




「魔王とは一種の災害でありますな。出生、行動理念、そして何を目的にしているかその一切が不明。それこそ神代の時代から存在しその定義も不明、これといった定型も持たずと……ないないずくしでございます。ひとつ分かっているのは上級魔族すら赤子の相手をするかのようにあしらう規格外の魔力と戦闘能力を持つもつ殺戮者。これが一般的な魔王の定義でございます。」

「要するに正体不明の不審者ね。ご苦労アレイスタ、ところでそこに不審者がいるのだけど即刻くびるか永久追放して頂戴。」

一言、了承の意を発して即刻動き出そうとするアレイスタをユートがいつもの悪戯した子に向ける視線だけで咎め、膝の上で魔王を睨み付けるルナの頭をペシンと叩く。

……叩かれた当の本人は頭にぽふっとのせられた手が中々撫でてくれないもんだから不思議そうに小首をかしげ彼の方を見ている。


呆れ顔でため息ひとつ漏らしルナの頭を撫でながら、指をひとつならす。

すると魔王の全身に繋がれていた魔力の鎖は高い音をたたて砕けちり、その様子に魔王は目を細め先程まで重石に繋がれていた手首を見つめ、ユートを見やる。

本当に一瞬、注意して見ても見過ごしてしまうような……実際自然に認識阻害がかけられたその視線は見るものに根元的な恐怖と冷や汗をかかせるに十分なものだったのが。


「御自重願いましょうか……?」


「先代のように消滅したいんですかー?」


「主様、魔法の使用許可を」


「主様を狙っている、それ即ちセス様を狙っているということ……お分かりですね?」


「あんたはどこから沸いたの、ジャッキー?」

「セス様あるところにジャッキーあり、貧乳は黙っ……うごぉっ!」


部屋の中にいたメンバーには認識阻害など魔王レベルであっても効いておらず、その視線の意味に気付いた皆がその必殺の矛先を魔王に向けている。

……ジャスミンと、いつの間にか魔王の背後におり余計な一言で彼女の魔法に半身を吹き飛ばされたスライム執事は除くが。

にしても目線一つで必殺の一撃を放とうとする、彼らの主であるユートに対する忠誠を表していると言っていいが、物騒と言えばかなり物騒である彼ら。

そんな部屋のメンバーの硬直の中、何しているの、下がりなさい。と気怠気に、厭きれ気に、上半身を起こしてそう言うルナは流石に裏でこの面子を統括する将、度量も格も違った。


「二度は無い、巻き添えにされて挽き肉にされたいの?」


勿論、忠誠とかそっちの意味で。




淡々とした絶対的強者からの一方的な死刑宣告。

表情を凍らせた一同が声を辿った先には、ちゃっかりユートと自分の回りに障壁を展開し天井一杯に構築された魔方陣に一国を滅ぼせるだけの魔力を凝縮させた混沌姫ルナが金冠を浮かべた眼を排除物《魔王》に向けて、これこそが将に必殺と云わんばかりの馬鹿げた威力を誇る術式を解き放つ所で


パキンッ

指鳴りが響く。


場に満ち溢れていた高々密度の魔力はその残沚すらも残さず消滅し、代わりに清廉とした空気が場に満ちる。


魔を司る王が魔王なら、その反存在である勇者とは何か。

その体現がここにいる。

解き放たれた場合一国を滅ぼすであろう混沌姫の巨大で強大な魔法を、

魔物の中で最高の硬度を誇るという幻想種の鎧鮫をも貫くと言われる鬼の王の魔力の刃を、

ただメイドの展開するには出鱈目な数の魔法陣を、そしてそれらの大半を受け止める魔王の障壁を、

その一切を痕跡すら残さずにただの指鳴りでこそぎとった彼。


魔の理の外の者。


勇者《魔殺し》が半眼から黄金の瞳を覗かせ、何時ものように微笑んでいた。

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