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A whole new world【第01巻】~プロローグ・破壊と創造篇~  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
33/41

33 邂逅

「――陸、陸! お寝坊さんね……、もうみんな起きてるいわよ」

「ん、もう朝か――」

「陸先輩、もうみんな動き出してますよぅ……」

 寝心地が悪いせいで体中がバキバキするが、俺は無理やり身体を起こした――。

「さて、どうするかな………………」

「瀬戸さんと木崎さんたちは早朝から漁に出かけたわよ。優馬は琥珀くんと桜華さんと三人で辺りを散策に出かけたわ、なんでも使える車や燃料を確保するんだとかなんとか……」

「たった三人で? ……大丈夫なのか」

「平気じゃないかしら、桜華さんは強いし、琥珀くんは銃を持ってる、優馬も相当なものよ」

「……そうか、じゃあ俺たちはどうするかな」

「瀬戸さんが地下の各部屋の鍵を全部開けてくれたみたいだから、あたしたちは地下の部屋の整理でもしましょう」

「何か掘り出し物があるかもしれないから探しといてくださいって言ってましたよぅ」

「ちっ! 優馬のやつ、起こしてくれればいいのに………………」

「優馬は起こそうとしていたわよ、でも琥珀くんが寝かせといてあげましょうだって」

「琥珀のやつも余計な気遣いしなくていいのに……ったく」

「余計な気遣いっていうか、たぶん琥珀くんのは計算よ……陸まで外にいっちゃったらここはどうなるのかしら? 女ばかりなのよ?」

「多少なりとも戦力は残しておくってことか……いつでもどこでも計算で動きやがって」

「そのおかげであたしたちは今、ここにいられるのよ………………」

「……それもわかってるよ」

 確かに今日まで生き残れたのは琥珀がいてくれたからだ、そこに疑う余地はない――。

「陸先輩、起きたんなら早く地下に探検に行きましょうよぅ」

「あいよ、お留守番&宝探しでもしますかね」

 念のため装備を確認し、俺たちはライトを持って地下へと降りていった――――――。

「………………おいおい、何部屋あるんだよ!?」

「すごいのは部屋数だけじゃないわよ、瀬戸さんの話だと地下五階まであるらしいわ」

「じゃあ、この別邸の下の崖が全部地下室みたいなものか……部屋の整理って……なめてたぜ、やっぱり優馬たちと出かけた方が楽そうだったな」

「泣き言いわないの」

「わーってるよ! で? どこから探索する?」

「順番に行けばいいんじゃないかしら」

「んじゃ、このフロアから順番に行きますか……」

 こうして俺たちは各部屋を順番に探索していく。しかし、高級品や美術品の類はあるのだが、今のこの荒廃した世界で役に立ちそうな物は特になく、ただ無為に時間が過ぎていった――。


「………………意外とこんなもんなんだな」

「仕方がないわよ、平和な時代に集められた物ですもの……生き残るためのサバイバル用品を安全が確保されている時代にコレクションするような酔狂な人がいるはずないわ」

「ま、しょうがねって……まだ一番下があるから、一応そこも探索してみようぜ」

 そういって俺たちは特に期待もせずに再び探索を始めた。しかし、この一番下の階が琥珀の親父さんの趣味の空間だったらしい……良くわからないものもたくさんあるのだが、通常ではありえないような掘り出しものを見つけることになる――――――。


「……このフロアだけ異質ね」

「最下層は物置に使ってたっぽいな」

「物置の方が期待はできそうよね」

「ガラクタだらけって感じだけどな……」

「だからいいんじゃない、掘り出しものがありそうよ」

「しかし……なんだかよくわからないものが多いな……」

「――!? ちょっと陸、これ、本物かしら……ずいぶんリアルじゃない?」

「ほんとだ、重い………………」

 奇妙なかたちの銃を見つけた。それはずしりと重く、そしてなによりも冷たい印象をうけた。その事実がさらに、これは人を殺めるための兵器なんだということを俺に痛感させる。

「他にも何かあるな……弾……だよな? ……ひょっとしたらこれ水中銃じゃねえか? 前に漫画でこんなようなやつを見たことがある気がする」

「地上でも使えるのかしら」

「………………たぶん」

「じゃ、萌衣ちゃん、重くて悪いんだけど銃と弾、全部バッグに入れておいて」

「かしこまりぃ」

 淡々と作業をこなすように詩織里は武器を確保する。このフロアは特に入念に探索する必要があることを俺も詩織里も認識していた――――――。


「なんだかよくわからないものが本当に多いわね………………」

「結構使えそうな工具類はたくさんあるな」

「ねぇ、陸、これって釘打ち機じゃない?」

「確かにネイルガンっぽいな……」

「すごい武器見つけちゃいましたね!?」

「いや、ネイルガンはこのままじゃ確か武器としては使えないはずだ、魔改造をしないとダメだったと思う。こんなものが武器として自由に使えたら大変なことだぜ、銃刀法も何もあったもんじゃない。後で琥珀に話して改造できるかどうか聞いてみようぜ」

「そうね、なんにしても、このフロアは後でみんなで探索した方が良さそうね」

「これだけ広くて物が散在しているとな……それに懐中電灯だけじゃ暗いし」

「じゃあ後でみんなで宝探ししましょうよぅ!」

「あぁ、灯りも確保したいからな」

「良かったわね、萌衣ちゃん、みんなで照らせばこわくないわね」

「やっぱり明るい方がいいですよぅ」

「陸、じゃあ、ここは後にして上に戻りましょう」

 いったん引き揚げ、俺たちが上階にあがろうとした時だった――――――。


「――!?」

「陸、どうしたの?」

「いや……何か……寒気がして」

「大丈夫? 風邪かしらね、バカは風邪ひかないっていうけど」

「そんなんじゃねえよ……」

 今はとても詩織里とじゃれあっている気分じゃなかった、なんなんだ……この感じは……。

「なにか感じる………………」

「ちょっと、悪い冗談はやめてよ……」

「ごめん、詩織里……何か……何かを感じるんだ……こっちか?」

「ちょっと陸、やめなさいよ!」

 詩織里を無視して、ライトを照らしながら俺は無言でつき進む……そして辿り着いた先には古びた刀があった。辺りを見ると他にも古い武具の類が乱雑に放置されていた。

「これって……? ねぇ、陸、これって本物の日本刀……よね?」

「………………だと思う」

「陸先輩? どうしちゃったんですか……?」

「……ごめん、気のせいだったらしい、なんかいるのかと思ったけどな」

「ちょっともう、やめてよね!」

「陸先輩ったら意地悪ですぅ!」

「あはは、ごめんごめん、後でゆっくり探索しよう、上にいこうぜ」

 緊張の糸が途切れ、一気に弛緩する空気の中、俺たちは上階へと向かった。しかしこの時、俺は確かに感じていた……その刀から発せられる禍々しいエネルギーを――――――。

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