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LOVELY WHO  作者: はるやん
5/10

拒否権はないです。

「今・・・何て言った?」

僕は唐突な告白に戸惑い、どうやら動揺しているらしい自分に動揺する。嫌なら断わればいいのだろうが、その言葉は浮かばない。

「だから私と、今日一日付き合って下さい!」

二度目の告白には「今日一日」という台詞が付け足されているが、どういうことだろう。一夜の愛ということなのだろうか。

「どういう意味?」

今の気持ちを率直に訊ねる。

「そうですね・・・ まずは服を着替えて下さい。話はそれからです」

取り敢えず後輩の言うとおり、パジャマから部屋着へ着替えようとすると、少しお洒落な服に着替えるよう促される。まさか、本当に一夜限定の愛を僕と育むつもりか。わけが分からない注文に混乱しつつ、タンスの中から適当な服を選び取る。

「こんな感じか?」

選んだ服は無難にカジュアルな感じで、こ洒落た感は出ている。

「まぁいいでしょう。では、これを薬指に着けて下さい」

そう言って渡されたのはシルバーの指輪で、後輩の薬指を見てみるとなんとペアリングである。全くもって意図が読めない。

「私たちは今日一日カップルです。いいですね?」

いいも何も、何がなんだかさっぱり理解していない僕は、キョトンとするしかない。

「すまん、全然良くないのだが、まずその一日だけ付き合うってのは何だ?」

言いつつ受け取った指輪をはめようとするが、サイズが合わない。

「っていうかこの指輪、入らんぞ」

無理矢理押し込もうとするものの、指輪は第二間接で引っ掛かったまま動かない。

「マジですか、どうしましょ」

後輩は眉間に皺を寄せ、考える人のポーズをとる。

「チェーンを付けてネックレスにするのはどうだ?」

ダメ元で呟いてみた案だったが、後輩は気に入ったらしく明るい顔になる。

「それ良いですね。ストラップなら私持ってますし」

自分のカバンの中からチェーンを取り出し、僕にひけらかす。さっそく指輪を通して首にかけてみると、なかなかいい感じだ。

「良いですね。先輩似合ってます」

後輩はニンマリと満足そうな笑顔を覗かせ、その表情にドキッとしたのは変に意識しているせいだろうか。

「そうか?お前だってそのワンピース似合ってるぞ」

気を良くした僕は後輩のことを素直に褒める。すると後輩は面白い程に紅くなる。

「大丈夫か?顔真っ赤だぞ。熱でもあるのか?」

僕は後輩の体温を確認すべく、おでこをくっつける。

「ちょ、先輩何してるんですか。セクハラで訴えますよ!?」

後輩は益々紅くなり、まるでリンゴみたいだ。

「リンゴみたいだな。それに何だ、この前まではお前の方からべたべた寄って来てただろうが。何を今更」

後輩の豹変っぷりがツボにハマり、吹き出すのを堪える。

「う、うるさいです。私の気も知らずに・・・」

うるさいと愚痴られたのは聞こえたが、その後は口ごもっていて聞き取れなかった。

「ん、何だって?」

僕はニヤニヤしながら、後輩を(なじ)ることが出来る滅多にないチャンスを堪能する。

「何でもないです!もう先輩なんて知らないです」

後輩はというと、フグみたくほっぺを膨らませてそっぽを向く。どうやらいじけたようだ。これ見よがしに後ろから抱きついてみる。

「キャーーーッ」

抱きついた瞬間後輩は石のように固まり、しばらくあって悲鳴を上げる。

「ほんと何してるんです、か・・・ ちょっ、耳噛まな・・・はぁん」

後輩の性感帯をバッチリ把握している僕は、一番弱い耳を攻める。

「人が寝ている間に舌まで入れておいて止めろだなんて生意気な」

ギクリとした表情になりつつ、耳を攻められているせいで複雑な顔になる後輩はとても美しかった。いっそこのまま寝取ってしまうか、と本気で考えたりもする。

「先輩、起きてた、んですか。ズルイ、ですよ」

途切れ途切れに言葉を繋ぐ後輩が面白く、もっと弄りたくなるが、さすがにやり過ぎてはいけないと耳を舐めるのを止める。

「あ、止めちゃうんですね」

やっている時は止めろ止めろ言うくせ、いざ止めたとなれば物欲しそうな顔になるのは何故。

「まだやってほしいのか?」

さぞかし意地悪い顔をしているんだろうな、と想像しつつ後輩から離れる。

「いや、いいです」

改めて聞かれて首を縦に振れるような質問ではないため、案の定断られる。

「で、結局何をしたいんだ」

全く棚に上げられていた本題に腰を戻す。

「あっ、忘れてました。実は・・・」

後輩はおもむろに話し始めた。

「わたし、同級生二人から恋愛相談を受けてるんですよ。しかも、その二人はお互いのことが好きらしくて。私がいくら大丈夫だって言っても、二人共奥手のようで話しかけすらしないみたいなんです。痺れを切らしてデートの約束を無理矢理取り付けたんですけど、私一人では不安なので先輩にも手伝ってもらおうかなぁ、と・・・」

なるほど、僕はとてもめんどくさいことに巻き込まれるのか。

「僕に拒否権はあるのか」

「ないです!!」

僕の質問に噛みつくような形で返答したのには、後輩の決意が・・・不安が滲め出ている。後輩も大変だなぁと勝手に同情する。

「同情するなら手伝って下さい」

-----読まれた!?

「・・・って、同情されるようなことではないですよね」

僕の気持ちを悟られたかのようは発言は、単なる嫌味だと分かり、ひとまずほっとする。

「でも、奥手同士をくっつけるって詳しくはどんなことをするんだ?」

一応策はあるみたいで、映画を観に行くようには言ってあるらしい。

「映画ですよ!映画。暗い空間でハラハラドキドキを共にするんですよ!もったんとごまぞう君が互いの顔を見ることなく手を握ったり抱きついたり、あわよくばほっぺにチューなんてのもあるんですよ!?良い感じになること間違いなしです」

どうやらごまぞう君ともったんとは、今回の主人公&ヒロインの名前らしく、そのネーミングセンスには毎度のことながら脱帽だ。全くもって意味の分からないあだ名をつけるのが後輩の十八番(おはこ)で、他には顔がじゃが芋みたいだから「ジャガ」なんてのもある。それにしてもごまぞう君って・・・ ポ○モンの名前みたいに呼ばれているこいつの同級生とは会ったこともないが、可哀想になる。

「それじゃあ・・・行きますか」


かくして後輩の同級生、ごまぞう君ともったんをカップルにすべく、いざ待ち合わせ場所の駅前へと手を繋いで出陣する二人であった・・・

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