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九 さくら姫

 櫻花姫が目で合図すると、「私たちも失礼します」と右側に座っていた女性たちが、立ち上がって部屋から出ていく。「拙者たちも失礼する」と左側に座っていた武士も次々と、姫様に礼をして出て行って、部屋には櫻花姫、小さな男の子、嗣基くんと私、あと姫様の護衛だと思われる、優男の武士の五人が残った。


 最後の武士が出て行って襖が閉まった瞬間、姫様は「はぁ~疲れた」と言いながら、後ろに手をついて、足を延ばした状態になり、超リラックス体制に入った。


 「姫様、はしたないですよ。もう少しお淑やかにしていただけないと困ります。神子様も困っておられます。」

 小さな男の子は姫のお目付け役らしい。でも、私は特に困ってはないのだが・・・

 「だって堅苦しいのは苦手なのよ。誰も見ていないのだから、ゆったりさせてよ。」

 「我々が見ていますよ。」

 「身内はいいの。」

 「神子様もいらっしゃるのですよ。」

 「いいのよ。桃ちゃんは今日から身内なんだからぁ、ねぇ」


 しかし、姫様、かなり良いねぇ。畏まった話し方が続くようだったら、どうしようかと思っていたのだが、ここでも先代が、よい仕事をしているのかも。根っからの性格かもだけど。会ってから殆ど喋ってもいないのに、既に桃ちゃん呼びって、かなり好感度アップだね。畏まった喋り方の姫様も、破壊的に可愛かったけどね。


 「神子様、お初にお目にかかります。わたくしは、櫻花姫の小姓を務めております、らんと申します。姫様が大変失礼しています。先代の神子様の口癖が移ったようでして」

 かっかわいい。ショタ萌え属性はないのだが、ショタ好きの気持ちが少し分かった気がする。一生懸命なところが、またかわいい。心の中では、蘭ちゃんと呼ぶことにした。


 私も乗っかっておくことにして、「では私も失礼して」と足を伸した。蘭ちゃんは目を丸くしていたが、ここは姫様に寄せておくのが、得策だと判断した。まあ、私も正座は苦手だから、足を伸ばせるのはありがたい。嗣基くんと優男の武士はあきれた表情をみせていたが、姫様は嬉しそうにニヤリとしている。


 「桃ちゃんとは気が合いそうね。私の事は、さくらって呼んでね。まあ畏まった場では、桃ちゃんじゃなくて神子様って呼ぶので、私の事は姫様か櫻花姫って呼んで貰うしかないけどね。」桃ちゃん呼びだから、遠慮なくさくらと呼ぼうかな。

 「この部屋の裏手に、私の部屋があるの。昼までは、まだまだ時間があるので、お茶でもしながら私の部屋で、お話ししましょう。蘭ちゃん、お茶とお茶うけの用意をお願いね。」


 そう言うと、さくらは「よいしょっと」と、立ち上がった。やはり座っていた時に感じたとおり、さくらは年の割には身長が低い。私も一緒に立ち上がったのだが、目線の先がさくらの頭のあたりだ。私が、身長158だから、さくらの身長は150ぐらいかな。


 「私の背丈、小さいでしょ。私のお母さまも小さいから、完全にお母さまの遺伝ね。もう少し欲しかったけど、もう伸びないかな?」

 さくらは顔が小さく、その身長でも全体が絶妙のバランスで出来ているので、すごく可愛くて似合っていると思ったけど、ここはニコッとだけしておいた。

 蘭ちゃんは「それではご用意してきます」と出て行ったが、他の二人は一緒にさくらの部屋に行くみたい。


 「神子様、挨拶が遅くなったね。僕はキョウだ。そこの嗣基と一緒に、姫様の護衛をやっている。」

 さくらの後を追いかけて、部屋を出ていくタイミングで、優男が人懐っこい笑顔で挨拶をしてきた。身長はユキと同じぐらいだろうか。昔に見た、アニメの新選組 沖田総司のイメージに近い感じで、長髪ポニーテールがすごく似合っている。かなりのイケメンで、良い兄貴って感じ。心の中ではキョウと呼ぶことにしよう。

 「初めまして。桃花です。よろしくお願いします。」


 さくらの部屋は、部屋を出てくるっと回り込むように歩いていくとあり、二間続きになっていた。案内されて入った手前の部屋の中央には、大きな屏風がおいてあり、手前はやはり謁見するためのスペースなっている。屏風の前が一段高くなっていて、中央にさくらが座るであろう場所があり、さっきの部屋のミニバージョンって感じだ。奥の間は寝床のようだ。


 屏風の裏にいくと、直径二メートルぐらいの円形のテーブルがあり、神社の食事処と同じように掘り炬燵のように座ることができる。「桃ちゃん座って」と言われたので一番手前に座ったのだが、嗣基くんとキョウは、屏風の横に控えている。


 「今日は、桃ちゃんと初めての顔合わせなんだから、嗣基もキョウもこっちに来て座って。」と桃花姫が誘導したので、「それでは失礼して」といいながら、二人ともテーブルの方に来て、私の隣に座った。

 タイミングを見図ったように、「姫様、お茶のご用意が出来ました。」と、部屋の入り口のほうから声がかかった。さくらが「どうぞ」と声をかけると、襖が開いて蘭ちゃんと侍女がお茶とケーキがのった盆を持って入って来た。


ショートケーキ!


 私の前に置かれた盆の上には、まごうことなき苺のショートケーキが載っている。一緒に盆に乗っている湯呑には、薄い緑色の飲み物が入っていた。少し口をつけてみると、抹茶ミルクだった。苺ショートと抹茶ミルクって、最高。


 話を聞いてみると、三代前の神子様は食べ物への拘りが強く、食事革命を起こしたようだ。鶏肉と卵は昔から食していたようだが、豚肉は三代前の神子が野生の豚を家畜化をして、一般でも食べれるようになったとのこと。乳製品は残念ながら牛ではなく、山羊の乳を使っているようだが、山羊の乳で、チーズ、バターができている。火の国の他の領地では、牛を飼っており、そこでは牛乳による乳製品や牛肉を食べられるところもあるそうだ。


 しかし、これらは一般的に多くは出回っていないので、城など一部の場所で流通しているのは、かなり貴重品扱いだ。砂糖は、南洲の西にある西州という島の特産で、市場に出回っている。この南洲で小麦の栽培を始めたので、このケーキと抹茶ミルクを作ることが可能になった。町には、パン屋などもあるらしい。


 三代前の神子も有能認定です。


 蘭ちゃんがいろいろと教えてくれる。その話を聞きながら、美味しく頂きました。山羊の乳からできたものだけど、前の世界で食べたケーキと変わらない感じだね。これは、ユキたちもニッコリするわけだ。ちなみに、説明は蘭ちゃんが担当のようで、さくらはニコニコしながらケーキを食べつつ、蘭ちゃんを温かい目で見ていた。


 喋り方で分かるけど、蘭ちゃんは頭良いねぇ。すごくわかりやすく説明してくれる。ますます、萌えポイント会得です。自分が産まれる前の事を説明できるのは、ちゃんと勉強している証拠だしね。


 それにしても歴代の神子は有能だ。三代前は食事、二代目は水回り、先代は下着に化粧かぁ。昔の神子はゴンドラも作っているし。私は何か残さないといけないのだろうか?残せるかなぁ、昔の人が有能だと、なかなかハードルが高いよね。


 「私、さくらの護衛を探さないといけないみたいなんだけど。」

 早速、さくら呼びにチャレンジしたけど、櫻花姫はニコニコしてるので、さくら呼び捨てで大丈夫なようだ。

 「そうなんだよね。桃ちゃん、お願いね」


 さくらは軽い!

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