表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄を狩る少女  作者: ジャクロの精霊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/55

卑劣な結末

静寂は絶対的だった。


皆が見守っていた。


紅潮の勇者は膝をついていた。


敗北した。


逃げ場はない。


戦うこともできない。


嘘をつくこともできない。


何年もぶりに…


彼は理性を失った。


手が震えた。


彼はアーヴェンを見た。


彼は衛兵たちを見た。


彼は自分が利用した人々を見た。


そして最後に…


彼は刹那を見た。


彼女はまだそこにいた。


屋上に。


彼を見つめていた。


憎しみもなく。


満足感もなく。


ただ見つめているだけ。


それが一番辛かった。


「いや…」彼は呟いた。


彼は笑おうとした。


しかし、笑いは漏れる前に消えた。


「いや…」


恐怖は明らかだった。


彼は何かを悟っていた。


もし彼が生き延びたら…


すべてが白日の下に晒されるだろう。


村々。


失踪事件。


嘘。


すべてが。


彼の名は汚されるだろう。


彼の功績は消え去るだろう。


そして、誰も彼を英雄とは見なさないだろう。


男は笑い始めた。


壊れた笑い。


空虚な笑い。


「なんという皮肉だ…」


彼は空を見上げた。


「これほどの力…」


沈黙。


「そして最後には…」


沈黙。


「何もない。」


アーヴェンは一歩前に出た。


「終わった。」


しかし、男はもう聞いていなかった。


本当に、もう。


彼の目は虚ろだった。


「いや…」


彼は首を横に振った。


「もう二度とそんな思いはしたくない。」


空気が張り詰めた。


「奴らに裁かれるものか。」


アーヴェンは眉をひそめた。


「やめろ!」


もう遅い。


男は絶望的な決断を下した。


恐怖から生まれた決断。


プライドから生まれた決断。


そして、結果に向き合うことのできない恐怖から生まれた決断。


一瞬後…


すべてが終わった。


静寂が辺りを包んだ。


重苦しい。


居心地の悪い。


誰も口を開かなかった。


誰も祝わなかった。


なぜなら、怪物でさえ…


悲惨な最期を迎えることがあるからだ。


アーヴェンは視線を落とした。


衛兵の一人が呟いた。


「これで終わりか?」


セツナが遠くから答えた。


「いいえ。」


皆が顔を上げた。


「あれは逃走だった。」


風が彼女のマントを揺らした。


「結果に向き合う方が、もっと辛かっただろう。」


沈黙。


そして初めて…


誰も彼女の言葉を疑わなかった。


皆が理解していたからだ。


紅潮の英雄は英雄として死んだのではなかった。


真実と向き合えなかった者として死んだのだ。


そして…


それが何よりも残酷な裁きだった。


一方、アーヴェンは微動だにせず、


考え込んでいた。


なぜなら、彼は刹那がずっと知っていたことを目の当たりにしたからだ。


すべての英雄が戦って死ぬわけではない。


真の自分を隠しきれなくなった時、死ぬ者もいるのだ。

読んでいただきありがとうございます!よろしければポイントや感想をいただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 英雄という耳障りの良き言葉でごまかせない力や一部の側面と向き合う事や晒す事は、人によっては凄まじい苦悩かもしれませんね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ