別に期待していたわけじゃ・・・
後輩が気絶して一時様子を見ていると、5分も経たないうちに気を取り戻した。
「先輩、もう我慢出来ません。ちょっといってもいいですか?」
机から降りた後輩は、黒い「それ」を股に挟めたまま、両足をモジモジとくねらせている。いくってまさか、イクのか?
「ちょっ、待て。取り敢えず股の、『それ』を外せ」
俺は慌てて立ち上り、しかしながら勃っていることを悟られてはいけないと思い、中腰になる。
「待てません!それに、今バイブを外したら出ちゃいます」
出るって何がだ。潮がか。
半生の中で女性の潮吹きを見たことがなかった僕は、そのままイカすのもアリかな、など至らんことを考えてしまう。だが、そう思うのは僕が変態だからではなく、健全な男性ならば誰しもが思うことだということを、強く言っておきたい。しかし僕も一人前に理性は持っており、欲望の一人歩きはなんとか免れた。
「それは・・・ダメだな。どうしたものか」
中腰のまま額に手をやり、よこしまな気持ちを何とか抑えつつ、解決策を探る。
「取り敢えずそのバイブ切ったらどうだ?」
幾つかの候補の中から、まずすべきだろうことを提案する。ようはバイブが振動するから感じるのであって、それを切ってしまえば何とかなるだろうと、そういう考えである。後輩も納得したのか、バイブのスイッチをOFFにする。
しばらくの沈黙。しかし、すぐにその時は来た。
「もうダメです。トイレ行ってきます!!」
なるほど、その手があったか。トイレなら誰にも見られず、思う存分にイケる。後輩も考えたものだ。だがそれでは僕は後輩の潮吹きを拝めることは出来ない。潮吹きを見られる滅多にない機会だ。これを逃せば、もう一生見られないかもしれない。後輩は急ぎ足で、しかしながら漏らさないように慎重にトイレへと駆け込む。
僕はどうするべきか知恵を絞り、妥協策として、聞き耳を立てて音だけを楽しむことを思いつく。さっそくトイレの扉に耳を寄せる。中からは後輩の色っぽい吐息がうっすらと聞こえ、一度萎んだ「僕」は再び勃ちあがる。しばらくあって、ジョボジョボと何かが出たような音がする。ついに念願が叶ったのか・・・
すごい勢いで発射するようなものを予想していた僕は、現実に少しガッカリはするものの、それでもやはり興奮し、鼻息を荒げる。
「ど、どうだ」
それから一向に出てこようとしない後輩が心配になり、声をかける。
「無事に漏らさずに済みましたよ、オシッコ。でも今になって全部が恥ずかしくなってしまって・・・ もう少しこのままでいさせて下さい」
後輩は少し照れ臭そうな声を出すのだが・・・今何て言った。
「えっ何が出たって?」
僕はすごく大きな、そして重大な勘違いをしていたことに気付く。
「だからオシッコですよ。最初から行きたいって言ってたじゃないですか。でもその時に歩いてたらきっと出ちゃってましたね。漏らさなかったのは先輩のアドバイスのおかげです。私、惚れ直しちゃいました。でも何で立ち上った時、中腰だったんですか?もしかして勃ってたんですか?やっぱり先輩は変態ですね。そんな先輩も好きですけど」
うるさいうるさい・・・ 僕はもんもんとした空気が自分から出ていることを自覚する。
「先輩、何黙ってるんですか?もしかして図星ですか。ほんと人として在り得ないですね。いっそ死んで人生やり直してください」
容赦ない罵倒に噛みつく元気もなく、膝から崩れ落ちる。別にいいさ。本当に潮を吹かれることに期待をしていたわけではない。期待してたわけじゃ・・・ 強がる僕の目からは、何故か涙が流れ落ちた。
何とかなった、かな?(笑)