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十九 山の坊、川の坊

 大僧正の悪戯は、この寺に来る人みんなにやっているらしく、5割の人は謎を解くそうだ。のこりの5割は、「五つ子でしょ?」っていうらしい。確率が高いのやら低いのやら。でも謎を解かれても、大僧正は凄く楽しそうだ。


 少しのあいだ、談笑していたのだが、大僧正が少し真面目な話があると、顔の表情を引き締めた。

 「櫻花姫、神子殿、今日は顔合わせだけの予定だったのだが、少し相談があるのだ。聞いてもらえないだろうか?」大僧正が、改まった感じで、話を持ち出してきた。


 さくらが、どうぞという感じで頷いたのを確認した大僧正は、話を続けた。 

 「ここに居る山の坊と川の坊を、姫様たちの旅に同行させて頂けないだろうか?」

 おっと、私の仕事のようだね。


 山の坊、川の坊が交互に話してくれた内容は、先代の姫の話だった。先代の姫は、当代領主の嗣元の母である徳井川藤花とうか、さくらや嗣基くんの祖母である。今年で65歳、まだ存命で徳井川家の別邸で過ごしているという。


 山の坊と川の坊は、北の方にある小さな村で生まれた。その村は、米作を中心とした農業が盛んな村だった。冬は、その米を使った酒造りも盛んで、小さな村ながら裕福な村だった。この世界では、代官が村人から納税を搾取をして、私腹を肥やすという時代劇定番の展開は期待できず、かなり税率は低いみたい。それでも財政が何とかなっているのは、各々の領土で商売をしているらしい。鉱物を売ったり特産品を売ったりもあるが、娯楽の提供もしている。山の坊と川の坊の故郷では、作った酒を他の領土にも販売していたので、その際に税金を納めても、村には十分なお金が残っていた。


 しかし、その酒を妖鬼に狙われてしまった。


 酒好きの妖鬼は、美しい娘に姿を変えて、旅人に扮装して村に訪れた。村の中央を通っている街道沿いで、その娘が足を挫いたように身を屈めているところに、通りがかった村の若者が声をかけた。若者は、美しい娘に一目ぼれ、治療のため近くの自宅に招き入れた。娘は治療を受けながら、言葉巧みに酒蔵の位置や、この村の防衛体制、対妖獣組がどこにいるのかを聞き出した。


 対妖獣組は、どのむらにも駐在している訳ではない。大きな町には駐在しているのだが、小さな村が点在するこの近辺では、村に駐在することはなく、各々の村を巡回する形で警護をしていた。村に駐在所があり、そこに何泊かしたら、隣の村に移動するのを繰り返しており、この村に来るのは3日後だった。


 妖鬼の行動は早かった。若者に一晩泊めてほしいと頼むと、若者は喜んで泊めてくれることになった。夕方、日が暮れて辺りが暗くなった頃に、どうやって連絡したのか分からないが、村の四方から妖獣が攻めてきた。妖獣は頭の中央に角が生えた狼で、集団で襲ってきたのだ。


 村の周囲には、灯篭が並んでおり夜は明るいのだが、灯りをつける直前に襲われたので、村の中にまで妖獣が入り込んできた。村人達の中には剣を学んだ人もおり、その人達や村の若者が、農具を武器に勇敢に戦った。村人たちは、多くの妖獣を倒すことが出来たが、同時に多くの村人が殺されてしまった。戦いの情勢も、最初は均衡していたのだが、倒しても倒しても妖獣が襲ってきて、徐々に劣勢となっていった。


 村人は、妖獣が襲い掛かって来た時から、隣の村に駐留している対妖獣組に知らせるために、何人も向かわしたのだが、すべて妖鬼に阻止されていた。妖鬼は最初から警戒していたようで、隣の村に向かった村人の前に現れて

、村民を殺していった。妖鬼に対しては、村人では手も足も出なかった。


 そんな時に、退魔の旅を続けていた藤花姫一行が、隣の村の対妖獣組のところへ向かうために、この村を通りかかった。一行は、灯りのついていない灯篭をみて村の異変に気がつき、直ぐに村の戦に参戦した。姫の護衛はびっくりするほど強くて、参戦した瞬間から一気に形勢が逆転した。護衛によって、村を襲っていた全ての妖獣は倒され、藤花姫と当時の神子である先々代の神子によって、妖鬼も倒された。


 「我々には、姫様と神子様が戦いの女神に見えました。輝いていて、眩しくて、見るものを全て包み込むような、大きな力を感じました。戦いが終わったあとも、姫様達は村に留まって後始末を手伝ってくれました。後片付けをしている途中で、やっと隣の村にいた対妖獣組の方も駆けつけ、一緒に後片付けをしてくれました。」


 次の日の朝には、村の広場に殺された村人が集められ、その中に山の坊と川の坊の両親が含まれていた。二人は一夜で孤児になってしまったのだ。家も壊されていて、住む場所もなくなっていた。他にも何人も孤児が生まれてしまったが、親類が引き取って育てることになった。


 「その戦いで親を失った我々は、これからどうするかを、子供なりに話し合いました。我々を引きとって育てても良いという親類もいましたが、我々の意見は違っていました。我々は姫様と神子様に、恩返しがしたかったのです。我々は、姫様のお手伝いをさせて頂きたいと願い出たところ、姫様は快く承諾してくれました。」


 その後、藤花姫一行に同行して旅をして、南洲にたどり着いた山の坊と川の坊は、この徳井寺に預けられ、いつの日か新たな姫様と神子様のお役にたてるよう、修行の日々を送ってきたということだった。二人の目をみると、真剣さが分かると共に、子供のように冒険を期待している目をしていた。


 「この二人は、徳井寺の武道士の中でも、最も優秀な武道士で、多くの間者を従えておる。役に立つこと間違いなしじゃ。」大僧正もお墨付きである。

 「先の旅での我々は幼く、先代の姫様、神子様の足手まといでしかありませんでした。村育ちの我々は、生活のお役にも立ちませんでした。それでも、姫様、神子様を始め、退魔の旅をされていた皆様には、温かく迎えて頂いたこと、感謝の言葉しかございません。」

 「いまの我々は、この日のために厳しい修行を行い、新たな姫様のお役に立つために、入念な準備をしてきました。是非、姫様の退魔の旅への同行をお許し頂きたい。」


 なんか圧倒されてしまった。意気込みが違うというか。さくらの方を見ると、ニコッと頷いているし、私も仲間にしても良いと思う。山の坊は、最強の武道士といっていたので、護衛として問題はない。

 「山の坊様、川の坊様。私は、この世界に来たばかりで、分からないことが多いです。私たちの、力になって頂けますか?」


 新たに二人のお供が決まった。これで5人の同行者が決まった。順調・・・なのかな?


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