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異世界転生レクイエム  作者: 山下贋作
第2章 光の森、精霊界にて
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裁きの光槍、闇を貫く

「タリク!」

 アレスの声に、タリクが即座に応じる。

 視線が交錯し、言葉が交わされる。

「行けるか?」

「はい。任せてください。――イリス様、少しの間守りを頼みます」

 イリスが静かな決意をその瞳に宿して頷く。それで方針は決まった。

 タリクが詠唱を開始する。神聖な光が彼の周囲に集まり、空気が澄み渡るように変化する。

『何をしようと無駄だ‼やれ、アンデッド‼アビスドラゴン‼』

 ユーゲルが叫ぶ。闇からアンデッドが湧き出し、アビスドラゴンが咆哮を上げる。

 アンデッドの群れをアリシアの炎が唸りを上げて迎え撃ち、吹き飛ばす。しかし、敵の攻勢はまだ続く。アビスドラゴンがその巨大な口からブレスを吐いた。

 アレスが息を大きく吸い、剣を振りかぶる。

「《エル・バアル》‼」

 振り下ろしと同時に、剣から雷撃が迸る。

 雷と黒炎がぶつかり、衝撃が空間を揺らす。ブレスは相殺され、道が開ける。

 ヒースが駆け、そのあとにアレスが続く。

『■■■■■■■■■■‼』

 眼下を走る二人に、ドラゴンが唸りを上げる。煩わしげに巨大な足を振り下ろすが、当たらない。

 アレスとヒースは素早く動き、攻撃を掻い潜りながら二手に分かれて撹乱する。

 一瞬、どちらを狙うか迷うドラゴン。その隙を突いて、ヒースが跳躍する。

「でかい図体が仇となったな」

 ヒースがにやりと笑い、二刀を上段に構える。

 凄まじい気迫に空気が震えるようだった。二本の剣から妖気が漏れ、ゆらりと黒に染まっていく。

 同時に刃がきらめき、巨躯のドラゴンへと力強く振り下ろされる。

「黒鬼・冥葬斬こっき・めいそうざん‼」

 強烈な漆黒の斬撃がドラゴンの背中を深々と抉る。ドラゴンが天に向かって悲鳴を上げ、体勢を崩す。

「そら、もう一撃来るぞ」

 ヒースの声と同時に、彼は空へ跳ぶ。彼の示す先――地上にはアレスがいた。

 神剣を手に、雷を纏い、ドラゴンの胴を狙って技を放つ。

「怒りの雷槍ガダブ・アル・バアル‼」

 アレスの突き上げた剣先から迸る鋭い雷撃。それがドラゴンの身体を一気に貫く。

『■■■■■■■■■■‼』

 頑丈なドラゴン体をものともせず貫いた雷撃は、勢いよく天に昇る。

 ドラゴンが身もだえし、咆哮を上げる中、雷鳴がとどろき、空に光が満ちる。

 再び竜の背に降り立ったヒースは笑っていた。

「さすがに頑丈だな。――折角だ、タトゥーでも掘ってやろうか」

 そう嘯きながら、ヒースは縦横無尽に駆け回り、刃でドラゴンの身体を切り刻んでいく。

『ちょこまかと……!もろとも吹き飛ばしてくれる‼煉獄のヘルフレイム・サイクロン!』

 ユーゲルの怒声とともに、闇と炎が混ざり合った巨大な嵐が巻き起こる。

 ドラゴンを巻き込み、渦を描いてアレスとヒースを飲み込もうと迫る。

聖壁ホーリー・プロテクト‼」

 イリスの声が響き、聖なる光が盾となって嵐を遮る。

 だが――

『小賢しい‼その程度の守りが何になる‼』

 ユーゲルが闇の宝玉を掲げる。

 その宝玉が怪しく脈動し、闇の力がさらに膨れ上がる。

 嵐は勢いを増し、聖壁を突き破った。

「くっ……‼」

 防御を失ったヒースが吹き飛ばされ、地上に叩きつけられる。

 受け身を取って衝撃を殺すが、傷は浅くない。

「無事か?」

 駆け寄るアレスも傷だらけだった。ヒースは片頬を吊り上げて笑う。

「構うな。大した傷じゃない」

 その言葉の裏に、痛みを押し殺す気迫が滲む。

 ユーゲルが再び魔法を唱える。

黒焔ダーク・フレア‼』

 闇の炎が唸りを上げて襲いかかる。

『氷のアイス・シールド‼』

 アリシアの魔法がそれを受け止め、凍てつく壁が炎を遮る。

「癒しの聖風ルクス・ゼフィリア‼」

 イリスの詠唱が空気を変える。聖なる風が舞い、光粒が傷を撫でるように癒していく。

 仲間たちの息が整い、再び立ち上がる。

「行くぞ‼」

 アレスの声に、ヒースが応じる。

 二人は再び突撃し、疾風のような動きでドラゴンを翻弄する。

 闇の力で再生するドラゴンに対し、着実に傷を刻み込んでいく。

『ちぃっ‼しつこい者どもだ‼このままではらちが明かん‼アビスドラゴン‼後衛を先にやれ‼』

 苛立ちを隠せないユーゲルが叫ぶ。

 ドラゴンに命じ、後衛――イリスとアリシアを狙わせようとする。

 だが――それは、遅きに失した。

「今だ‼」

「「はああああああああああああああああああっ‼」」

 アレスの号令に合わせ、ヒースが息を揃える。

 二人の刃が、ドラゴンの右前足へと閃光のごとく振り下ろされる。

『■■■■■■■■■■‼』

 これまでの攻撃で傷ついていた右前足は、悲鳴とともに断ち切られ、地を揺らして巨体が前のめりに崩れる。

「霜の聖域フロスト・ヴェイル‼」

 アリシアの詠唱が空気を凍らせ、氷の結界がドラゴンを包み込もうとする。

『次から次へと、無駄な抵抗を……‼ 何度言えばわかる‼ 貴様らがいくら足掻こうが、私には届かぬ‼』

 ユーゲルが闇の波動を放ち、魔法を打ち消そうとしたその瞬間――

 彼は、異質な気配に気づく。

『……あれは……‼』

 天より降り注ぐ、おぞましいほどに神聖な力。

 それは、祈りの果てに生まれた審判の光。

 タリクが静かに目を開き、ひとことだけ告げる。

「行きます」

 そして――神術が解き放たれる。

「聖唱神判・裁きの光槍サンクタム・アリア・ヴァーディクト・レイ‼」

 天が震え、大気が裂ける。

 神の裁きが光の槍の槍となって現われ、闇を貫く。

『ぐっ……‼』

 ユーゲルの骸骨の顔がわずかに震える。それは、この戦いで初めて見せた驚愕の表情だった。

 そして――光が、容赦なく呑み込んだ。

 断末魔が空を裂き、ドラゴンの咆哮が天に消える。

『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ‼』

 その一撃は、神罰の具現。

 光がすべてを飲み込み、ドラゴンの巨体は跡形もなく消滅した。

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