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A whole new world【第01巻】~プロローグ・破壊と創造篇~  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
25/41

25 それぞれの新世界創造

「――なんとなく解りました、もしも仮に宇宙人が存在し、人類を試しているのだとしても、でも俺たちにそんなことは関係ない! 俺たちは俺たちで生き残るだけさ!!」

「陸らしいわね、シンプルでいいと思うわ」

「萌衣も難しいこと、嫌いですぅ」

「……今回はオレも陸の意見に賛成かな」

「わたくしたちは、わたくしたちが正しいと思うことをしていけばよろしいのですわ!!」

「右に同じです、僕もその案に異論はないですね」

 一本気な俺に気を遣ってくれたのか、はたまた本心から同調してくれたのか、それは俺には判らない。でも仲間たちのあたたかさだけは伝わってくる……こんなに嬉しいことはない――。

「――素晴らしいチームワークですね、もし私にもこんな仲間たちがいてくれれば今とは全く違っていたでしょうね………………」

「……木崎さんはずっとおひとりでいらっしゃりましたの?」

「いえ、最初は家族と一緒にいました。妻には、平和な世界の時に先立たれましたが、小さい娘と年老いた両親とでこの家で暮らしていました。自分が外に出て食料を調達しに行っている間に、娘と両親はどこかに行ってしまったようで、家に帰って来た時には誰もいませんでした」

「……帰ってくるかもしれませんわよ」

「期待してはいたんですが、どうやら浄化教会に捕まってしまったようなんです」

「それで浄化教会を調べていたんですね……、でもどうしてそれを?」

「先ほど話した友人がトラックに乗せられている両親を見たといっていましたから……」

「だったら、その友人に聞いてみたらいいんじゃないですか?」

「それが、その友人が浄化教会に入信してからは音信不通でしてね………………」

 重苦しい空気の中、暫く沈黙が続く――――――。


「………………ひょっとしたら、もうご両親はこの世にいないかもしれませんよ」

「ちょっと、優馬ったら!」

「この方には真実を伝えるべきだ………………」

「でも………………」

「なんですか!? 教えて下さい! どんなことでも結構ですから!!」

 そういわれて俺たちは、浄化教会の信者たちとのやり取りを話しはじめた。使えない老人やハンディキャップを背負った人間たちはひょっとしたらカニバリズムの犠牲になっているかも知れないという事、そして、捕まった人間たちは奴隷要因にされている可能性がある事、俺達が知るすべてのことを伝えた――――――。


「……そうですか………………でも、すっきりしました。薄々感づいてはいたんです……浄化教会のやりそうなことです」

 グラスに残ったお茶を飲み乾した木崎さんは、特に顔色も変えずに何か勝手に納得していた。

「――これからこの世界はどうなっていくのかしらね」

「そんなことは誰にもわからんさ」

「この地域に関しては、おそらく浄化教会と愚連隊、それと元軍族と元暴力団員たちとの勢力争いが激化しそうですね」

「そんな状況でしたら、ここにいるよりも都心に出る方が少しはマシな気がしてきますわね」

「姉さん……それはどうでしょう、小さな地方都市でもこの有り様です……たぶん都心の方が悪い奴等が多そうな気もします」

「君たちは都心に出るおつもりだったのですか!?」

「勝手な想像ですが都心の方が俺たちみたいな考え方の仲間が見つかるような気がして……」

「確かに人口が桁違いに多い分、仲間や物資は探しやすいかもしれませんが………………」

「もちろん僕らもリスクは承知の上です」

「……そうですか、守りに入らずに攻めに出る……若いって本当に素晴らしいですね!」

 少し馬鹿にされたような気がしたが、木崎さんはキラキラと瞳を輝かせていた。

「木崎さんはこれからどうするおつもりで?」

「私は特に何も考えてはいませんでしたが……、今のみなさんの話を聞いてひとつ決めました……私はこの地域に残ります」

「……そうですか、でも、どうしてです?」

「私にはまだやり残したことがあります、可能性は低いかもしれませんが両親や娘がまだ生き残っているかもしれません、本当に可能性は低そうですが……せめて娘だけでも……それに、『新世界の創造』に私もここで参加しようと思います」

「――!? それってどういう意味です、まさか浄化教会に入信するとかですか!?」

「まさか、その逆ですよ」

「逆……? といいますと?」

「ただ逃げ回る生き方は終了という意味です……私は戦います!!」

「浄化教会と戦うおつもりですの?」

「はい、そして娘を見つけ出し、私の創る新世界で一緒に暮らせるようにしたいと思います。これが私の『新世界の創造』です………………」

 そういって木崎さんは切れ長の鋭い瞳を窓の外に向けた。木崎さんにつられてか、あぐらをかいたまま優馬も窓の外をみる――――――。

「もう外は随分暗いな……随分と長居してしまったようですね」

「そろそろ御暇しましょうか……」

「っていわれても俺、帰り道全然わかんねぇぞ」

「適当に歩いて帰ってもなんとかなるんじゃないかしら」

「この暗がりの中をかよ? 詩織里にしてはめずらしく短絡的なセリフだな……結構危険だぞ、それに多分、ここからだとかなりの時間を歩くハメになると思うぜ」

「あの、もしよろしければ泊まって行ってくださって結構ですよ、といっても適当にそこらに雑魚寝で申し訳ありませんが………………」

「いえ、さすがにそこまで甘えるわけには………………」

「それに……そろそろ奴らの時間です」

「奴らの時間……?」

「はい、おそらくこの辺り一帯を牛耳っている族? っていうんですか? そんな連中です」

「大きな勢力以外にもやっぱりそういう奴らもいるのね」

「……残念ながら」

 みんな、どうするか結論を出し倦ねている丁度そんな時だった、外から唐突に不快な爆音が耳についた。音から察するに割と距離はあるようだったが、それにしてもあまりに大きな音だ。近くに飛行訓練場か空港でもあるかのような耳を劈く不快な音だった――――――。


「――とうとう始まりましたね、人間狩りが……あいつらは爆音をたてながら自慢のマシンで獲物を見つけてはじわりじわりと追い詰めていくんです……、陰湿な連中です」

「……仕方がないですね、ここはお言葉に甘えて安全な時間帯まで待機させてもらいましょう」

 人間ってやつはどこまで腐ってんだよ……とでもいいたげな表情を琥珀は浮かべていた。

「暗くなったら街の危険度は当然増すだろうからな、明け方ぐらいまでは居させてもらおう、アイツ等だけじゃなくて、どこに何者が潜んでいるかわかったものではないからな…………」

 琥珀と同じく、優馬は辟易とした表情を窺わせる――。

「すいません、木崎さん、もう少しここに居させてください」

「あなた方は命の恩人ですから、なんでも言ってください。安全が確保できるまで好きなだけ居てくださって結構ですよ。私は二階の作業部屋にいますから、どうぞお気遣いなく」

 ――比較的安全な明け方まで、俺たちはここで待機することにした。何時止むとも知れない爆音にさらされながら………………。

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