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英雄を狩る少女  作者: ジャクロの精霊


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2/8

英雄の楽園

紅の英雄の屋敷に朝が訪れたのは遅かった。


金糸で刺繍された巨大な赤いカーテン越しに陽光が差し込んでいたが、それでも寝室にはこぼれたワイン、高価な香水、そして汗の匂いが漂っていた。


床にはグラスが散乱し、


大理石のテーブルの上には空のボトルが転がっていた。


輸入絨毯の上には女たちの衣服が散らばり、


傍らにはひっくり返った椅子が置かれていた。


鏡には指紋と乾いた湯気がこびりついていた。


この贅沢な光景の中で、王国が英雄と呼ぶ男が眠っていた。


紅の英雄、ヴァルド・クロム。


彼の筋肉質な体は、貴族にも大きすぎるベッドに無造作に横たわっていた。


絹のシーツは彼の腰をかろうじて覆っているだけだった。


周囲には数人の女性がまだ眠っていた。抱き合っている者もいれば、長引いた宴の後に置き去りにされた人形のように、マットレスの端にぐったりと横たわっている者もいた。


ヴァルドはゆっくりと目を開けた。


彼は一度まばたきをした。


そして微笑んだ。


「なんて素敵な夜だろう…」


彼は気だるそうに起き上がり、肩を伸ばしながら、まるで王が王国を見渡すように部屋を見渡した。


近くのテーブルから半分ほど入ったグラスを取り、ワインの香りを嗅ぎ、ぬるくなっていることなど気にせず飲んだ。


隣にいた女性の一人が、かろうじて目を覚ましているように、かすかに身じろぎをした。


「ん…ヴァルドさん…」


彼は彼女を見ようともしなかった。


「もう一度寝なさい。」


女性は疲れ果てて何も言えず、すぐに従った。


ヴァルドは鼻にかかった小さな笑い声を漏らし、毛布を跳ね返した。


彼はゆっくりと立ち上がり、まるで全世界が自分のものであるかのように、衣服や贅沢品の間を裸足で歩いた。


そして、ある意味では、まさにそんな感じだった。


リドリア王国では、彼はほとんど何でも手に入れることができた。


ワイン。


金。


豪邸。


女。そして静寂。


何よりも、静寂。


なぜなら、名声には剣では必ずしも及ばない力があったからだ。


彼が役に立ち続ける限り。


彼が怪物を倒し続ける限り。


人々が彼の名を称える限り……


それ以外のことはすべて葬り去ることができた。


鋭いノックの音が静寂を破った。


ヴァルドは眉をひそめた。


「こんな時間に一体誰がノックしているんだ?」


すぐに返事はなかった。ただ、二度目の、より強いノックがあった。


彼は苛立ちのため息をついた。


「入れ。」


ドアが開いた。


一人の女性が足取りを落ち着かせながら入ってきて、明らかに緊張した表情で後ろのドアを閉めた。


彼女は銀色の刺繍と濃紺の装飾が施された白いローブを身にまとっていた。


長く明るい茶色の髪が肩にきれいに垂れ下がり、胸には教会の聖なるシンボルが飾られていた。


姿勢はまっすぐで、ほとんど厳粛なほどだった。


彼女は紅の勇者のチームの巫女、セラフィーヌだった。


彼女は一瞬、部屋を見渡した。


瓶。

女たち。


散らかった様子。


荒廃した様子。


彼女の表情はさらに険しくなった。


「またか。」


ヴァルドは苛立ちを露わにしながらも、恥じる様子もなく彼女を見た。


「おはよう、セラフィーヌ。」


「冗談はやめて。」


巫女は一歩前に出た。


「あなたがまだ酒と女に溺れている間に、外で何が起こっているか分かっているの?」


ヴァルドはあくびをした。


「説教しに来たなら、せめて着替えるまで待ってくれよ。」


「着替えていようがいまいがどうでもいいわ。私が気にしているのは、あなたが日に日にだらしなくなっていることよ。」


彼は彼女の口調に面白がって、ニヤリと笑った。


「だらしなくなっている、だと?」


「だらしなくなっているわ。」セラフィーヌは顎を食いしばった。


「噂が広まっているわ。またね。あなたの行き過ぎた行動は、もう以前のように簡単には隠せないわ。」


ヴァルドはテーブルに歩み寄り、香りの良い水の入った水差しを手に取り、頭をすっきりさせるために顔に水をかけた。


「いつも同じことを言うな。」


「だって、いつも同じことをしているから。」


巫女は彼から目を離さなかった。


「スラム街で女性たちが次々と姿を消しているという噂は、すでに広まっている。北での事件も忘れられていない。ギルドは動揺している。教会も、お前たちのあらゆる汚点を、もはや代償を払わずに隠蔽し続けることはできない。」


ヴァルドは短く笑った。


「ギルドが動揺?教会が心配?何という悲劇だ。」


「私を嘲笑うな。」


「では、どうしろと言うんだ?」彼はようやく彼女の方を向き、尋ねた。「跪け?」「謝罪しろ?安眠するために後悔のふりをしろ?」


セラフィーヌはしばらく沈黙した。


「あなたは一人じゃないということを理解してほしい」彼女はついに口を開いた。「あなたの行動は、グループの全員に影響を与える。このままでは、私たちも巻き添えになる。」


ヴァルドは眉を上げた。


「ああ、そういうことか。」


彼は半裸のまま、落ち着いた様子で彼女に近づき、身を隠すつもりもなかった。


「セラフィーヌ、君は正義について話をしに来たんじゃない。名誉について話をしに来たんだろ?」


彼女は後ずさりしなかった。


「私はあなたが越えてはいけない一線を越えていることを伝えに来たのよ。」


ヴァルドは軽く首を傾げた。


「一線?本当に一線について話をするつもりか?我々は怪物、裏切り者の冒険者、山賊、異端者、脱走兵を殺してきた……そして時には、彼らが本当に有罪かどうかさえ分からなかった。」だが、王国が我々を称賛する限り、誰も気にしなかった。


彼の笑みがさらに深まった。


「今さら説教をするのはやめてくれ。」

セラフィーヌの目は一瞬震えたが、声は毅然としていた。


「戦場とこれを比べないで。」


ヴァルドは赤い刺繍の入った黒いシャツを手に取り、静かに着始めた。


「何も比べてなんかいない。ただ真実を言っているだけだ。この王国には英雄が必要なんだ。偶像が。広場で像を建て、歌に歌われるような人物が。俺が勝利をもたらし続ける限り、誰も俺に手出しはできない。」


彼はシャツを整え終え、何気なくセラフィーヌを見た。


「王様もだ。」


「ギルドもだ。」


「お前が愛する教会でさえもだ。」


セラフィーヌは拳を握りしめた。


「これが永遠に続くと思っているなら、それは間違いよ。」


ヴァルドは静かに笑った。


「永遠に続く必要はない。ただ、十分な期間続けばいいんだ。」


それから彼は部屋の奥にある小さな机へと歩み寄った。


「永遠に持つ必要はないんだ。」机の上には数枚の紙、蝋印、羽根ペン、そして鍵のかかった金属製の箱が置かれていた。


彼女は羊皮紙を一枚手に取り、二本の指で持ち上げた。


「そういえば…私の注文品が今日届くはずよ。」


セラフィーヌは眉をひそめた。


「どんな注文?」


ヴァルドはまるで新しいおもちゃをもらったかのように、子供のような表情で彼女を見た。


「役に立つものさ。」


彼女は手を差し出した。


「見せて。」


「いや。」


「ヴァルド。」


「無理強いしないで。」


しかしセラフィーヌは一歩前に出て、彼が完全に紙を置く前にひったくった。


彼女はそれを読んだ。


そして彼女の表情が変わった。


最初は困惑。


そして信じられないという表情。


そして、恐怖が襲った。


「これは…何?」


ヴァルドはテーブルに背をもたせかけ、腕を組んだ。


「設計図だ。」


セラフィーヌの声はかろうじて聞き取れるほどの囁きだった。


「精神操作のネックレス…?」


彼女は再び中身をじっと見つめた。


服従のアーティファクト。


身につけた者の意志を打ち砕く魔法の物体。


強制的な服従。


抵抗の抑圧。


精神操作。


巫女はゆっくりと顔を上げた。


「これが現実じゃないって言って。」


ヴァルドは微笑んだ。


「紛れもない現実だ。」


「これは忌まわしいものよ。」


「道具だ。」


「奴隷制度よ!」


彼は肩をすくめた。


「何と呼んでも構わない。」


セラフィーヌは彼に一歩近づいた。


「なぜこんなものを欲しがるの?」


ヴァルドは数秒間彼女を見つめ、どこまで話すべきか迷っているようだった。


そして彼は淡々と答えた。


「抵抗をやめた方が、もっと楽しいこともあるからね。」


その後に続く沈黙は冷たく、


重く、


嫌悪感を催させた。


セラフィーヌは胃のあたりに吐き気を覚えた。


「あなた、病気なの…」


ヴァルドは乾いた笑いを漏らした。


「いや。ただ現実的なだけだ。」


「現実的?」彼女は抑えきれない怒りで声が震えながら繰り返した。「女を誘拐するだけではもう満足できないの?今度は彼女たちの精神を破壊したいの?」


「大げさに言うな。それに、お前が彼女たちを使う必要はないんだ。」


セラフィーヌは怒りと嫌悪が入り混じった目で彼を見つめた。


「かつてあなたが救世主だと思って、あなたの傍らで戦っていたなんて信じられない。」


ヴァルドは彼女を邪魔することなく見つめた。


「それなのに、君はここにいる。」


その言葉に彼女は沈黙した。


彼の言うことが正しかったからではない。


真実の一部が耐え難かったからだ。


彼女は様々なものを見てきた。


様々なことを疑ってきた。


数えきれないほど多くの回数、彼女は沈黙を守ってきた。


いつも自分に言い聞かせてきた。「一時的なものだ」と。


「大義が重要だ」と。


「仲間たちが王国を守っている限り、ある種の影は無視できる」と。


しかし、その影はあまりにも大きくなってしまった。


ヴァルドは彼女に顔を向けさせるほど近づいた。


「よく聞け、セラフィーヌ。民は我々を必要としている。我々を崇拝している。そして我々を恐れている。それら全てが私にとって有利に働く。だから、祈り続けるか、私の汚名を晴らし続けるか、あるいは身を引くか、どちらでも構わない。」


彼は彼女の手から巻物を奪い取った。


「だが、二度と私の気まぐれを邪魔するな。」


巫女は一歩後ずさった。


一瞬、彼女の瞳には怒り以上の感情が宿った。


恐怖。


なぜなら、その瞬間、彼はあることをはっきりと悟ったからだ。


あの男はもはや、汚れた英雄ではなかった。


道を誤った権力者ですらなかった。


彼は英雄の威光に身を包んだ怪物だった。


王国が養い続けた怪物。


誰もが成長を許した怪物。


そして今、誰も自分を止められないと、正当な理由をもって信じている怪物。


ヴァルドは羊皮紙をテーブルに置き、窓辺へと歩み寄った。


彼は二本の指でカーテンを少しだけ開けた。


そこから、朝日に照らされて輝く貴族街の一部が見えた。


召使たちが行き交い、


高価な品々を積んだ荷車が行き交い、


あらゆる角に衛兵が配置されていた。


すべてが清潔で、


すべてが美しく、


すべてが安全だった。


彼のような男のために作られた世界。


「今日はいい日になるだろう」彼は満足げな笑みを浮かべて言った。


セラフィーヌは何も答えなかった。


彼女の思考は渦巻いていた。


叫び出したかった。


彼を告発したかった。


必要なら、あの羊皮紙を引き裂いて教会の祭壇に引きずり込みたかった。


しかし、彼女はこれから何が起こるかも分かっていた。


ギルドは全てを否定するだろう。


貴族たちは結束するだろう。


教会は沈黙を要求するだろう。


そしておそらく、最終的には彼女自身が「王国の安定を脅かした」として追放されるだろう。


ヴァルドは少し彼女の方を向いた。


「もう行っていい」


セラフィーヌの声が少し大きくなった。

物語を楽しんでいただけた方、続きが気になる方、このシリーズを応援してくださる方は、ぜひお気に入りに追加したり、評価を付けたり、コメントを残していただけると大変励みになります。


短いコメントでも、執筆を続ける大きな励みになります。


読んでいただき、心から感謝いたします。

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― 新着の感想 ―
 慕おうが抵抗しようが性を貪り、酒に溺れつつ、名声とは別の形でも他者を操り人形にする……なるほど、魔物に例えられ、味方の巫女さんに忌まわしき者扱いされるのも納得の暗君・暴君の類いですね。  異形以上…
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