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A whole new world【第01巻】~プロローグ・破壊と創造篇~  作者: 平井 裕【サークル百人堂】
13/41

13 室内会議Ⅱ

「――それと食料の問題もどうするかよね」

「あの、それについてもひとつ考えが……」

「さすが琥珀、言ってみ」

「はい、まず、食料については優先的に日保ちのするものを確保していくと良いと思います」

「日保ちのするもねぇ……、例えば?」

「単純に缶詰や瓶詰めの物、それと真空パックの物やインスタント食品といった物ですかね、生鮮食品などは冷蔵庫がないとすぐにダメになってしまいますから」

「問題はどうやって確保するかよね」

「その辺は地元の優馬さんにいろいろ確保できそうなところを案内してもらうしかありません」

「……地元の穴場を探すしかなさそうだな」

「それと、情報についてもやれることは全部やりましょう」

「今のオレたちに何が出来る?」

「僕の考えでは現状は厳しいです……優馬さん、冷蔵庫とか動いていますかね?」

「ちょっと待っててくれ、確認する………………ん~……いや、動いてないな」

「ちょっとテレビつけてもいいですか?」

「もちろん、リモコンはそこにある」

「では、失礼して………………やっぱり電気は来ていないようです」

「停電かしら?」

「それも考えられますが、この建物の電源設備が故障してしまっているのかも知れませんね、来た時にロビーのエレベーターも完全に止まっていましたから」

「電気がないと本当に不便ね」

「電源の確保も優先的にやりたいところですが、大掛かりな工事など出来るわけありませんし、とりあえずはバッテリーと大量の電池を確保したいところです」

「わけわかんねぇ事を……なんでまた大量の電池?」

「はい、電池があれば懐中電灯やラジオなどの類は動くはずです、特にこういう状況の場合はテレビ放送などはもうアテにはできません。電気が来てない以上はネットも使えませんし……だとするとラジオのほうがまだ希望があります」

「テレビはダメなのにどうしてラジオは希望があるのかしら?」

「ラジオの場合は知識さえあればそれほど大掛かりな設備は必要ありませんから、ひょっとしたら誰かが電波を発信してくれるかもしれません、いわゆるアマチュア無線的な感覚です」

「なるほどな、うまくいけばラジオから情報が手に入るかも知れないって事か」

「テレビよりは可能性が高いかと思われます」

「なるほどね、大量の電池とラジオか………………」

「優馬ってラジオ持ってる?」

「電池で動くようなポータブルの物は持ってないな、ステレオは電池じゃ動かないし……」

「他にも揃えたい物はたくさんありますが、優先すべきものから順番に確保していきましょう、それ以外は今あるもので何とかしのぐしかないですね」

「じゃあまずはラジオに電池に食料が今のところの優先順位か?」

「とりあえずはそうなりますね」

「でも、どうやってゲットするんだよ、外に行くのはマジに危険だぜ」

「その点についても考えがあります」

「琥珀ちゃんって本当に賢いわ~、お姉さんも鼻が高いですわ!!」

「ちょっと、姉さんは黙っててくれますか……とりあえず外に出るのはやめましょう。まずは一階から八階までのフロアが比較的安全かと思いますので、この辺りから探していきましょう」

「なるほどな、すでに荒らされた後って事は、おそらく先に住んでいた住民もいないだろうし狂った連中もいなさそうだな」

「さすが優馬さん、その通りです」

「金目のものや食料なら盗まれているかも知れないけど、ラジオならさすがに連中も持ってはいかないわよね」

「混乱のさなか、ラジオ目当てに強盗に押し入る人はさすがにいないと思いますよ」

「なんだか希望が出てきましたね、陸先輩」

「ああ!! ……とても中学生とは思えない、たいしたやつだよ」

「それと、優馬さん、ひとつお願いが……サバイバルナイフ的なものってありますか?」

「サバイバルナイフか……、キャンプ用に買ったやつがあるが……なにか使うのか?」

「いえ、姉のために薙刀を作ってあげたくて……薙刀を持った桜華姉さんに肉弾戦でまともに渡り合える相手はまずいません。特に手加減をしなくてもいい、相手を殺しても構わないこの状況なら尚更です」

「……琥珀ちゃん、わたくしは人を殺したくはありませんわ」

「姉さん、人を殺すことが目的ではありません、みんなを守ることが目的です。そのためには……どうか迷いを捨ててください」

「………………琥珀ちゃんがそう言うなら、仕方がないですわね」

「琥珀君、ナイフはあるがどうやって薙刀なんて作るんだい?」

「そこにあるメタルラックを解体してもよろしいでしょうか?」

「ああ、これかい? 別に構わないよ」

「すみません、では、失礼します……よいしょっと………………このメタルパイプの棒に穴が開いてますよね、この棒の中にサバイバルナイフの握り手を差し込んで固定すれば完成です」

「なるほどね、琥珀君は論理的な思考だけじゃなくて発想も優れているんだね」

「とんでもないです、恐縮です。あと、調整や加工も必要なので工具もあればお願いします」

「了解、父親が日曜大工好きだったからな、工具もいろいろあるから好きなの使ってくれ」


 ――父親の部屋で、しばらくガサガサと物色した後に、優馬は工具箱を持ってきた。

「優馬さん、ありがとうございます! メタルラックのバーが四本ありますから、残り三本もついでに加工して槍を作りましょう」

「……サバイバルナイフはもうないぞ」

「代わりにドライバーや小刀やノミ、彫刻刀が何本かありますから、これで槍を作ります」

「木刀よりかは遥かにマシになったな、金属製だから強度もありそうだ」

「それなりに強いと思いますよ、陸さん」

「これで萌衣も戦えますね!」

「いや、萌衣さんはちょっと………………」

「どうしてですか! 萌衣も戦えます!!」

「基本的に武器の類は男性に持ってもらいます。武器は敵に奪われたらそのまま相手の戦力になってしまいます。武器を持つということはリスクでもあるんです。女性には奪われる心配のない防具の類がお勧めです。これなら仮に奪われても、たいした脅威にはなりませんから」

「桜華さんも女の子ですぅ~!!」

「桜華姉さんは長年の訓練を積んでいますから、素人ではありませんので」

「萌衣、戦いは男の仕事さ! 守ってやるから心配すんな」

「きゃ~陸先輩ラブです!」

「陸、あたしも守ってね」

「……詩織里は俺より強そうだけどな」

「なんですって!!」

「またお決まりの夫婦喧嘩か、まったくお前らは……」

「夫婦じゃないです! 陸先輩の嫁は萌衣ですから!!」

「どっちでもいいさ、もう好きにしてくれ」

 そういった優馬はすこし笑いながら呆れ顔をした、僅かでも希望が見えてきた所為か、優馬からこぼれた笑顔が俺たちを救ってくれた気がした――――――。

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