第三章、間章までの解説と思想書
第三章で世界の真理があかされます。ついでに仲間の過去回想も入れました。ここで語らないともう、仲間たちの過去が語るシーンはありません。できるだけコンパクトにしかし、仲間たちの背景が少しでも伝わるようなエピソードを概略で書きました。
内容はいかにもRPGらしい話が多いかなと思います。ここでいきなり主語を大きくしますが、ほとんどの人は普通生きていて世界情勢をそれほど意識しません。多くの人にとって人生は、これまでの過程の延長線上にあります。最初の冒険から魔王や勇者を意識したわけではない、という背景になるようなストーリーを書いてみました。
『勇者の誓い――かつての憧れは揺るがぬ意志となりて』のサブタイトルで書いたシーンがまさにそれです。英雄には憧れたが、しかし、最初から『勇者』になりたかったわけではなかった。ただ、いろんな冒険を超えて、そうなりたいと思った。そういう思いで書きました。
そして、竜王スキアが登場し、世界の真理を語ります。ここは語りが長すぎるので、少しでも映像的になるように意識をしました。そして、展開に矛盾が出ないように意識もしました。ここが地味に難しかったですね。
多少出るのは承知の上ですが、少しでも違和感の出ないような作りこみにしたつもりです。
転生者が原則二人も出ないようにするのはもちろんパワーバランスを崩さないためです。グレイブがアンデッドだからというのも後付けに近いですが、イレギュラーの説明の捕捉になりました。地脈云々や千人の犠牲もそんな感じで、特別感を出すために加えた設定です。そもそも簡単に王城で召喚ができると、イレギュラーな事態は起きにくいので、多少欠陥があるように書きました。
グレイブと白井綾香のシーンですが、ここは自分なりにいくつか捕捉事項があります。
サブタイトル『誰も知らない彼の見た景色』で認識阻害の魔法が発動するフードを白井綾香に渡したシーンがあります。ここは白井綾香が受け取るも、ぎこちない笑顔で返します。
まあ、正直、困っているわけです。たとえ、誤魔化せるとしても、ばれればいきなり殺そうとする人々の前に出ていくことは普通の感性では難しいです。このあたり、アンデッドのグレイブと、価値観が違いますね。
そして、サブタイトル『誰も知らない彼の見た景色②』で、白井綾香は『だって、この世界に私たちの居場所はどこにもないから』と言います。ここには実は書いていない背景があります。
この前にグレイブは半年間、留守にしています。調査のためと言っていますが、長いですね。グレイブなりに世界情勢を見たり、探索をしているのですが、アンデッドの力を極力使わず、正規の手段を取ろうとするため時間がかかっている設定です。
その半年の間、小説で語られてはいないですが、実は、白井綾香は一度人のいる町に出ています。認識阻害のフードを被って、身を隠しながらライラと一緒に出るわけです。しかし、ふとした瞬間に正体がばれるわけですね。ばれて殺されそうになるわけです。
とはいっても、もうこの世界で十分な強者となっていた白井綾香は、無事逃げ延びることに成功します。ただやはり大きなショックを受けるわけです。そして、グレイブと出会って、あの台詞に行きつくわけです。
なぜこれを書かなかったかというと、これを書かなくても、白井綾香が嘆き怒る根拠としては説明ができているからです。過去回想は少しでもまとめなければならない、内容が白井綾香に集中しすぎかも、そもそもこの話もグレイブ目線で解説された回想であって、白井綾香目線ではない、等そういう思いもあって、ここのシーンは割愛しました。
ここで書いているので、おまけでも書くつもりはないです。状況として、より動機づけとして深みは増しますが、テンポ悪くなりそうで、切り抜いて書くにも短くおちらしいおちも作れそうにないので、ここで触れる程度にしておきます。
もう一つ『……言いたいことは分った。しかしもし仮に日本に行けたとしてだ。お前の居場所は……』とグレイブのいうシーンですが、ここも一応の根拠はあります。
というのは、たとえ白井綾香が日本に戻ったとしてです。転生者の能力を持った状態で戻れば、やはりそこでも魔を統べる異形の女王。化け物です。そう思うと、もう人間扱いされたいという意味では無理なわけですね。詰んでいる……。
しかし、書いてみて思いますが、アレス側との分量の差異が大きすぎますね。世界の真理がそのままグレイブの過去と連動しているせいもありますが、不公平感は否めません。しかも同情的に台詞含めて書いていることもあって、ドラマ性も段違いです。我ながらずるいですね。
ちなみに『……先生ならそう言うと思ってた』という白井綾香の台詞ですが、要はそういうのを求めているわけじゃないってことです。リアルな話をすると、一緒に泣いたり抱きしめたりするのが最適解じゃないでしょうか。まあ、もうこのあたりも含めてグレイブがちょっとダメなところですね。グレイブのメンタルはアンデッドなので仕方ないです。いいシーンを冷やかしてすみませんが、そんな感じです。
そして、もう一つの間章で、グレイブの怒りの深さを露にしています。ここはガランド王に同情しながら書きました。
一応言っておきますが、彼はある意味で間違っていません。連綿と続けられた異世界転生を自分の代で終わらすことは普通に考えて難しいです。メリットとデメリットを考えれば、国王として続けるのが無難な考え方です。異世界転生の止め方もわからない以上、放置して、他国がいきなり強国になって、自国が滅ぼされれば目も当てられません。
千人の犠牲も当時の世界観でも、少なくはないですが、与える影響度を思えば、やれなくはないでしょう(現代の日本と違って、人の命は軽い)。そのために囚人や奴隷を集める仕組みも語られていない設定上ですが、裏でできています。
その転生者ですが、普通の人が来たら、普通にいつも通り、何とかなったはずです。そこで言い方は悪いですが、ガチャに失敗したわけですね。それで現れたのが魔を統べる異形の女王。人類の敵として生まれた存在。ガランド王に扱えるわけがありません。
ガチャに失敗した後、見つからなかったり、そしてグレイブにかくまわれたり、そしていつの間にか、これ以上なく厄介な魔王になって、勇者たちの活躍で何とかなったと思ったら、グレイブにガチギレされてアンデッドにされる。
まあ、ガランド王の立場からすればどうしろと?という心境だったでしょう。私も思い浮かびません。もう滅ぼされる運命だったのかもしれません。不謹慎な話ですが、多分あの世で、グレイブ以上にぶちぎれていると思います。どうすればよかったんだよ!
そしてグレイブですが、最後にガランド王をもっと陰惨にやり込めず、あそこで火葬(?)したのは、自分でもこれが意味のない八つ当たりだと知っているからです。ガランド王の立場を理解してはいても抑えきれぬ怒りがあって、許すわけにもいかず、燃やして終わりとしました。
グレイブが明確に人を殺す行為に及んだシーンを見せたのはここが初めてになります。が、もちろん被害はもっと大きいです。そもそもガランド王を責めていますが、自身もまた白井綾香を止めなかった責任があります。ただ、第三章で白井綾香の気持ちもまた分かるがために、何が正解かもわからず、彷徨い、傍観し、罪滅ぼしをするかのように陰ながらの人助けを行ったわけです。
ただ、グレイブ視点で考えれば、実はもっと選択肢はあったと私は考えています。
一つはグレイブが白井綾香の味方になって、犠牲をコントロールしつつ約束を果たす、あるいは、解決策を見つけ出すことです。
放置すれば、人々を自分たちの敵認定している白井綾香は際限なく魔物に襲わせ、殺していきます。そこをグレイブが政治的に選択し、効果的にやる。唯一白井綾香陣営で対話可能かつトップの実力者として、やり込めた人類側と交渉、あるいは支配を行い、異世界転生の秘術を暴き、自分たちのものにする。あるいは、白井綾香の特性、魔を統べる異形の女王を緩和させ、人らしく見えるようにする、そういう努力を進めることがまあ、政治的で無難な選択のように思います。犠牲ありきの冷徹、冷酷な判断、行動ですが、一番幸せになる可能性があると思います。
もう一つは、一緒に耐え抜くこと。これもこれでありです。転生者として破格の力を持っている二人は多分誰にも止められません。十分ありですが、グレイブはともかく、白井綾香の心は満たされないままです。我慢だけでは多分いつか決壊するでしょう。神経が削られそうです。
三つ目が、白井綾香をグレイブが殺すことです。それで終わりです。心にものすごい穴が開きますが、確実です。遅かれ早かれグレイブ自身が狂ってしまいますが、しかしやはりこれもありな選択肢です。
そして、その選択のどれでもない、傍観というのが、今回の作品です。なぜこの選択肢で書いたか、というとこのIFが最も劇的になるだろうと思ったからです。ちなみに傍観した本編は一番被害が大きいというストーリーになります。一番、人間らしい選択ですが、救いがない……。
ほかにもあると思いますが、ざっとそんなところだろうと考えていました。(後はもっといい感じに、白井綾香を慰め、正しい方向に導くというやり方もありますが、闇落ちしている彼女を導くのは超高難度ミッションです)こういうIFを考えるのは個人的に好きなところです。大体空想で終わりますが、まあこのあとがきで書けたのでよかったです。
そしてすべてを告げられたアレスは涙します。涙のシーンを入れるか悩みました。無理やり泣かせようとしているのでは、という雰囲気を残すような気がして、ちょっとためらったという感じです。ただ、やはりアレスなら泣くだろうと思って書きました。
しかし、後悔に沈むのではなくアレスは決意します。第四章でも語られている通り、確かに後悔はあるが、自らの選択もまた正しいものだと認識しているからです。そういう力強さをここからアレス側に入れてきたつもりです。
第三章と間章の解説は以上です。次の第四章の解説が異常に長いです。一番表現したかったところなので、当然ですが、ちょっと異常だと思います。他のなろう作品でもここまで書いている人はなかなかいないと思います。読者置いてけぼりですが、趣味でやり続けます。
逆にここまで読んでくださった方、ありがとうございます。いつも言っていますが、もうしばらくお付き合いください。




