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二十四 馬車

 遊廓からの帰りに、新しく出来た馬車を見に行くことにした。そこに向かう途中で、知らない間に決まっていた明日からの予定を聞くことにした。


 用意して貰った馬車の中には、私とさくら、蘭ちゃんとキョウのいつもメンバーである。嗣基くんは馬車に同行するように馬に乗って移動している。

 「ユキちゃんの実家は南洲の北東にある田ノ上という村で、稲作が盛んな所なの。米と同じぐらいお酒も有名ね。近くに温泉もあるから、ゆっくりできるわよ。」


 「この町から田ノ上村までは、途中で休憩しながら移動して1日ってところかな。1泊2日の馬車の旅って感じ。これぐらいの距離が馬車の性能を見るにはちょうどいい距離なのよ。途中で山超えもあるし。」

 聞いてみると、二日前の夜にユキに話を聞いた時から、旅の計画が始まったようだ。南洲も妖獣はいるのだが、その生息域や種類は分かっているので、大人数で移動する必要はないらしい。馬車も出来上がってきたので、試運転には丁度よいという事で、急遽計画が練られることになった。


 姫様の旅行がそんなに簡単に決まって良いのか?って気もするが、南洲の中での移動で、一泊程度の旅なら大丈夫という判断。でも、姫様をいきなり迎え入れる方は大変だろうと思うけど。「当日の朝に決まってもちゃんと対応してくれるわよ。」って・・・さくらに言われてもね。多分受け入れる側は超バタバタしていると思うよ。まあ偉い人にいわれると、対応するしかないのだろうね。どこの世界も大変だね。

 今回は昨日のうちに、田ノ上村の村長へ連絡がいっているらしい。二日前が早いとは思わないけど。


 ちなみに、嗣秋おじさまだけは今回の旅に反対だったようだ。退魔の旅もまだ早いのではないかと言っているぐらいだから。「いつまでも子供扱いで困っちゃうんだけど、心配してくれているのだから、仕方ないかな。」とさくらは言うけど、ちょっと過保護な気はする。


 明日は早い時間に出発、朝食と昼食は途中の村で取るようだ。街道沿いの村には、どこの村でも食事が出来るところはあるらしい。街道を外れた村も結界で守られているので、食事処はあるようだ。結界があるので、殆どの人が村に住居を置いていて、そこから農地や山に出かけて仕事をしている。仕事は日の出と共に初めて、日があるうちに村に戻るという生活をしている。村はそれなりに街灯があり、夜も明るい。夕食は家で取るのだが、一人暮らしの人や旅人のための、朝から夜まで開いている食事処がそれなりにあるのだそうだ。


 ほどなくしたら、町外れの細長い建屋が何棟か並んで立っている場所に到着した。中学の時に見学に行った工場のようだと思ったら、予想通り馬車などを作っている工場ということだった。この工場では、手押し車から高級馬車まで車輪がついているものを何でも作っている。ゴムを作っている建屋もあって、車輪などもここで作っている。今日は退魔の旅のための馬車を作っている奥にある特別結界に守られた建屋に向かうが、なんか他の工場も面白そうなので、別の機会に見学させてもらおうかな?工場見学って結構好きだったな。


 ちなみに、前回の馬車は違うところで製作されていたが、その場所は事件があったときに焼失している。その時の教訓で、何重もの結界で守ることが出来て、人がいなくなることがない場所として、ここが選ばれたようだ。職人もいるし、道具も揃っているので都合がよかった面もあったらしい。


 今回の馬車を作っている建屋は、警備の人がちゃんといて、中に入る人も厳重にチェックしている。既に馬車は出来上がっており、職人の出入りも少なくなっている様なので、この建屋の周辺では警備の人以外の人影を殆ど見かけない。

 さくらが来ることは既に連絡がきているようで、入り口に何名か迎えの人が立っており、その中で責任者らしい人が、「ようこそ、櫻花姫、神子様。遠い所ご足労頂き恐縮致します。今回は無事に馬車を完成させることができ、職人たちも安堵しております。」と挨拶をしてくれた。遊廓を出るときに、ここに来ること決めたのだが、山さんが先にきていて連絡してくれたようだ。さすがに仕事が早い。


 責任者の人について建屋に入り通路を抜けると、体育館の様な広い場所があり、そこに馬車が置いてあった。小さめのトラックぐらいの大きさの馬車で2階建てになっている。後ろに大きな車輪が付いていて、前の方は小さめの車輪が付いている。小さいといっても、直径1mぐらいの大きな車輪だ。


 馬車の入り口は後ろにあって、そこから2階に階段を登っていく造りになっている。私達は2階に登ると進行方向に向かって3人掛けのベンチが3列並んでいるのが見えた。9人はゆったり座れそうだ。天井までそれなりにあるので、屈まないで移動できるのは助かる。左右の壁は大きなガラス窓になっていて、カーテンがついている。窓の開け閉めができる造りになっているので、夏などは開けて移動すると気持ちよさそうだね。正面もガラスがついていて、ここは開かないが開放感がある。


 2階の後方は個室になっていて、着替えなどが出来るスペースになっている。既に着替えを含めた衣服が用意されていたが、荷物を置けるスペースはガラ空きだ。

 「明日からの旅では、櫻花姫、神子様、ユキ殿の三名とお供の方々の旅になるとお聞きしました。お供の方々は、嗣基様、キョウ様、蘭様の男衆とお聞きしましたので、男衆の荷物は下の部屋に用意いたしました。荷物は余裕をみて4日分を用意させて頂いております。退魔の旅では、この馬車で何名の方がお乗りになるのか決まっていないと伺っておりますので、収納を多く設定しておりますが、今回の旅では、かなり余裕がございます。是非長旅を想定してご利用頂き、ご意見を頂きとうございます。」と説明してくれた。

 なるほどと思うけど、なぜ当事者の私より明日からの旅に詳しいんだろうね。まっいいけどね。


 1階への入り口は、2階に登る階段の横にあった。1階の天井は2階よりも低いので、キョウや嗣基くんは少し屈み気味で移動するが、私やさくらはギリ屈まなくても移動できる。ぶつけると痛そうなので、屈むけどね。

 1階は2階と違って大きな窓はなく、細長い格子窓が天井近くにあるだけだ。灯りは術でつける仕組みで、灯り用のランタンが何ヵ所かある。中世のヨーロッパみたいで、とても雰囲気がいいね。


 1階の後方は荷物置き場になっており、そこに男衆の荷物が収まっているみたいだ。退魔の旅の時は、食料などもここに保管するようだが、現時点では2階と同じで、かなり余裕がある。男の人は荷物少ないしね。今は空箱が並んでいた。何に使うのかと聞いたら、さくらが芋を持ち帰るための箱だと答えてくれた。

 「芋を持ち帰るのも、大事な目的だからね。」さすが、さくらはブレないね。


 前の方に行くと、進行方向に対して横方向に3台のベットが並んでいた。ベットの上面は畳になっていて、この上に布団を敷けば、ゆっくり寝れそうだ。

 「野宿をする際は、こちらでお休み頂けます。ケガ人や病人が出た際も利用できますので、活用下さい。」と説明があった。確かに、体調が悪い時とかに寝るところがいるよね。ベットとベットの間は、カーテンで間仕切りも出来るようになっているので、いろいろと使えそうだ。病院の大部屋みたいだけど。

 ベットの先は、前方の御者が座る所に出られるようになっている。御者が座るところは、左右2人づつ、合計で4人がゆったり座れるようになっていて、その間から出てきた。


 すごく良い馬車だと思うけど、ちょっと大きすぎる感じがする。移動は大丈夫なのかな?

 蘭ちゃんも同じよう感じたのか、「すごく良い馬車だと思うのだけど、この大きさで馬の移動は大丈夫でしょうか?」と、責任者らしき人に聞いている。横から話をきいてみると、既に同じぐらい大きさの馬車を使って食料品や工業品の輸送は行われているようで、大きな街道では大量輸送手段の一つとして、活躍しているようだ。この大きさの馬車は2頭の馬で引くのが多いようだが、1頭引きの馬車や4頭引きの馬車もあるのだそうだ。


 「通常、この大きさの馬車は荷物を運ぶために作られます。大型の馬車として人を運ぶために作られる馬車としては、人が乗り合いで乗る馬車もございますが、この馬車より、ひと回りは小さめでしょうか。」と責任者が説明してくれる。

 「この馬車は、馬2頭引きでございますが、”ごんどら”と同じ仕組みも組み込んでおりますので、術でも移動することができる複合型の馬車でございます。退魔の旅の際には、術を使えるお供を従えた旅をお勧めいたします。」

 ハイブリットですか・・・凄いけど、そんな術が使える人をどうやって探せばよいのよ。


 馬車の確認したあと、城に戻ることになった。日も暮れてきたから、時間的にもちょうどいい感じだ。工場から馬車に乗ってから城に帰るまでは、明日からの予定を再確認することにした。さっき話があったが、私は同行者とか聞いてなかったしね。改めて、明日からの旅の確認が終わったところで、麓の駅に着いた。


 そこでふと、初音太夫から頼まれた遊廓の調査をどうするのか考えなきゃということを思い出した。馬車を降りて”ごんどら”に乗るまでは、さすがに人が多いので話せなかったのだが、”ごんどら”に乗ったあとは、キョウと嗣基くんが上手く人払いをちてくれたので、さくらに相談してみた。


 「ところで、さくら。さっきの初音太夫の話、どうしようか?」

 さくらは、「どうしようかね。」と少し考えていたが、突然「山さん。」というと、「はっ、ここに。」と背後に急に山の坊が現れた。ちなみに山の坊は、山さん呼びで良いということで、話がついている。それにしても、山さんは神出鬼没だね。多分ずっと見守ってくれていたのだろう。


 「太和屋のことを調査致します。」さすがナンバー1武道士だね。何もか分かっているようだ。かなりできる忍者みたいだ。

 「お願いね。それと山さん。」

 「なんでございますか?」

 「山さんの部下で、馬車を動かせるような術を使えるものはいない?」

 「それならば、私も川の坊も使うことができます。馬車の動力の件でございますね。困ったときには、私をお呼び頂ければ、馳せ参じますので、ご安心ください。」

 「それは好都合ね。困った時にはお願いね。」

 「御意。それでは失礼致します。」

 そういうと、一瞬で消えていった。遊廓の調査と馬車の動力の件が同時に片付いた。まあ山さんに丸投げをしたともいうが。


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