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異世界転生レクイエム  作者: 山下贋作
第1章 最後の戦いにして序章
5/50

勝利の光、揺らめく影

 渾身の一撃が雷鳴と化し、魔王の黒炎と真っ向から衝突する。

 仲間たちは、それぞれの信念と力を込めて、最後の一撃を放つ。

 炎と雷、光と風――すべての属性が激突し、場は修羅と化す。

 空間が震え、力の余波が城壁を吹き飛ばし、大地を深く抉った。

 魔王と勇者たちは、互いに咆哮を上げ、力のぶつかり合いが天を焦がす。

 そして――均衡が崩れる。

 黒い太陽に亀裂が入り、じわじわと砕け散っていく。

 まばゆい白光が世界を包み、闇を塗り替えていく。そして――

 暗黒の太陽が崩壊した。

『くっ……!』

 魔王が天を仰ぐ。

 そして、次の瞬間、勇者たちが放った力の余波が、その身を包み込んだ。

『ぐ、あ……‼あああああああああああああっ‼』

 魂が軋むような魔王の断末魔が空間を震わせた。

 激戦の果て、半壊した魔王城の中心で魔王は力尽きたように弱弱しく倒れた。

『どうして……私は……ただ……この子たちと、一緒に……』

 次第に崩れ始める魔王の体。言葉とともに空に溶けるように人としての原型を失っていく。

「ごめ……なさい、せん……い……」

 その言葉を最後に残った一辺が灰となって、風に舞って空へ昇り、塵となって消えていく。

 魔王の存在は完全に――この世界から、消えた。

「勝った……!」

 タリクが震える声で言葉を漏らす。アリシアは感情をこらえきれず、目元を潤ませながら膝をつく。息も絶え絶えに大の字になって倒れ込んだヒースが拳を突き上げる。

 アレスも剣を高らかに掲げ、叫んだ。

「勝ったぞおおおおおおおおおおおおおっ‼」

 魔王が顕現してから五年――終わりなき侵略に抗い続けた年月が、ようやく幕を下ろした。

 魔王城を覆っていた重苦しい黒雲が、ゆっくりと霧散していく。

 青空が覗き、太陽の光が地上へと舞い降りる。その光は暖かく、静かで、優しく――まるで天上の神が祝福するかのようだった。

 各地に潜んでいた魔物たちも、その動きを止め、野の影へと帰っていく。

 最初は訝しんでいた人々も、それは魔王が討伐されたからだと気づき、歓喜の声を上げた。

 鐘が鳴り、声が上がり、涙が流れる。

 待望の平和が訪れた。


 ――誰しもがそう思った。

 グランナレフ城の城下町、宿屋の一室で本を読んでいたグレイブの手がぴたりと止まる。

「……決着が付いたようですね」

 グレイブが自分の右手首に視線を落とした。

 ほぼ同時に、パリンとガラス細工が壊れるような音が響く。半透明の鎖が砕け、机の上に落ちると、霧のように消えていく。

 契約の魔法だ。約束を違えれば命を奪う、絶対の誓い。それが、何の前触れもなく消えた。

 なぜか。約束が違えられたわけではない。もしそうであれば、自壊より先に魔法的な反応が現れるはずだ。ならば理由はただ一つ――契約の相手が死んだのだ。

 グレイブが本をしまい、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、彼は闇の中へと姿を消した。

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