滅亡の焔――破滅の奔流
その直前。
無限に湧き上がるアンデッドを相手に戦っていたイリスとミレーゼは、空気の震えに同時に顔を上げた。
「ミレーゼ様……!」
「言わずとも分かります、イリス。先の衝撃の比ではない――世界を滅ぼしうる力が今、放たれようとしています――」
グランナレフ城を中心に漏れ出す異質な力が、あたりの空気を重々しく侵食する。
大地が震え、森がざわめき、風が逆巻く。
自らの命に無関心なアンデッドですら、攻撃の手を止め、戸惑うような呻き声を上げる。
さらに力が高まっていく。同時に胸の奥を掴まれるような根源的恐怖が、ミレーゼたちを襲う。
即座に守りの体勢に入るミレーゼ達。額に汗を浮かべ、全力で己の身を守る結界を周囲に張り巡らせる。
その直後――音が消えた。
次の瞬間、世界が白に染まる。
閃光が視界を焼き、無音の破壊が森を薙ぎ払った。
イリスとミレーゼは結界の中で衝撃を迎える。イリスは歯を食いしばり、震える腕で結界を支えた。
同刻。
アレスたちもまた、同じ――いや、それ以上の衝撃に晒されていた。
すでに限界に近いタリクは、それでも仲間を守るために残った力を振り絞って多重結界を張り巡らせる。
だが、破滅の波動は一秒ごとに結界を剥ぎ取り、光の結界は次々と砕け散った。
耐えきれないことは明白だった。すでに最後の守りを残して、結界はすべて破壊されていた。
「くっ……!」
タリクは全身全霊をかけて結界に力を籠める。しかし、対する力はあまりにすさまじく、人が抗うにはあまりにも大きすぎるものだった。
やがて――最後の結界に亀裂が入る。そして、ほぼ同時にタリクの結界が破砕した。
気力だけで立っていたタリクは限界を超え、糸が切れたように崩れ落ちる。
守りを失ったアレスたちへ、破滅の奔流が迫る。
「バアル‼」
雷撃を剣に宿してアレスが飛び出した。
「アレス⁉」
「アレスさん‼」
仲間を守らなければならない。
その思いがほとんど反射のような速度で身体を突き動かした。
暴風のような力の奔流を真正面から受けアレスは顔を歪める。だが、少しでも抗うため、雷撃を放ち、剣でもって切り開く。
だが、神剣バアルの力をもってしても途方もなく大きな力を前には抗しきれない。
仲間の盾となって立つアレスの身体を容赦なく削り、激痛が襲う。
しかし、関係ない。最後の最後まであきらめず、前に立つ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ‼」




