序章 はじまりの物語
遅刻しそうになって、急いでいたのが良くなかったのかな?
昨日は、夜遅くまで推しの歌枠配信を見ていたので、寝るのが遅くなってしまった。結果、目覚まし代わりのスマホのアラームに負けずに爆睡することになってしまい、母親の「そろそろ起きないと遅刻するよ」って声でビクッと 起き上がった時には、いつもより30分も遅い起床時間になっていた。
更に残念なことに、小学校の頃から筋金入りの低血圧で、毎朝の始動の遅さには定評があるうえ、いつもの起きる時間ですら決して余裕がある時間ではなく、如何に遅くまで寝ていられるかを散々検証した結果がいつもの起床時間となっていたので、30分遅れは致命的なロスになってしまうのである。
しかし、こんなに状況になっても、天性のポジティブシンキングで「何とかなる」と思ってしまうのが、私の利点でもあり欠点でもあったりする。今日も緊急事態になっている割には、意外と頭の中では冷静に計算していて、「朝ごはんを抜いて駅までダッシュすれば一本遅い電車に間に合うので、ホームルームの途中でコッソリ入れば何とかなるんじゃない!」という、若干他力本願な答えを導き出した。
慌てて制服に着替えて、寝癖とアホ毛と戦いながら準備を爆速で済ませたら、ママの「頑張ってねぇっ」という声を後ろにドタバタと家を出たのが5分前の事である。
私の名前は吉住桃花、いたって普通のJKである。この春に無事に高校に合格して女子高生になった。身長は153センチ、体重は50kg、成績は300人中150位を行ったり来たりしているというザ標準。
中学の時から部活で陸上の短距離をしているが、すごく速い訳ではなく陸上部の新人の中では”中の上”ってポジションである。趣味は歌い手の推し活とネットでラノベを読むこと、要は普通のJKだと思っている。
通っている学校は今では珍しい女子高で、近所の駅から電車で4駅いったところにある。駅まで歩いて15分、いつもの1本後の電車に乗れないと、アウトなので急がねばいけない。
陸上部で短距離走者の私としては、駅まで信号機ごとに止まってダッシュの繰り返しではバテるので、ジョギングに近いペースで走り続けた方が良いことが分かっている。なので信号が変わるタイミングをはかりながら、ノンストップで駅に向かっていた。
家から2つ目の信号までは、うまくタイミングを合わせて渡ることができた。今日は良いタイミングで渡れている。大体慌てているときに限って信号運が悪いのだが、今日は電車に間に合いそうだ。一本遅れだけどね。
しかし3つ目の交差点で事件が起きてしまった。信号が青に変わるタイミングまで少し時間があったのでスピードを落として交差点に向かったのだが、よそ見をする余裕ができてしまった。そうできてしまったのだ。
交差点に向かって走っている小さな子猫が見えて、危ないなって思っていると交差点に飛び出したのだ。ちょうど信号が変わるタイミングだったので大丈夫かとも思ったのだが、信号の変わるタイミングで加速してきた乗用車が突っ込んできた。
それが見えた瞬間、咄嗟の条件反射でダッシュをして猫を突き飛ばしたいた。子猫は驚いた表情をして走り出したのが見えたので大丈夫そうだけど、私はそのまま意識がなくなってしまったのだ。
次に気が付いた時は、薄暗い部屋の中央にある、宝飾が施されていた台の上だった。
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