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LOVELY WHO  作者: はるやん
10/10

「鍋でいいか?」

カウンター式となっているキッチンからはリビングが見え、その奥には綺麗な夜景が広がっている。独り暮らしの僕は、その夜景を見ながら料理をしたり、お酒を飲むことをささやかな楽しみとしている。冷蔵庫の中に入っている食料と、帰宅途中に近くのスーパーで買ってきた鍋の元を取り出し、後輩の確認を取る。

「私は何でも良いですよー」

後輩の方はリビングにあるソファーに腰掛け、テレビのチャンネルをいじっている。どうやら見たい番組があるようだ。

「狼彼女と大仏彼氏ってドラマ知ってますか?女性が積極的にある男性にアプローチするんですけど、鈍感でいっつも空振りに終わっちゃうっていう」

後輩があげたドラマは、名前を聞いたことのあるくらいには知っている。主人公を今話題のアイドルと実力派の俳優が演じるらしく、今季注目度№1のドラマだといつかの芸能ニュースで言っていた。が、元々ドラマ自体をあまり見ないため、大学でも話題についていけないことがしばしばある。

「いや、あんま知らん」

適当な大きさに切った野菜を鍋の中に放り、ある程度柔らかくなったところで肉やその他の食材を流し込む。

「面白いんですよー。主人公の男の人の鈍感っぷりが誰かさんにそっくりで」

誰だろう・・・ 近しいところでごまぞう君を考えてみるが、鈍感というわけではないので違う。考えているうちに鍋が良い感じに煮立ってきたので、リビングにあるテーブルまで運ぶ。

「すまんが鍋しきを取ってくれんか。二番目の引き出しの中に入ってるから」

後輩は了解、と立ちあがり鍋しきを取りに行く。取ってきた鍋しきの上に鍋を置き、蓋を開けると蒸気と共に食欲をそそる美味しそうな味噌の香りが漂ってくる。

「美味しそうですね。早く食べたいです!」

匂いに釣られたのかヨダレを垂らしそうに、今すぐにでも食べたそうな顔をしている。

「お前はまず手を洗ってこい。最近は風邪が流行ってるからな」

後輩は渋々はぁい、と洗面台の方へと小走りしてゆく。後輩が家に来るのは朝の不法侵入を合わせて二度、えな筈だ。一度目の不法侵入も含め、洗面台には行ったこともない筈だが何故一発で辿り着けたのだいろう。まさか前にもここに来たことがあるとか・・・ そんなわけないよなとは思うものの、寝ている間に僕の唇を奪い取る後輩だ。あり得ないことではないか。

そうこうしているうちに後輩が戻ってきたので、取り皿や箸などの準備をする。

「じゃあ・・・いただきます」

僕と後輩は手を合わせ、食材になっていった生き物たちに感謝の意を伝える。

「美味しいですね!」

後輩は自分の皿に鍋を取り分け、口いっぱいにほおばる。子供みたいだなと呟くと、

「うるさいです」

とほっぺを膨らませるが、その姿はやっぱり子供っぽくてつい吹き出してしまう。後輩は益々へそを曲げる。それも可愛いもんだ。

今日は色々な後輩が垣間見えた。初めて見た後輩のお洒落着はいつもとは違くて、大人っぽい。

映画では、意外とベタなところでビビるという怖がりな面が見えた。そして、誰よりもったんとごまぞう君の幸せを祈っており、二人が仲睦まずしそうに手を繋いで歩いて来た時は本当に良い顔をしていた。そんな後輩をもしかしたら本当に・・・

「なぁ後輩。もし僕が・・・ 僕がお前のことを好きだと言ったら、どうする」

後輩は鍋に手をつけていた箸を落とし、固まる。唐突な告白に混乱しているのだろうか。返事は、ない。

何か言葉を繋がなくてはとは思うも、気の利いた台詞が見つからない。

しばらくの沈黙。破ったのは、後輩の嗚咽だった。

「何故、泣いているんだ」

後輩の目から流れ出てくる涙のわけが分からず、ただただ呆然とする僕。この涙は、僕が流させたのか―――

「僕は、お前のことが好き・・・なんだと思う。まだ自分でも良く分かってないんだけど、多分」

「何ですかそれ」と後輩は言葉にならない嗚咽を僕に投げかけるが、何とか汲み取る。

「後輩は僕にとって大切な存在で、そうだな・・・ 例えれば妹分的な存在だった。でも。たまにそれが分からなくなる時がここ最近あった。大切じゃなくなったとかそんなんじゃなくて、後輩に対する見方が変わってきていたんだと思う。お前のことを本気で襲おうかと考えたことだって何度かある。まだその時は深くは考えてなかったんだがな。でも、今日一日こうやって一緒に過ごしてようやく分かった気がする。僕は、お前のことが好きなんだって」

言い終えた僕にあったのは、長年つまっていたしこりが取れたかのような安心感。後悔は、ない。

後輩は嗚咽を漏らしながら何度も、何度も頷いている。後輩が言葉を発せられるような状態になるまで待つ。

「うれ、ひいです。でも、嬉しいのに涙が出てきちゃって・・・ こんなとき、どうすればいいかわからなくって」

後輩は子供のように泣きじゃくれ、近くにあったティッシュで鼻をかむ。

「笑えよ。お前は笑ってた方が可愛いんだから」

僕の言葉に後輩は涙まみれで、鼻水まみれの顔でくしゃりと顔を崩す。今出来る精一杯の笑顔だろう。決して見てくれの良いものではなかったが、それでも僕には美しく思えた。愛おしく思えた。

それが、僕が見た最後の―――――

最後まで読んで頂きありがとうございました。

最後は何だかグダグダになってしまいましたが、ご了承ください・・・


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