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A whole new world【第01巻】~プロローグ・破壊と創造篇~  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
24/41

24 ウェイクラムと御神物

「『新世界の創造』現象というのは……私が聞いた話ですと、今までの過去の腐った人間世界を再構築することだと聞いています」

「再構築……つまり作り直すということですか」

「字面通りの解釈をすればそうなりますが、しかし、別の解釈をすれば……腐った人間世界を滅ぼす事とも受け取れます。これはもちろんひとつの解釈であって、皆が皆、同じように解釈しているわけではありません」

「つまり人々が勝手な解釈で『新世界の創造』の意味を定義づけ、そして独善的に活動をしているということでしょうか………………」

「君は子供のように見えますが、本当に頭のいい子だ……まさしくその通りだと思いますよ」

「それって、好き勝手に自分の都合のいいように捉えて好き勝手やってるだけじゃねぇか?」

「多くはそういう連中ばかりでしょうね、若い愚連隊の連中あたりはまさしくそれです」

「人を殺すこと……それが『新世界の創造』に繋がり、正しいことだと言い張って人間狩りを楽しんでいたわけか………………」

 考え事をする時に優馬はいつも目線を上げる。目線を右上に上げたまま、優馬は何かを思い出しているようだった――。


「当然ですが、解釈は人それぞれですから、浄化教会のように選ばれし者だけの理想の社会を実現しようとしている連中もいますがね」

「そんなのってただの選民思想以外の何ものでもないですわよね………………」

「……どいつもこいつも似たり寄ったりかよ」

「基本的にはみんな、我欲に溺れて好き勝手やっているのが現状かもしれませんね。どういうわけか世界中の人間が『新世界の創造』に躍起になっているようです」

「なんだってこんなことに……、みんなで協力し合って生きていけばいいじゃんかよ……」

「世界中の人が陸みたいな人だったらいいかもしれないけど、みんな人それぞれ違うのよ……」

「私も陸くんと同じ考えですが、どうもおかしなことが起きているようで………………中々、そうはならないみたいですね」

「おかしなこと……?」

「はい……『新世界の創造』とか『ウェイクラム』、『神の啓示』、不可解なことが一斉に、同時多発的に起きています。しかもこの『新世界の創造』、『ウェイクラム』、『神の啓示』は何故か一瞬のうちに世界中に伝播しているようで……、とても現代の科学では説明がつかない現象がますます人々を『新世界の創造』現象に加担させている原因ともいえます」

「現状を鑑みると科学なんて本当に無力に感じますね……神様の存在を信じたくもなりますよ」

「琥珀くんが言った通りでホントにみんなが神様の存在を疑わなくなっています……そして『神』は今、この世界だからこそまさに実存するともいっていました」

「それは、どういうことですか?」

「これは私の友人が浄化教会に入信する前に言っていたことなんですが『神の啓示』を本当に聞いた人間たちが僅かながらも実在するみたいなんですよ。『神の啓示』を聞いたという大抵の人間は特になんの知も才もない連中の虚言が殆どです。実力のない人間が、みんなの気を引くために幽霊を見たとか、超能力があるとか嘘をつくアレとまったく一緒です。ですが……どうやら本当に『神の啓示』を聞いたという人間は存在するらしいのです」

「……胡散臭い話ですね」

「私も最初はそう思いました。ですが、浄化教会の教祖は本当に『神の啓示』を聞いていたようなのです。だからこそ『新世界の創造』が始まった瞬間に行動を起こし、迅速に一大勢力を築き上げることが出来た……と………………」

「すでにこの事態を予測していたと……?」

「私の友人はそう言っていました、そして、こうも言っていました……『ウェイクラム』達の革新が始まると………………」

「『ウェイクラム』たちの革新………………」

「はい、どうやら『ウェイクラム』といわれる存在があるそうです」

「それは一体何なんですか?」

「これも詳しくはわからないですが……要は超能力者みたいな存在ではないかと思われます」

「神様に超能力者ですか……いい加減、ゲンナリですね」

「超能力者ってあれですか……スプーン曲げたり、カードを透視したりするやつみたいな?」

「ん~、あれは単なる手品ですから、正確にはちょっと違うようです……進化した人間という表現が近いかもしれませんねぇ」

「いまいちわからねえんだが………………」

「陸にもわかるように説明お願いできないかしら」

「了解しました。もっと解かりやすくいうと、人間を超えた存在って感じらしいですよ」

「……ん~」

「………………陸はもう何も考えなくていいわよ」

「つまりこういう感じでしょうか? 通常の人間の能力を遙かに凌駕した存在だと……」

「そういうことだと思いますが……本当に詳しくは何もわからないのです。それと『御神物』といわれる物も全能なる者からこの世界にもたらされたということも聞いています」

「『御神物』? また聞きなれない言葉が出てきたな………………」

「これはどうやら、全能なる者の力を宿した物らしいのです、解かり易いのは数珠だったり、お札だったりとかでしょうか……或いは人類の科学力を遥かに超越したオーパーツ的な物なのかも知れません」

「なんだかゲームのレアアイテムみてえだな……」

「いろんなことが一度にあり過ぎてどう解釈していいか……さすがに少し混乱しますね」

「私も実をいうと何が真実で何が虚なのか混乱しっぱなしなんです。私はもちろん神の啓示を聞いた事などはありませんし、ウェイクラムでもありません。ましてや御神物だなんて……、見たことも聞いたこともありませんから……唯一、確証があるのは新世界の創造だけでしょう……これだけはみなさんも身を持って体験済みでしょうからねぇ………………」


 ――俺はいまいち話についていけなかったのだが極めて簡単に琥珀にいわせると、今のこの世界は『全能なる者』から『新世界を創造せよ』と命令が下された世界らしい。そして、その命令を一部の人間達が『神の啓示』として受け取り、自分達にとって都合の良い勝手な解釈で『新世界の創造』のために活動しているらしい。そしてまた、こうもいっていた。『全能なる者』はおそらく宇宙人みたいな存在で、『御神物』とは現代科学では生成できないレベルの科学的なモノでしかなく『神の啓示』も決して超常現象の類などではないということだ――――――。


 超常現象も心霊現象も単純に現代科学では解明できていないだけの科学的現象でしかなく、いつか必ず科学的に解明されることになるらしい。古代人は雷が鳴れば空の神様が、台風が来たら風の精霊が怒ったのだと考えたのと同じように、現代人も頭の悪い人間は超常現象や心霊現象を科学とは別のものと切り離して考えてしまうらしい。

 極論をいうと現代の科学で解明できているかどうかの差で、琥珀にいわせると今のこの混乱した世界は現代の科学では解明できていない科学的な事象が連続で起きているだけのようだ。俺たちはひょっとしたら宇宙人たちに人類が生き残る価値がある存在なのかどうかを試されているのかもしれない――――――。


 小難しい説明で、ますます琥珀のいっていることがよくわからなくなってしまったのだが、でも、もし、そんな圧倒的な科学力を誇るレアアイテム――『御神物』とやらがあるのならば、ぜひ拝見したいものだ――――――。

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