表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

十六 術

 神社の裏山に修行場があるということで、食事が終わったら巫女服に着替えて、その場所に向かうことになった。イケメン神主の伸明と祈祷師2人が、始業場までの案内と、修行に付き合ってくれるらしい。


 しかし、修行は神官たちとだけ実施するのかと思ったら、何故かさくらと蘭ちゃん、キョウもニコニコ楽しそうについてきている。なぜかおやつ持参で完全に遠足モードだ。大宮司も一緒で私の後ろを歩いている。

「さくら、忙しいのじゃないの、恥ずかしいから、ついてこないでよ。」

「何言ってるの、これから命を預ける人の初修行、見ない訳にはいかないじゃないの。」

にやけながら言っているので、絶対違うね。絶対、何かのイベント感覚でついてきている。蘭ちゃんも楽しそうだし、まあ良いけど。


 裏山を少し歩いていくと、木が生えていない広場の様な場所に出てきた。山側が崖になっており、如何にも修行をするための場所だったので、イケメン神主に聞くと、やはりここが修行の場のようだ。大宮司が禊を行う場もここの様だ。私としては、戦隊ものの戦闘シーンで爆破演出しか思い浮かばないけどね。


 崖の方をよく見る、その一部に滝があり、滝行も出来そうだ。その脇には、鳥居と祠がある小さな神社がある。

 「あそこにあるのは、徳井寺の摂社といわれるもので、この修行を、九尾様に見守って頂くための神社となります。」

 なるほど、この神社では九尾の狐が神なんだろうね。ここにいるメンバーで、九尾に対して嫌悪感は微塵も感じないから、本当に信仰しているのだろうね。でも、滝行は寒いからいやだなぁ。


 蘭ちゃんとキョウは、二つの切り株の上に丸太を半分にした木を乗せて、即席のベンチを作っていた。その丸太どこから持ってきたって、突っ込みを入れる間もなく即席ベンチの上に布をかけ、観覧席が出来ていた。早速、さくらはベンチに腰かけて、蘭ちゃんが用意した紅茶を飲んでいた。大宮司も見学モードで、さくらの横に座ると、楽しそうにお喋りをしている。楽しそうで何よりです。


 「それでは神子様始めましょうか。」よし、こっちは特訓だ。


 「まず、生活に役立つ術をいくつか挑戦してみましょう。火と水の術が、非常に一般的な術になります。」

 街灯の灯りなどの光の術は、大きく分類すると火の術の一つ、氷を使う術は、水の術の一つらしい。ほとんどの人は、この二つの術は使えるのだそうだ。これは覚えねば。便利そうだしね。


 祈祷師2人は小枝を集めて、三角錐に組んで焚火の準備をしており、一方で竹を地面に突き立てて、上面に蠟燭をセットしている。

 「神子様、術というのは、心の中で出したいものを想像し、その想像の中で出したいものを集めて、集めたものを指先から放出することで、発動致します。まず、最初に挑戦して頂く火の術では、火のついた蝋燭を見つめて精神統一をして頂き、目を瞑って心の中で火を集めるように、想像をしてみて下さい。其れが出来ましたら、手を焚き木に向けて、火を放ってみて下さい。」

 簡単に火を放って下さいって言われてもね。まあダメモトでやってみますか。まずは蝋燭を見つめてっと。


 まだ、イメージが掴めなかったけど、えいってやってみたら焚き木に少し火がついて、直ぐ消えてしまった。

 「すごい、初めてで火が着きました。すごいです。」

 蘭ちゃんがすごく褒めてくれて、さくらも「すごい、すごい」と拍手をしてくれている。二人とも、褒めて伸ばすタイプのようだが、私もびっくりで、ちょっとうれしい。

 「神子様、最初から火を出せるのは凄いことです。火の属性があるのでしょう。では、もう少し大きな火を想像してみて下さい。先程の火が長く留まることが出来なかったのは、蝋燭では小さな火を想像したためかも知れません。焚き木に着火することができる、大きな火を想像して頂ければ、着火することができると思います。」

 イケメン神主も、褒めて伸ばすタイプだね。


 その後、最初の時と同じような感じで、火は出るが着火しない状態が続いたが、続けていると少しづつ慣れてきて、5回目で焚き木に着火した。私の頭の中では、5本の蠟燭が揺らめいている。大きな火が想像できなかったので、一本ずつ蝋燭を増やしていったのだが、これで大丈夫だった。


 さくらと蘭ちゃん、キョウは、「おしい」「もうちょっと」と応援してくれていて、着火した時は立ち上がって喜んでくれた。大宮司も拍手してくれているが、すごく真剣に見てくれていた。

「神子様、おめでとうございます。初めての術の習得でございますね。」

 イケメン神主も、拍手をしながら褒めてくれる。私は褒められて伸びるタイプなので、このメンバーだと成長できそう。イケメンに褒めらられると、テンション上がるしね。


 「それでは、少し休憩をして、次は水の術を試してみましょう。」

 やった休憩だ。さくらが持ってきたおやつ、気になっていたんだよね。


 さくらのおやつは、ジャガイモを角切りに切って揚げたもの、フライドポテトだった。名前は揚げ芋って、そのままやん。味付けは、塩だけとシンプルだけど、もの凄く美味しい。いい芋を使っている。


 「ところで、さくら達はどんな術が使えるの?」

 「私たちも、いくつかの術は使えるわよ。」


 まずキョウが、手をクルってまわすとつむじ風が出来て、そのつむじ風が、周りの枯れ葉を舞い上げた。つむじ風はキョウの指の動きにあわせて、縦横無尽に動いて枯れ葉を巻き込んで、目の前で消えた時には枯れ葉の山が出来ていた。すごい。


 「風の術は、想像するのが難しくて使える人は少ないのだけど、僕は適性があるみたいで、昔から使えるんだ。術を攻撃に使える忍術にするには、術の力を高めるか、いくつかの術を組み合わせる必要があるのだよね。中でも風の術は覚えると忍術を作りやすいので、できると良いよ。例えば火と風の術を組み合わせるとこんな感じかな」

キョウは大きく手を崖の方に振ると火の球が崖に向かって飛んでいき崖に穴を開けた。すごい。


 次に、その枯れ葉の山に蘭ちゃんが手をかざすと、火が着いた。

 「私は、火の術を使えます。でも使えるようになるのに、何回も練習しました。この短時間で習得された神子様は凄いです。」

 さくらは、この展開を読んでいたみたいに、荷物の中からサツマイモを取り出して、焚火の中に放りこんだ。

芋好きだねぇ、私も好きだからウェルカムだけどね。

 「私も火と水の術は使えるけど、あまり得意じゃないの。得意なのはこれ。」といって、立ち上がったさくらが両手を左右に伸ばして一回転すると、どこともなく桜の花びらが舞って、私達の周辺に草と花が生えてきた。見とれてしまうぐらい美しい術だ。

 凄いって褒めたら照れながら、「この術は、歴代の姫しかできない術なの。私も好きな術なんだけど、生活にも戦いにも使えない術なのよね。」

 なるほど、この三人で戦いに使える忍術を使えるのは、キョウだけなのか。確認したらそうらしい。大丈夫かな?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ