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A whole new world【第01巻】~プロローグ・破壊と創造篇~  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
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19 ショッピングモールⅢ

「――酷い事を……抵抗する者は子供だろうと容赦しないという事か」

「随分とわかりやすい悪党ですわね」

「助ける義理も義務もない………………か」

「陸、余計な事は考えるなよ」

「考えてねぇよ、ただ、ひとつだけ解かった事がある……俺はまだ狂っちゃいない、まだ血の通った人間だという事だ!!」

「ここにいる仲間はみんな陸さんと同じ気持ちですよ………………」

 思いは同じ、だが誰も本気で動き出そうなどと考えてはいなかった……俺、以外には――。

「――優馬、彼等を助ける義理はないが、メリットはあるぜ」

「……? メリット?」

「あいつらの物資と武装、全部いただいちまおうぜ、そして情報もだ」

「何をバカな事を………………」

「陸、あなた正気!?」

「至って正気だが」

「陸先輩、無茶ですよ~、殺されちゃいますよぅ」

「今、突っ込めば全滅だが、必ずチャンスはあるはずだ」

「陸、お前いい加減に……」

 優馬の目の前に手をかざし、喋りはじめた優馬を静止して琥珀が話しはじめる――。


「陸さん、再度、確認しますが………………本気ですか?」

「ガチで本気だ、あいつらの物資は貴重だし武装も強力だ、これを頂かない手はない」

「どれだけ危険か解っていますか………………」

「当然だ、それにアイツ等に好き勝手やらせておくのは納得いかないんでね」

「納得いくとか、いかないとかの話じゃない! みんなの命が懸ってるんだ!!」

「それもわかってる!! でも、どのみち今日、一日中あたりを探索しても結局は食料を確保できなかっただろ。ここでアイツ等をやり過ごしても、この後、食料が確保できる保証はない」

「だからといって、危険を冒してまで彼等を助けてやる事はない!」

「勘違いするなよ、優馬、助けてやるのはあくまでついでさ……本命は奴等の物資だ」

「……優馬さん、今の僕らは引くも地獄、行くも地獄です」

「今のあたしたちには明日の食べ物もないものね………………」

「優馬先輩、どうします? 萌衣は弱いですけど……がんばります!」

「………………わかったよ、物資を奪うのはいいとして、具体的にどうする」

「闇雲に突っ込んだら死ぬよな……」

「死ぬより酷いと思うぞ……さて、どうするか………………」

 一斉にみんなが琥珀の言に集中する。こういう時に頼りになるのはやはり琥珀だった――。年齢は最も下だがこういう時にはどうしても頼りにしてしまう。情けない事は百も承知だが、俺たちのチームでベストな策を練れるのは琥珀だけだ――――――。


「――こんなのはどうでしょう、というか他に選択肢が思いつきませんが……まず九人全員を相手にするのは自殺行為です。なので、まずモール内を探索している白装束の三人がトラックから離れるのを待ちます」

「離れてくれるかな………………」

「大丈夫です、必ず離れますよ。見たところ運転手が一人ずつにトラックの守備が一人ずつ、そして物資調達係が一人ずつの三人一組のチームです。ですので、物資調達の為に必ず三人はトラックから離れます」

「じゃあ、離れたと仮定してそれからどうするよ」

「まず一番厄介なのは、手前の銃を持った奴です」

「アイツさえどうにかできれば………………」

「優馬さん、アイツの頭部を一発で射抜く自信はありますか?」

「……距離にもよるな」

「僕らは今、奴らを頭上から見下ろす形になっています。出来る限り近づいて、上から一発で射抜いて下さい。これが出来なければ僕らの負けです。優馬さんの一発にすべてが懸ってます」

「随分と簡単に言ってくれる……、責任重大だな」

「必ずやっていただかなければ困ります」

「わかったよ、それから?」

「はい、優馬さんが頭部を射抜いたら僕らは一斉に飛び出します」

「意外と雑な作戦だな」

「闇雲に飛び出すのではありません、陸さんと姉さんと僕は怯んだ敵を叩きに突っ込みます」

「あたしと萌衣ちゃんは?」

「詩織里さんは、すぐに銃を確保してください、銃が確保出来なければこの作戦は失敗です」

「わかったわ、何が何でも銃は拾ってみせるわ」

「お願いします、銃を敵に拾われても僕らの負けです」

「……萌衣は?」

「萌衣さんは下手に敵と戦わないでください、助けてあげる余裕はありません……詩織里さんについて行動をしてください」

「わかりましたぁ………………」

「殺し合い……、戦争……か」

「そんな上品な事でもないな、これからオレたちがやろうとしているのは…………略奪だ」

「やらなきゃやられる、奪わなきゃ奪われる……そんな世界か………………」

 そんな事はもうとっくにわかりきっている、嫌というほど何度も何度も自分に言い聞かせてきた……そのはずだった………………だが、いざ実戦を目の前にすると、その認識はまだまだ甘かったと思い知らされる――――――。


「――優馬さんの矢が武装信者の頭を貫いたらスタートです」

「………………わかったよ」

「どうかタイミングを誤らないで……なるべく一定の条件を満たしてから射抜いて下さい」

「一応、その条件を聞こうか」

「はい、出来れば敵が死角に入った時、もしくは運転手が運転席に戻って一人でも同時に相手にする数が減った時に………………」

「物資調達係が消えて、尚可、少しでも有利な時にって事か……、やってみるよ」

「タイミングは優馬さんにお任せしますが、優馬さんの行動の後に僕らが一斉に動き出すことをお忘れなく………………」

「……わかった、任せておけ」

「じゃあ、俺たちは見つからないように下に降りて優馬の一発をまってるからな!」

 ただ一点を見つめ、力強く胸元のペンダントを握りしめる優馬を残し、俺たちはゆっくりと下に降りる。考えてみればここまで本気で戦闘の意思を明確にさせたのは初めてかもしれない……本気で人を殺す………………その意思の表れでもあった――――――。

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