二人目の転生者――不死の王の真実
重苦しい沈黙が落ちる中、アリシアがおずおずと手を上げた。
「確認したいのですが……本来、転生者は一人だけ、ですよね?」
「それがどうした?」
ヒースが眉をひそめる。
「実は少し前から気になっていました。グレイブさんは転生者を名乗っています。ですが、魔王も転生者だったはずです。――転生者が二人。これは本来あり得ないはずです」
その指摘に、皆が息を呑む。
タリクが驚きながら言った。
「……確かに。過去に転生者が二人いた例はあります。ですが、それは――」
「大召喚の儀式が行われた時だけです。悪に堕ちた転生者を討つため、十年の歳月をかけて善なる魂を呼び出す……例外的な儀式です」
一拍置いて、アリシアが静かに続ける。
「世界の存亡が脅かされる時、周辺国家が協力し総力を挙げて行う召喚の儀式……ここ百年、そのような事例は記録されていません。――ならばどうして……」
『それは――彼がこの世界に生れ落ちた“その瞬間”に命を失ったからだ』
アレスたちは息を呑み、言葉を失った。
『与えられた力――不死の王。アンデッドとしての生を与え、死者を操る力。転生と同時にアンデッドとなったグレイブは、世界の理から“死者”として扱われた。ゆえに生きた転生者として数えられず、彼自身も目立つことを避け、歴史の表舞台から姿を消したのだ』
「そういうことか……」
「グレイブさんがアンデッドだったなんて……。でも、であればたしかに、三百年前――転生者が一人も現れなかった“空白の十年間”の説明が付きます……」
ヒースが唸り、アリシアが深く頷く。
「待ってくれ。じゃあグレイブは……三百年も生きていたってことか?」
「そうなりますね。アンデッドに生きていたという表現が正しいのかどうかという話はありますが……ですが、しかし……」
アレスが驚愕し、イリスは思案に沈み、タリクが補足する。
「異例中の異例です。転生者が誕生すれば、王国をはじめ周辺諸国が血眼になって探し出します。その目を掻い潜るなど至難の業……。ましてやアンデッド特有の気配は探知されやすい。――私も気づきませんでした」
「それを三百年か。よほど徹底していたんだな」
アレスたちの反応を静かに見つめていたスキアが、ゆっくりと口を開いた。
『そうだ。あの男は人前では己の力を封じ、流れゆく時代とともに名を変え、姿を偽り、諸国を渡り歩いていた。その間にも何度か他の転生者が現れ、時に友誼を交わし、時に刃を交えることすらあったが……それでも決して、自らの正体を明かすことはなかった』
スキアはそこで一度言葉を切り、重々しく続けた。
『――だが、ある日。グレイブは“ある転生者”と出会ったのだ』
空気がわずかに震える。
『最悪の魔王――お前たちがそう呼んだ転生者。白井綾香だ』




