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十五 ガールズトーク

 泣いたのは、いつぶりだろう。でも、泣いたことでかなりすっきりして落ち着いた。


そろそろ神社に戻ろうってことになったが、なぜか大人数で移動することになっていた。


 まず、さくらが神社に泊まることになった。この城にも風呂はあるのだが、神社の風呂のほうが大きくゆっくりできるので、一緒に入りたいと言い出した。先代の神子の時も、たまに神社に泊まってたようなので、準備も段取りよく、私がメソメソしている間に準備が整っていた。


 そうなると、蘭ちゃんも神社に泊まることになるし、それなりの護衛もついてくる。姫様だからね。嗣基くんとキョウもついてくるかと思ったが、今回は来ないそうだ。それでも、それなりの人数になるので、大移動になってしまったが、みんな気にしていないというか、慣れている感じがする。


 本当に神社に泊まったのは、たまにだったのか疑わしいね?そうは思いつつ、私がさっき泣いちゃったので、さくらは私を心配してきてくれるのだと思うので、感謝である。


 私とさくらが先頭で、神社に向かって歩き出したが、神佛横断道は驚くほど明るかった。等間隔で街灯が灯されていて、更に祭りの提灯が、連なっている。

 町の方を見てみると、外周が煌々と灯りが灯っており、町の中も新宿や渋谷並みに明るく照らされていた。祭りが近いからかなとも思って聞いてみると、魔物は明るいところが苦手なようで、普段でも夜はこれぐらい明るくしているそうだ。


 それでも、明るいのが苦手なだけで襲ってくることもあるので、夜も巡回で警備をしているのだそうだ。なかなか大変な環境だなぁ。でも、神佛横断道から見る夜景は、すごく心に安らぎをくれる。多分灯りがないと真っ暗闇なんだと思うと、安心感だけではなく、心の安らぎも貰っている気がする。


 神社に戻ると、蘭ちゃん以外のお付きの人は城に戻ったので、ユキも誘ってさくらと三人で、風呂に入った。蘭ちゃんも誘ったが、顔を真っ赤にして遠慮されてしまった。結構本気で誘ったのだが、残念である。


 風呂に入っているときから、寝るまでの間は、女子トーク全開だった。女子トークと言えば恋愛話、集中砲火を浴びたのはユキだった。ユキは、嗣基くんがすごく気になる存在のようだが、身分の差もあり諦めていた。しかし、さくらが大賛成でノリノリで協力に押してくる。なんなら、側室も視野に入れるべきと、楽しそうだ。この世界では身分の壁はあるようだが、何とかなるのだろう。親が子供の縁談を進めることも、一般的にある話だけども、子供が自由に恋愛するケースも認められているので、かなり自由な感じがする。さくらからの情報だということが、少し不安だけどね。


 ユキの地元には、母乳が出やすくなる芋があり、ユキも子供のころから、その芋をよく食べていたとの話が出た時には、私もさくらも前のめりで聞いてしまった。ユキの胸を見ながら、これは食べなければと思いさくらを見ると、さくらも強く頷いている。ユキの実家は南洲の北東部にあるようなので、何とか算段をつけていくことを、画策することになった。


 他には、街の茶屋で新作の甘味が出ているとか、街の西側にある洋服屋で売っている下着のデザインが良くてサイズも揃っているので、ユキは愛用しているとか、ガールズトークで盛り上がった。

 蘭ちゃんだけ、真っ赤な顔をしながらモジモジしていた。可愛い。


 次の日の朝は、修学旅行の朝を思い出した。昨夜はユキも誘って、布団を4つ並べて寝たのだが、朝起きた時には、既にユキと蘭ちゃんは布団をちゃんと畳んで、部屋からいなくなっていた。さくらは、気持ちよさそうに熟睡中だ。修学旅行の朝もこんな感じだったな。一部屋に一人ぐらい寝坊する子がいて、早起きの子は朝から温泉に行っていた記憶がある。ユキと蘭ちゃんは、温泉にいっていた訳でなかったけどね。


 「おはようございます、姫様、神子様。こちらに、お召し物のご用意を致しました。蘭ちゃんは、厨房にて朝餉の準備を手伝っております。」

 まだユキと会って二日しかたっていないのに、分かってしまうユキの有能さである。昨日のガールズトークでも、最後まで丁寧な喋り方をしていたが、この喋り方が、ユキのスタンダードのようだ。


 感心していると廊下をパタパタ走ってくる音が聞こえてきた。

 「ユキ様、姫様は起きられましたか?」

 「いえ、まだの様です。」

 「やはり」

走って来たのは蘭ちゃん、ちゃんと着替えていて、身だしなみに隙がない。蘭ちゃんは、さくらの姿を見てため息をついていた。ブツブツ文句をいいながらも、顔を洗うために用意された手ぬぐいを、冷たい水に浸すと軽く絞った。まだ水が滴った状態の手ぬぐいを持って、さくらが寝ている隣までいくと、おもむろに顔にタオルを被せて「姫様、溺れますよ」と声をかけた。なかなかの、スパルタンである。


 何とか起きたさくらと一緒に身繕いを済ませて、二人で食事処に向かうと、既に昨日と朝食と時と同じメンバーが揃っていた。

 「おはようございます、姫様、神子様。」

 聞きなれた声がする方を見ると、朝餉の場にキョウが混じっていた。

 「神子様の護衛ということで、朝からお邪魔させてもらったのだが、朝餉もどうぞということなので、遠慮なく同席させてもらうことにしたよ。蘭ちゃんは、ユキたちと一緒に食べるみたいだよ。」

 なるほどね。私の護衛はキョウがつくのかな?私としてはウェルカムだね。イケメンだし。


 私とさくらは、席に座りながらキョウの話を聞いていると、イケオジ神主の伸明が話しかけてきた。

「櫻花姫様、神子様、おはようございます。本日の神子様の予定を説明させて頂きます。神子様には、本日より術の習得に向けた修行を、お願いいたします。」


 術きたぁー、興味あったんだよね。


 「まずは、簡単な術の修行をして頂き、習得して術で神子様の特性を拝見させて頂きます。最終的には、ご自身の身を守るためにも、神術を会得して頂きたく考えております。」

 なるほど、修行ですか。私も直ぐには使えないとは、思っていました。

 「しかしながら、術は天性のもの。その人の特性によって、覚えられる術が変わっていきます。今までの神子様においても、会得できた術は違っていたと伝わっています。神子様が、どの術が会得できるか分かりませぬが、会得できた術は、神子様が神より与えられた宝物だと思って頂きたく、大切にして頂きたいと思います。」


 これは、修行をする前から失敗した時のために、慰められている感じだね。フラグにならないように、頑張らないと。

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