竜王の巫女ミレーゼ
強力な神術の行使に消耗したタリクは肩で息をしながら膝をつく。
「やったか……?」
噴煙が立ち昇る中、ヒースが目を凝らす。
そして――煙の奥から、ゆらりと現れる影。
ユーゲルは、なお立っていた。
アンデッドの崩れかけた身体を引きずりながら、ふらつく足で言葉を吐く。
『ば、ばかな……!たかが人間ごときにここまでやられるとは……!――だが‼』
ユーゲルが闇の宝玉を掲げる。
黒き力が彼の肉体を満たし、傷が癒えていく。
そして、狂気の笑みを浮かべながら叫ぶ。
『忘れたか!この力がある限り私は不滅だと‼』
「くっ……‼」
アレスたちは即座に構えを取り直す。
まだ余力はある――だが、相手が不滅を謳う存在である以上、戦いは容易ではない。
しかし――その瞬間だった。
細く、鋭い光が空を裂いて走る。
天より差す一筋の光が、闇の宝玉を正確に貫いた。
ユーゲルは呆然と立ち尽くす。
手元の宝玉に亀裂が走り、次の瞬間――砕け散った。
『ありえん……これは我が王の……』
ユーゲルの声が震える。
ただ立ち尽くすその骸に、天から声が降り注ぐ。
「一度に限界以上の力を引き出そうとしたためでしょう。守りの力が失われていましたよ」
ユーゲルが見上げた先――
赤き竜の羽を広げ、美しくも凛々しい竜人の巫女が、光の中から現れる。
『何者だ……!』
次の瞬間、閃光がユーゲルの身体を貫く。
不滅を失ったアンデッドにとって、それは致命的な一撃だった。
「私は竜王スキア様の使い、ミレーゼ」
最期の声すらなく消えていくアンデッドを見下ろしながら、彼女は名乗る。
ユーゲルが完全に消滅したのを見届けると、彼女はアレスたちに視線を向け、ふわりと地上に舞い降りた。
「アレス、ヒース、タリク、アリシア」
勇者たちの名を一人ひとり呼び、ミレーゼは膝をつく。
その瞳はまっすぐに、揺るぎなく彼らを見据えていた。
「闇が世界を覆わんとするこの事態にあって唯一の希望の光、勇者たちよ。――もし、あなた方にこの闇を払う意思が、今なおあるのならば」
一拍の沈黙ののち、彼女は告げる。
「天の階へご案内します。竜王スキア様がお待ちです」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
もしよかったらブックマークの追加、高評価、リアクションいただければ幸いです。
励みと自信になりますのでよろしくお願いいたします。




