勝利の光、揺らめく影
渾身の一撃が雷鳴と化し、魔王の黒炎と真っ向から衝突する。
仲間たちは、それぞれの信念と力を込めて、最後の一撃を放つ。
炎と雷、光と風――すべての属性が激突し、場は修羅と化す。
空間が震え、力の余波が城壁を吹き飛ばし、大地を深く抉った。
魔王と勇者たちは、互いに咆哮を上げ、力のぶつかり合いが天を焦がす。
そして――均衡が崩れる。
黒い太陽に亀裂が入り、じわじわと砕け散っていく。
まばゆい白光が世界を包み、闇を塗り替えていく。そして――
暗黒の太陽が崩壊した。
『くっ……!』
魔王が天を仰ぐ。
そして、次の瞬間、勇者たちが放った力の余波が、その身を包み込んだ。
『ぐ、あ……‼あああああああああああああっ‼』
魂が軋むような魔王の断末魔が空間を震わせた。
激戦の果て、半壊した魔王城の中心で魔王は力尽きたように弱弱しく倒れた。
『どうして……私は……ただ……この子たちと、一緒に……』
次第に崩れ始める魔王の体。言葉とともに空に溶けるように人としての原型を失っていく。
「ごめ……なさい、せん……い……」
その言葉を最後に残った一辺が灰となって、風に舞って空へ昇り、塵となって消えていく。
魔王の存在は完全に――この世界から、消えた。
「勝った……!」
タリクが震える声で言葉を漏らす。アリシアは感情をこらえきれず、目元を潤ませながら膝をつく。息も絶え絶えに大の字になって倒れ込んだヒースが拳を突き上げる。
アレスも剣を高らかに掲げ、叫んだ。
「勝ったぞおおおおおおおおおおおおおっ‼」
魔王が顕現してから五年――終わりなき侵略に抗い続けた年月が、ようやく幕を下ろした。
魔王城を覆っていた重苦しい黒雲が、ゆっくりと霧散していく。
青空が覗き、太陽の光が地上へと舞い降りる。その光は暖かく、静かで、優しく――まるで天上の神が祝福するかのようだった。
各地に潜んでいた魔物たちも、その動きを止め、野の影へと帰っていく。
最初は訝しんでいた人々も、それは魔王が討伐されたからだと気づき、歓喜の声を上げた。
鐘が鳴り、声が上がり、涙が流れる。
待望の平和が訪れた。
――誰しもがそう思った。
グランナレフ城の城下町、宿屋の一室で本を読んでいたグレイブの手がぴたりと止まる。
「……決着が付いたようですね」
グレイブが自分の右手首に視線を落とした。
ほぼ同時に、パリンとガラス細工が壊れるような音が響く。半透明の鎖が砕け、机の上に落ちると、霧のように消えていく。
契約の魔法だ。約束を違えれば命を奪う、絶対の誓い。それが、何の前触れもなく消えた。
なぜか。約束が違えられたわけではない。もしそうであれば、自壊より先に魔法的な反応が現れるはずだ。ならば理由はただ一つ――契約の相手が死んだのだ。
グレイブが本をしまい、ゆっくりと立ち上がる。
そして、彼は闇の中へと姿を消した。




