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四 有能な神子

 高台から引き返して、さっきの屋代を通り過ぎ角を曲がると、広い境内と大きな神社が見えてきた。境内では,あっちこっちで建屋をいくつか造っており、大勢の人が忙しなく動いているのが見える。


 イケオジ神主の説明では、近々この境内でお祭りがあって、その準備が佳境を迎えているらしい。境内の中央には、鳥居から拝殿に繋がる石畳が続いており、拝殿に向かって右側に二つの櫓を作っている。


 祭りでは、その一つの櫓で太鼓や笛の演奏が行われ、もう一つの櫓で演舞が行われる。櫓の正面には道を挟むように長椅子がいくつかあり、演舞が行われる櫓を見るようだ。後ろから音楽が流れる中で演舞を見るのか。贅沢な感じがする。


 向かって左側の演奏をする櫓の前の、少し高い位置に貴賓席が用意されている。私の席も貴賓席に用意されるらしい。VIP対応である。ラッキー。


 拝殿に繋がっている石畳に沿うように、灯篭が立っているので、すごく華やかな感じがする。この他にも、境内には多くの灯篭が点在していて、巫女服を着た女の子が一つ また一つと術を使って灯りを点けてまわっている。この術で作った灯りは、朝まで灯りを保つうえ、燃えているわけではないので、風が吹いても消えず火事も起きない。おまけに明るさの調整をできて、さらに虫も寄ってこないという優れものだ。これは便利だね。


 境内をよく見ると、神社の関係者ではなさそうな人も何人かいて、祭りの準備をしている人をすり抜けて、拝殿に参拝をしているようだ。中央の石畳では、拝殿に向かっている人と戻ってきている人が確認できる。


 参拝者は、ラノベの異世界のように様々な種族がいる訳でなく、普通の人間に見える人たち。服装は、その殆どが和装なのだが、中にはスーツのような洋装の人も何人かいて、元の世界の初詣と同じに見える。その中には、金髪で目鼻立ちが整った可愛い女の子が、数人のグループでわいわいと楽しそうに歩いており、全員が和装を着ているので、旅行にきた外国人観光客に見える。ここだけ見ると元の世界と同じだ。


 境内の一部では、屋台の準備が進んでいて、既に多くの提灯が飾られている。華やかで活気があり、お祭り感満載だね。楽しい。


 「お祭りは十日後にございます。先代の神子様も顕現された当初は、祭りなどの祭事を大変心配されておりましたが、舞であったり祝詞であったりすることを、神子様にお願いすることは御座いません。そもそも、神子様は神と同等とされております。神楽などを、奉納される側のお方です。」

 舞を見てればいいのね。オッケーオッケー。


 「しかし、明日には新たな神子様が顕現されたことが、公になります。今回の祭りでは、神子様のお披露目の場となるので、神子様へのご拝謁を望んで多くの方が参られるでしょう。注目を浴びて煩わしいかも知れませんが、そこはご勘弁ください。」

 タレント気分を味わえるのね。どのぐらいの人が来るのか分からないが、第一印象は大事だから、笑顔で頑張ろう。


 「さらに神子様には、いくつか神事へ出て頂くことになります。とはいえ、基本何もせず座っていて頂ければ問題ありません。詳しいお話は、明日以降に少しずつさせて頂きます。」

 何もせずに座っているだけなら得意中の得意だが、それで大丈夫かな。 


 「この拝殿の奥に、この神社に仕えるものが住居としている社務所がございます。そこで夕餉の準備をさせて頂いているので、ご案内致します。社務所は今日より神子様に住まいとなりますので、よろしくお願いいたします。」


 日が暮れたら暗くなるのかと思ったが、灯篭や行灯、提灯などが無数に点灯されていて、かなり明るい。でも、明るさは充分なのだが、気温はどんどん下がっており、少し寒くなってきた。さっきまでは、制服で気持ちいいぐらいの暖かさだったが、日が暮れたとたんに、ぶるっときた。


 スカートの下が冷えてくると、生理現象で尿意を催してくる。やばい。


 社務所に入ったときに、私のお世話をしてくれるという巫女服の女の子に、トイレに行きたい旨を伝えた。イケメン武士やイケオジ神主にはなかなか言い出せないしね。

 「あのぉ、ちょっとおトイレに行きたいんですが?」

 「おといれですか?それは何でしょうか?」


 しまった、トイレは通じないらしい。少し焦ったが、何とか「お小水」で通じたので一安心。でも、英語などは通じない可能性が高いので、気をつけないといけないかな。英語禁止のバラエティ番組みたいだと思ったが、バラエティ番組って言葉は日本語でなんて言えばいいのかな?まあ、使うことは無さそうだからいいか。


 トイレは「ご不浄」というが、「便所」でも通じることがわかった。少しづつ、こちらの世界の言葉を覚えていこう。


 「こちらへ。」という巫女服の女の子に付いていったのだが、トイレに着いてびっくり。正直、くっさい和式トイレを覚悟していたのだが、小奇麗な様式便座がどんと構えていた。その上、まさかの水洗トイレだった。


 聞くと、流すための水は術を使って供給していて、排水は下水が完備されていて、そこに流しているとのこと。二代前の神子は、水回り、特に上下水道の整備に尽力して、中でもトイレと風呂の整備を強力に進めたようだ。便器は焼き物でできていて茶色い土色だが、座っていると見えないので問題なし。これは、助かるね。


 「夕餉の前に風呂に入られますか?ここの風呂は温泉と言いまして、二代前の神子様のご要望にて作りました。大変温まります。」


 はいっ 二代前 有能認定です。

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