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第二部 一話 繰り返される悪意

前回のあらすじ

天道宗によるヨミ騒動や大規模な呪術結界の存在をOH!カルトで告発した水無月。

出演したラジオ番組「怪談ナイト」生放送中に天道宗から取材の申し込みが届く。

恐怖を抱きつつもまたとない機会に取材を受けることにする。

水無月、神宮司、伊賀野、ジロー、阿部の5人が民明書房の会議室で天道宗を待つ。

内線電話で私宛の来客が到着した旨を聞いてわずかに逡巡する。

受付のスタッフに、そのまま来客を会議室に連れてきてもらうよう頼んだ。

本来なら私が取材相手をロビーまで迎えにいくのが礼儀だが、たとえその数分間だとしても私1人で天道宗と接触するのは怖かった。

部屋の中を見渡す。

緊張の面持ちの面々と、いつもと変わらない気楽な顔をした神宮寺さんが私を見ている。

部屋の中には注連縄(しめなわ)が張られ、和美さんの近くには小さな護摩木ごまぎが組まれている。

会議室内はいつでもお祓いを始められるよう片付けられ、人数分の椅子と長机が置かれているのみだ。

部屋の四隅には神宮寺さんによる独自の結界がかれている。

呪術を仕掛けられた時の対処だという。

「…………」

準備はできている。

霊的な攻撃に対する備えは万端だ。

残る懸念といえば相手が凶器を持っていないかなど暴力的なものだけだ。

それでも不安が拭えない。

得体の知れない連中といえば老師やハオさんも同じだが、あちらは少なくとも表面上は友好的だった。

これから会うのは私が誌面を使って喧嘩を売っている相手だ。

いきなり呪詛を仕掛けられてもおかしくはない。

服の上から御守りを触る。

その感触に勇気を得て私は気合を入れるために声を出した。

「来ますよ。最初から警戒MAXでお願いします」

その声にみんながそれぞれ返事をして居住まいを正す。

戦闘モードOK。

どこからでもかかってこい。


コンコンとノックする音が聞こえてドアが開く。

受付スタッフの「どうぞ」という声と共に最初に現れたのは車椅子だった。

そこに乗っているのは小さな人影。

黒い着物を着た老人だ。

高齢の先生と言っていたが、予想していた以上にヨボヨボで、黒い着物も手伝って人形のように見える。

車椅子を押して入ってきたのは40代と思しき男性。

その男を見た瞬間にわかった。

添付してあった写真に写っていた男。

顔こそ隠されていたが、髪型や雰囲気で確信する。

メールを送ってきた男だ。

グッと息を呑む声が後ろから聞こえた。

和美さんだ。

振り返るとものすごい目で男を睨みつけている。

おそらくあの男がタツヤだと確信したのだろう。

そのまま走り出しそうな和美さんにアイコンタクトを送り「落ち着いて」と伝える。

丸山理恵さんの霊を保護していることを奴らに知られてはならない。

和美さんは私の動きに気づいて睨みつける視線を緩めた。


「いやどうも。ありがとうございました」

そう声がして入口に目を戻すと大柄な男性が会議室に入ってきた。

案内した受付のスタッフにわざわざ丁寧に礼を述べることでまともさをアピールしているつもりだろうか。

白髪で歳の頃は60代といったところ。

神宮寺さんより少し若いが見た目は正反対だ。

大柄でぶ厚い体。

柔道でもやってそうな体格の、老人とは思えない存在感。

40代の男なんか簡単にぶちのめしそうな白髪の大柄な男性は、私達に目を向けてペコっと頭を下げた。

「どうもはじめまして。本日はよろしくお願いします」

そう言ってニカッと笑った。


天道宗の3人をあらかじめ想定していた席に誘導する。

車椅子の老人のために椅子をひとつ片付けて、老人を中心に左右に男達が座る。

彼らに向かい合うように座るのは中心に私、右隣に神宮寺さん、左隣に和美さん。

ジローさんと阿部さんは撮影スタッフということで離れた場所から私達や天道宗にカメラを向けている。

撮影しても良いか確認したところ、構わないとのことだった。


それぞれの席の前には長机が置かれており、私の目の前には手帳とICレコーダーがあり、すでに録音を始めている。

彼らと私達の位置取りを決めたところで、私は意を決して立ち上がり、彼らの前に移動して長机を挟んで向かい合うように立つ。

そして大柄な男に向かって名刺を差し出した。

「本日はご足労いただきありがとうございます。私はOH!カルトの編集をやっております篠宮と申します」

大柄な男はすかさず立ち上がり、両手で私の名刺を受け取った。

併せて40代の男も立ち上がる。

老人は座ったまま私のことを見ている。

「これはどうも。私は天道宗の本部長をやっております小木と申します」

そう言って大柄な男が懐から名刺を取り出した。

男が差し出した名刺には『天道宗 本部長 小木信一』という肩書きと名前、そして電話番号のみが記載してあった。

住所の記載はない。

「こっちの老いぼれは先代の本部長で私の親父です。隣の新藤くんはウチのネット担当で先代のサポートもやってもらってます」

小木氏の紹介が聞こえていないのか老人は反応せず、新藤と呼ばれた男は軽く頭を下げた。

その男にも名刺を渡して挨拶をする。

男が差し出した名刺には『天道宗 新藤辰也』と書かれていた。

タツヤ。

やはりこの男が丸山理恵さんを死に追いやったタツヤだ。

私は内心の動揺を悟られぬよう注意しつつタツヤとも挨拶を交わす。

タツヤは人の良さそうな顔で挨拶を返してくる。

その笑顔が気持ち悪くて、私は最低限のやりとりのみで挨拶を終わらせ、彼らに着席を促して自分の席に戻った。


席について改めて彼らに向かい合う。

真ん中に小木老人。

先代とはいえ現役の本部長を差し置いて真ん中に座るということが、彼らの力関係を表している気がする。

小木氏が口調とは裏腹に老人に敬意を払っているのが見てとれる。

小木勘助。

麦かぼちゃさんの家の仏壇に隠されていた天道宗からの手紙。

そこに署名をしたのはこの老人で間違いないだろう。

小木老人は感情の読み取れない表情で私達のことを見ている。

弱々しい小さな姿がやけに不気味だ。


えー、と声を出して発言する意思を伝える。

小木氏やタツヤが話し出す前に私が先に話したかった。

取材を言い出したのは彼らだが、この場ではこちらが主導権を取っておきたい。

「まずはですね。改めて本日はご足労いただきまして、ありがとうございます」

そう言って頭を下げると小木氏とタツヤも頭を下げる。

「ご存知だと思いますが私達はあなた達を糾弾する記事を書いています。その上で天道宗さんから取材の申し入れを頂いたと。これは天道宗さんの方で私達に反論…のようなものを準備して来られたということでよろしいでしょうか?」

最初から本題に入った私の言葉に小木氏が大きく頷いた。

「はい。おっしゃる通りです。反論というわけではないですが、雑誌の記事に対する我々からのリアクションですね。恥ずかしながら我々はホームページも持っておりませんし、SNSでリアクションというのも違うと思いまして、きちんと紙面で取り上げていただける形で反応したいと、そう思ってご連絡差し上げた次第です」

小木氏は大きくはっきりとそう言った。

見た目の印象通り体育会系の喋り方だ。

私の言葉には反応しなかった小木老人がウンウンと頷いている。

もしかしなくても耳が悪いのだろう。

私の発言は聞こえていなかったのかもしれない。

私も意識して大きな声を出す。

「ありがとうございます。なにぶん記事の内容が内容ですので、本日はお叱りを受けるのを覚悟しております」

そう言うと小木氏とタツヤは楽しそうな顔をし、小木老人は少しだけ顎を上げた。

今度は小木老人にもちゃんと聞こえたらしい。

ところで、と私は話を続ける。

「新藤さんはネット担当とおっしゃってましたが、ホームページは現在製作中ということなんですか?」

その言葉に小木氏とタツヤが一瞬目を合わせ、小木氏が軽く頷くと、タツヤが私に顔を戻した。

「ホームページを作る予定は今のところないんです。元々僕らは手広く信徒を獲得する感じの宗派ではないので」

ホームページどころかSNSのアカウントすら存在しないのは確認済みだ。

「ではネット担当というのは?」

「主にTwitterやブログなんかをチェックして、お手伝い出来そうなことがあれば声かけたり、逆に協力してくれそうな人がいたら声かけたり、まあそういう地味なことをやってます笑」

爽やかさのお手本のような表情で語るタツヤに、和美さんがチッと小さく舌打ちをしたのがわかった。

私も同じ気持ちだ。

「丸山理恵さんのような被害者を探しているってことですか?」

いきなりぶっ込んだ私にタツヤの目が笑みを消す。

口元はどうにか笑顔の形を保っているが、一瞬ヒクついたのは見逃さなかった。

その様子を見てピンときた。

こいつ、ハオさんよりはチョロいわ。

これでも雑誌のライターだ。

人の顔色を見るのは得意なつもりだ。

本心を隠している取材対象などいくらでもいる。

この男は見た目こそ取り繕っているものの、中身はそれほど大したものではなさそうだ。

私のぶっ込みを聞いて神宮寺さんがホウと感心した声を出した。

「リエが被害者かどうかはともかく、まあそういう感じですね」

タツヤの声が少し低くなる。

「被害者ではない、とは?」

「僕とリエとは普通の男女の関係でした。なぜリエがあんな集団自殺を引き起こしたのかは僕にもわかりません」

白々しいを通り越してあからさまな嘘で私の質問をやり過ごすつもりのようだ。


「そりゃあ無理があるだろうよ」

神宮寺さんがタツヤの嘘にツッコミを入れる。

「おたくらが作ってる悪霊製造機の中に入ってた霊。それを取り憑かせるための術まで仕込んでおいて、無関係でございますってのは通用しねえわな」

そう言った神宮寺さんは、やや不機嫌そうに眉間に皺を寄っている。

若者の態度を叱る老人のそれだ。

「あくまで僕とリエはただの恋人同士です。集団自殺に関してリエがどんな動機を持っていたのか、僕は知りません」

先ほどの爽やかスマイルを取り戻したタツヤがハッキリと言った。

「アンタじゃねえとしてもアンタ達の団体の誰かがやったんだろうよ。それもしらばっくれんのかい?」

「それは僕にはなんとも。いずれにせよリエがあんなことになったのは僕としては残念です」

チッと大きな舌打ちが聞こえた。

苛立ちを隠そうともしない和美さんをタツヤはチラッと見るだけで無視した。

丸山理恵さんの霊を保護していることをぶっちゃけやしないかとヒヤヒヤしたが、流石に和美さんもこらえているようで、黙って神宮寺さんとタツヤのやりとりを見ている。

その後も神宮寺さんの指摘をタツヤがのらりくらりと受け流すやりとりが続いたので、私はその質問を締めにかかった。

「なるほど。天道宗さんとしては新藤さんと丸山理恵さんとの個人的な関係は認めつつも、ヨミ事件への関与を認めるつもりはないということですね?」

私の確認にタツヤと小木氏が頷いた。


「では次に、なぜあのような箱を作っているのか、そのことをお伺いしても良いですか?」

私の質問に今度は小木氏が答えた。

「それが我々の教えだからです」

「教え、とは?」

「詳しくご説明するのは控えますが、まあ我々の宗教活動ということだけご理解いただければと思います」

何がご理解だ。

あまりにも他人事な物言いにカチンときた。

「亡くなった方達の霊を虐待するとんでもない行為だと私達は思っています。あの箱の中で混ざり合ってしまった霊の訴えを直接聞いた人によれば、箱の中にいる霊達の怒りや苦しみが際限なくその霊をさいなんでいたそうです。いかな宗教といえどそんな教えはないはずです」

若干早口になると同時に声も大きくなる。

そんな私の様子に小木老人が初めて表情を変えた。

顔をクシャリと歪めている。

不愉快を表しているようにも見えるし、笑っているようにも見える。


「それも含めて我々の教えです。この世での生を終えてから転生するまでの期間に比べれば100年程度など誤差のようなものでしょう。それに招霊箱の中は、現世にとどまって悪霊に取り込まれてしまった霊の状態となんら変わるものでもありません。物事には表面と本質があります。我々の教えの本質の部分も、他の宗教宗派と同じく人々の救済ですよ。その点はどうぞご安心いただきたいと思います」

噛んで含めるような口調で答える小木氏の様子も腹立たしい。

箱の中が悪霊に取り込まれた状態と一緒だということは、お前達こそ悪霊そのものではないか。

小木氏のあんまりな物言いに、私はそれを鼻で笑ってしまった。

「いや少しも安心できる要素ないですよ。あなた方のやってることはある意味で殺人以上に悪いことです。法的に裁けないというだけで悪は悪。だからこそ多くの読者さんが怒りの声を上げているんです。そのことについてはどうお考えですか?」

取材相手に対して「あなたは悪だ」などと言うのは本来あり得ない発言だが、そもそも紙面でさんざん邪教だ悪だとののしっているのだから今更だ。

「いかにも表面的には悪に見えると思います。皆さんにそう思われるのは当然だということもわかってます。それでもなすべきこととして使命を与えられた以上、私どもとしてもやめるつもりはありません」

「その使命というのは?」

私の問いに小木氏の目が輝いた。

「1人でも多くの人が幸せになるように、人間本来の自然な姿に立ち返るように、そのためにあらゆる手を尽くす。それが我々天道宗の教えの根幹です。教え、さとし、共感し、時には厳しく叱咤しったして、たとえ胸ぐらを掴んででも正しき道へと導く。それが初代である天道先生が我々に託した使命です。たとえ世間様から見て悪く見えることであっても、遥か神仏の目から見たら微々たる違いでしかない。我々人間はこの人生100年ほどの間に少しでも神仏に近づかなくてはなりません。そのためのお手伝いをすることが、我々天道宗の使命です」

「…………」

一気に言い切った小木氏の様子に一瞬気圧されてしまい言葉に詰まる。

なに言ってんだコイツと鼻で笑うのは簡単だが相手は大真面目だ。

どんな教義か知らないが、本気で彼らの宗教を押し付ける気なのだ。

要するに、原理主義者。

他の宗教や価値観を認めない狂信者だ。

言ってやったとばかりに目を輝かせている小木氏。

ウンウンと満足そうに頷くタツヤ。

ダメだ。

彼らの様子に私は確信した。

こいつらに私達の言葉は届かない。

はなから聞く耳など持ってはいないのだ。

予想はしていた。

あれだけのことをやってきた奴らだ。

とうの昔に腹はくくっているに違いない。


「それは原理主義とかそういう類の、テロリストであるというカミングアウトですか?」

だが取材としては大成功だ。

「あなた方の宗教観を押し付けるために人を殺しても構わないと?」

これで彼らが邪教であると誰もが納得するだろう。

「勘違いしないで頂きたいのですが、我々は人を殺してはおりません。我々は…」

小木氏の言葉を遮って神宮寺さんがハッと大きく笑った。

「殺したのはヨミだってか?アンタらは悪霊をせっせと作ってただけ?馬鹿言っちゃいけねえや。そんな理屈で誰が納得するかよ」

言いながらバンと机を叩いて小木氏を指差す神宮寺さん。

初めて見る神宮寺さんの怒りに私の心は逆に冷静になってゆく。

言質は取った。

無理矢理にでも彼らの宗教を押し付けると。

原理主義者であるとの私の指摘に否定もしなかった。

なおも神宮寺さんが厳しい言葉で小木氏を非難するのを聞きながら私は現状を整理する。

彼らは丸山理恵さんとの関わりを認めた。

あの箱を作っていることも認めた。

ヨミに関しては認めていない。

だが彼らの使命のためには暴力的な手段も厭わないと明言した。

やってますアピールとやってないアピールの違いはなんなのか。

人殺しはしていないと主張している、ということは彼らが恐れているのは警察だろう。

集団自殺への関与を疑われて警察の手が入ることを嫌っている。

犯罪にならない、法律に抵触しない手段でもってテロをやっていると。


「あなた方の宗教活動が結果として集団自殺を引き起こしたとしたら、その責任はどう取るおつもりなのですか?」

認めようが認めまいがお前達がヨミを作り出したのは間違いない。

私の問いかけに神宮寺さんとのやりとりを中断して小木氏がこちらに顔を向ける。

「自殺された方々が多くいらっしゃるのは残念に思いますが、それは何も我々が唆したものではありません。丸山理恵さんについても同様です。我々の活動としては紹霊箱を大切に保管して来るべき時に備える。それと同時に、このままでは救われない魂が神仏に立ち返るためのお手伝いをする。それが全てです」

小木氏の主張が堂々巡りを始める。

これ以上は続けても進展はなさそうだ。


「あの箱…招霊箱…というのですか?あの箱を保管すると仰っていますが、その箱を送りつけて脅迫まがいのことをやっていますよね?どうも矛盾しているように思えるのですが」

私のツッコミに小木氏は大きく頷いた。

「OH!カルトさんの記事を読みましたが、妙な箱が送られてきて怪しげな連中の言うことに従えと脅された方々がいると」

小木氏が頷きながら記事の要約を口にする。

そしてハッキリと言い切った。

「そういった出来事に我々が関与したことはありません」

「…………」

やっぱりシラを切るか。

そうくるだろうとは思っていたが、いざその場面になると腹が立って仕方ない。

「あなた方の他にあの箱を作って運用している団体があるということでしょうか?」

「そうは思えません。招霊箱の製作方法は我々にとって秘伝中の秘伝です。過去に袂を分かった仲間達がいたこともありません。それらの脅迫事件に利用された箱は我々の管理している招霊箱とは別物ということでしょう」

いやいや、と思わず笑ってしまった。

「深夜ラジオの番組で犠牲者を出した箱と、さまざまな立場の方に送られて脅迫に使われた箱。そのどちらにも私達は直接関わってお祓いもしています。どう考えても別物なんてあり得ないですよ」

「それはあなたがそうお考えだということでしょう。そう考えることについて否定はしませんが、我々としてはなんの証拠もなく一方的に決めつけられても困ってしまいます」

眉をハの字にして困ったような顔でそういう小木氏の様子は実に白々しい。

証明する方法がないとタカを括っているのだろう。

やってますアピールはするくせに追求すると途端に逃げる。

あえてこちらをモヤモヤさせて苛立たせるのが狙いか。


「建設会社を脅迫してあの箱を沈物しずめものに使った拝み屋というのはあなた方ですね?」

「それはどちらの建設会社でしょうか。我々も依頼を受けて安鎮法を行うことはありますが、招霊箱を埋めるようなことはありませんし、そのために誰かを強迫するなんてとんでもない」

そっちがその気ならこっちだって強気にいかせてもらう。

「あの箱を使って都心部を覆う五芒星の結界を張っていますよね?人工的な悪霊による結界でこの国に呪いをかけているのではないですか?」

「とてもオカルト的で面白いお考えだと思います。私個人としてはそういうお話は大好きですが、やはり空想の延長でお話をされても我々としてはお答えのしようがありません」

お互いに一方通行のまま言いたいことを言い合う。

「誌面にも掲載しましたが、非常に正確な五芒星でその中心は皇居を狙い撃ち。意図しない限りこうはならないですよ。あなた達は日本国を呪っている、そう私は確信しています。知りたいのは何故そんなことをするのか、ですよ」


「仮に」と小木氏の返答が変わった。

自信満々に輝いていた瞳が私を観察する視線に変わっている。

記者の直感で、血が昇っていた頭が急速に冷えていく。

「仮にそれら一連の悪事を行っていたのが我々だったとして、何故そんなことをするのだと思いますか?」

私の質問をそのまま返してくる。

彼らの狙いを当ててみろということか。

あくまで仮定の話として、もう少し踏み込んだ話をするつもりなのかもしれない。

「わからないから質問してるんですが……そうですね……」

考えるフリをして覚悟を決める。

これまでさんざん推測してきた天道宗の目的をぶつけるチャンスだ。

「本来神聖であるはずの結界を、悪霊を使って構築することで、この国に邪気を溜め込んで国民の幸福度を下げる。それから派生してさらに別の陣を構築するぞと脅しをかける。現に平将門たいらのまさかど所縁ゆかりのある神社で構成された北斗七星の結界を裏返す形で悪霊の結界を張っていますよね。私達が把握しているのはここまでですが、他にも色々と悪意のある陣を張っているんじゃないですか?」

特集で書いたことを一息に喋る。

小木氏もタツヤも特集の内容は把握しているのだろう、特にこれといった反応はない。

が、1人だけ表情が変わった。

小木老人だ。

先代の天道宗本部長であり、麦かぼちゃさんのお爺さんに直接指示を出した人物。

小木老人は今度こそ楽しそうに笑った。

歯のない口をニイと開けて笑っている。

普段なら可愛らしく見えるだろうその笑みだが、会話の流れからしてこちらを馬鹿にしているようにも感じる。

私の推測を聞いて楽しんでいるのか、あるいは全くの見当はずれを嘲笑あざわらっているのか。

どっちだ?

私の視線に気づいた小木氏が隣に座る小木老人を見てギョッとし、その耳に口を寄せる。

「先代!あくまで『仮』の話ですからね!」

耳の遠い老人にしっかりと聞こえるように大声で伝える。

ヒソヒソ話でもするのかと思ったが全て丸聞こえだ。

小木老人は尚も楽しそうにウンウンと頷く。

そして私に顔を向けてフガフガと話し始めた。

「とてもいいですね。お嬢さん。あなたの想像の通りなら、どうやらあなたの頭の中では我々の悪事はすっかりバレているようだ」

「先代!」と静止する小木氏を無視して小木老人が喋り続けるのをタツヤが楽しそうに見ている。

「そのまま事実を積み重ねてごらんなさい。我々が何をなさんとしているのか、お嬢さんならわかるでしょう」

「親父!いいからちょっと黙って!」

困った様子で怒鳴りつける小木氏に顔を向けて、小木老人はフェッフェッフェと笑った。

歯のない老人特有の気の抜けたような笑い声に毒気を抜かれてしまいそうになるのを意識して堪える。

先ほどの笑みはやはり嘲笑だったのだろう。

早く気づけという小木老人の言葉からはそのような意図が感じられる。

それきり黙ってしまった小木老人に「まったく」とため息をついて、小木氏がこちらへ向き直る。

「いやどうも、大変失礼いたしました。この通り半分ボケてまして、お恥ずかしい限りです」

そう言って頭を下げる。

再び先ほどの快活な態度に戻った小木氏が何かを喋ろうとした時、隣に座っているタツヤが「小木さん」と小さく声をかけた。

タツヤとアイコンタクトを交わした小木氏がチラと腕時計を見た。

「ああすいません。篠宮さん、ちょっとあそこにあるテレビをつけてもらえませんか?」

そう言って会議室の壁に備え付けられたテレビを指し示す。

テレビから小木氏に顔を戻すと小木氏が続ける。

「この時間になるとニュースが気になってしまって、どこのチャンネルでもいいんです。ちょっとつけてくれますか」

何をこだわっているのか疑問だったが、断る理由もないのでテレビの近くでカメラを回している阿部さんと目を合わせる。

私のアイコンタクトに気づいた阿部さんが頷いてテレビの電源を入れる。

音声のボリュームが小さくて聞き取れないが、どうやら民放の臨時ニュースが流れているようだ。

阿部さんがリモコンでテレビのボリュームを上げる。

いつかのように男性アナウンサーの緊迫した声が流れてきた。


『えー…繰り返しお伝えします。たった今、都内と大阪の4カ所で、集団での飛び降り自殺が行われている模様です。新宿、渋谷、池袋、道頓堀。いずれも男女複数のグループが建物の屋上に侵入し、次々に飛び降りを敢行しているということです。映像や詳しい情報が入り次第お伝えします』


画面が切り替わった。

阿部さんがチャンネルを回したのだ。

そこでも女性アナウンサーが震える声で原稿を読んでいる。


『現時点で数名の男女が飛び降りたということです。ビルの屋上にはまだ複数の人影が確認されており、渋谷では駆けつけた警官がビル内に入ったということです』


またチャンネルが回る。

生放送らしいワイドショーで男性コメンテーターが険しい顔で喋っている。


『これってヨミの事件を模倣しているわけですよね。大変悪質な行為だと思いますよ』

その言葉に番組MCが質問をする。

『模倣ならまだしも、ヨミが1人じゃなかったってことはないですか?』

MCの質問にコメンテーターが激昂する。

『だとしたらとんでもないことですよ!組織的な……テロってことですよね?』


またチャンネルが回る。

NHKと思しき画面では「複数箇所で集団が飛び降り」というテロップが画面左側に大きく固定されており、男性アナウンサーが同じような原稿を読んでいる。


『……情報によると黒いワンピースの女を見たという証言もあり……今年○月に起きた連続自殺事件との関連は不明とのことです』


そこで阿部さんがチャンネルを回すのをやめた。

男性アナウンサーの淡々とした声が会議室に響く中、私達はしばらく画面に釘付けになっていた。


「…………」

何だこれは。

あの時の録画?

いや違う。

いま起きてるんだ。

全身に鳥肌が立つ。

目の前に映し出された大量の死の情報に恐れと不快感が込み上げてくる。

フリーズしている頭を懸命に働かせる。

新宿、渋谷、池袋、大阪で集団が飛び降り自殺。

しかも同時刻に。

現場には黒いワンピースの女が目撃されている。

ヨミ。

数ヶ月前に自殺テロを主導して射殺された悪霊憑きの女。

それが今また自殺テロを起こしている。

4か所で。

同時多発の自殺テロ。

この時点で少なくとも4人のヨミが存在している?

丸山理恵さんのような被害者が4人?

それとも今度は本物の霊なの?

様々な考えが頭の中を渦巻いている。

まともに思考が着地することはない。

ふいに私達の前に座る3人の男の存在を思い出してまた全身に鳥肌が立った。

こいつらがやった?

何のために?

私達に見せるため?

そのために何人死んだの?

何人殺したの?

息ができない。

恐ろしい。

テレビ画面から男達に視線を戻すのが怖い。

いったい彼らは今どんな顔をしている?

テレビの中の凶報をどんな顔で見ているの?

頭の中で様々な感情が荒れ狂っている。

許せない。

怖い。

憎い。

逃げたい。

知りたい。


パニックだ。

私はまた軽いパニックに陥っていた。

何をどうすれば良いのかわからない。

全身が震えている。

自分の思考が自分でわからない。

私はどうすれば良い?


その時、バンッと机を叩く音がした。

そして、


「やりやがったなてめえら!」


神宮寺さんの怒鳴り声が聞こえた。

その声で金縛りのように動かなかった身体が動いた。

恐れを振り払って男達を睨みつける。

小木氏とタツヤは無表情に私を見ている。

そして小木老人は、

「…………」

笑っている。

先ほどと同じように楽しそうな笑顔で。

歯のない口を開けて顔全体で笑顔を作っている。

その顔を見た途端、全身に3度目の鳥肌が立った。

楽しんでいる。

このニュースを見て、最悪の状況を知って、それでも笑っている。


「いやこれはまた、大変なことが起きてますなあ」

さも何でもないという口調で小木氏が言った。

明日は雨ですね、とでもいうような何気ない口調で、目の前の凶報の感想を口にする。

その目は私に固定されている。

私の狼狽を観察する目だ。

「……なぜこんなことをするのですか?」

声が震えているのが自分でもわかる。

「いったいなんのために殺人を繰り返すんです?あなた達の教えとは集団で自殺しろというものなんですか?」

震えている原因は恐れであり、怒りだ。

私の言葉に小木氏が口の端を軽く引く。

その余裕ぶった顔に我慢できなくなった。

「なに笑ってんですか。人が死んでるのが楽しいですか?あなた達の教義がどんなクソか知りませんけど、これでよくも人の幸せとか言いましたね」

駆け引きも何もない罵倒が口から出てくる。

今が取材中だとわかっていても、そして小木氏の表情に煽られたのだとわかっていても止められない。

「どんな手段を用いたのかはともかくとして、これは間違いなくあなた達が仕組んだ。今のこのタイミングを知っていたのだから当然そうなります。集団自殺で国民を脅して何をするつもりですか?そんなクソみたいな教えで誰を導くつもりなんですか?」

そのまま怒りに任せて罵り続けようと息継ぎをした私に神宮寺さんが「おい」と小さく声をかけ腕を軽く叩いてくる。

先ほどとは逆に私が激昂し、神宮寺さんが冷静になっている。

そのことに気づいて頭にのぼった血が少し落ち着いた。

「…………」

吐き出そうとした罵倒の言葉を飲み込む。

代わりに天道宗の3人を睨みつける。

そんな私の様子を見て小木氏が口を開いた。

「お怒りは理解しますが我々がやったという根拠がありません。私はニュースが見たくなってテレビをつけてくれとお願いをした。それだけです」

ここまであからさまに関与を匂わせておいて、それでも堂々とシラを切る。

その意図はどこにある?

「小木さんの言っていることはわかります。あなた達がやったという証拠はどこにもない。ですが一連の行動を見て誰もがあなた達がやったと思うでしょう。あえてそうしている理由はなんですか?」

犯人として名乗り出ないくせに、まるで自分達がやったと信じてくれとでもういうような言動の数々。

思わせぶりというには行き過ぎているように感じる。

「仮に、ですよ?仮にこの集団自殺が我々の手によるものであったとして、そうする目的とは何でしょうね」

またも質問をそのまま返してくる小木氏。

まるで彼らの目的を語りたくて仕方ないように見える。


フェッフェッフェと小木老人が笑った。

「言い訳のできないだいれいしょうを」

続いた小木老人の言葉に小木氏とタツヤがギョッとして小木老人を見る。

「誰もが目にする形でだいれいしょうが起こるのです」

フガフガとした喋り方だが力強く繰り返されたその言葉に、大霊障という漢字が想起される。

大霊障。

大きな霊障。

大いなる霊障。

「誰も言い訳のできぬ大霊障を。見て見ぬふりなど許されない、皆様が見ているこの状況こそが大いなる災い。ヨミなる魔女によって振り撒かれた死の穢れがこの国を覆うのです」

「先代!」と小木氏がいさめるように口を荒げるのを、小木老人が片手を上げて制する。

「お嬢さん。仮にこの事態を引き起こしたのが我々であるとして、果たして人の手によって成し得ることでしょうか」

小木老人が私に問いかける。

ヨボヨボの老人が。

「洗脳ですか。脅しですか。お金ですか。いったいどのような手段であればこれほど多くの人に自殺をお願いできるのでしょうか」

ヨボヨボの老人がフガフガと喋っている。

ただ喋るだけでも大変そうな様子で、だがその言葉はとても力強く、簡素で。

「我々は日本国を呪詛しております。そしてヨミなる魔女があなた達を死にいざなう。誰もが見えるやり方で、誰も逃れられぬよう無差別に」

小木老人の悪意が伝わる。

直接的な言葉で。

仮定の話だとした上で全てを曝け出してくる。

その本気の言葉に私は気圧されている。

「多くの死がもたらされます。ヨミなる魔女によって。お嬢さん、あなたはどうしますか?」

「どう…とは…?」

かろうじてそれだけ返す。

小木老人の笑みがいっそう深くなる。

枯れ木のような外見ながら、そこらの悪霊よりもよほど邪悪な迫力に満ちている。

「どのような手段で我々を止めますか?警察に通報しますか?警察を動かすに足る法的根拠とは何ですか?呪詛をかけている我々をどのような罪で立件するのですか?ありもしない疑惑で我々を拘束しますか?」

フガフガと、それでいて朗々と。

あからさまに挑発してくる小木老人。

やれるものならやってみろと。

小木氏とタツヤも小木老人の様子に困惑しているようだ。

それまでのシラを切る態度を台無しにしているような小木老人の言葉。

皺くちゃな顔に満面の笑みを浮かべている。

「あるいは我々を呪殺するだけの能力がありますか?邪道に堕ちてまで我々を呪殺する覚悟がありますか?あなたの神はそれを良しとするのですか?」

無邪気にも見える笑顔と楽しそうな口調ながら言っていることはとんでもない。

小木氏やタツヤとは違ってこの老人は、はなから警察など恐れていないのだろう。

止めるつもりなら力づくでやってみせろと。

「…………」

呪術という非科学的な手法によって法律の外から一方的に殴りつける天道宗のやり方は卑劣だ。

それを止めるつもりなら我々も同じ土俵に上がれと煽っている。

すなわち、呪術には呪術で対抗してみせろと。

「……あなた方は卑劣に過ぎる」

私達は天道宗と戦うつもりでいた。

だがそれは悪行をやめさせるつもりなのであって、相手を呪殺したり傷つけたりするつもりはなかった。

そんな私の覚悟を嘲笑っているのだ。

「卑劣で結構。悪逆のそしりも大いに受け入れましょうとも。とうの昔に邪道に堕ちた身です。私は師の大願を果たさんと、この身を捧げて参りました。天道先生の教えに従ってこの国の大魔縁だいまえんとなり、歴史に名を刻むことに心よりの喜びを感じております」

「歴史になんか残りませんよ。せいぜいテロリストとしてヨミの名前が残るくらいでしょう」

もはやただの悪口となっているのを自覚して口の中で唇を噛む。

私を言い負かしたと満足したのか、あるいは語り疲れたのか、小木老人は楽しそうな顔はそのままに黙った。

今ならわかる。

あのクシャクシャの表情は上機嫌の証なのだ。


「まったく」とため息をついて小木氏がこちらを見た。

「私らの段取りを全て無視です。先代は昔からこんな感じでして、いやほんとお恥ずかしい限り。今のはボケ老人の戯言たわごとだと笑ってください」

そう言って苦笑してみせる。

段取りとはつまり、先ほどまでの小木氏の態度のことだろう。

あくまで「やってます感」を出しつつも決定的なことは言葉を濁す。

それはやはり警察などの介入を嫌ってのことだろう。

だからこそあからさまな嘘で集団自殺への関与は否定する。

さも「嘘ついてますよ」という口調と態度で。


『……えー……ただいま入りました情報によりますと、ビルの屋上に侵入した男女全員が飛び降りたということです。繰り返します。新宿、渋谷、池袋、道頓堀、全ての現場で全員がビルの屋上から飛び降りました。現場には警察や消防が到着しており……』


アナウンサーの淡々とした声が最悪の状況を伝える。

テレビを確認すると『集団が飛び降り。全員死亡か』というテロップに代わっていた。

小木氏が満足そうにフムと鼻を鳴らした。

「いやはやなんとも、本気で行動する人間に対して警察は頼りないですなあ」

どこまでも他人事の口調で呆れたように言う。

さて、と小木氏が続ける。

「どこまで話しましたか?ああそうそう、仮に我々がこの騒動を引き起こしているとして、どのような目的があるのか、それをお聞きしたんでした。篠宮さん、我々の目的とはなんだと思いますか?」

「…………」

改めて踏み込んできた。

あくまで自分達では明言せず、私の考察という形で彼らの目的を語ろうというのだろう。

そしてOH!カルトを通して彼らの主張を伝えようとしている。

そのための取材なのだ。

それに私はまんまと乗ってしまった。

取材自体は是非も無いことだが、彼らのスピーカーとしてうまく使われてしまったのは否めない。

「…………」

だがこちらとしても望むところだ。

天道宗の目的を明らかにして、それに対抗する世論を作る。

それは変わらない。

私は頭の中を再び整理する。

悪霊による結界を構築して、さらなる陣を張るぞと国民を脅す、あるいは誰か特定の勢力を牽制する、そんなような目論みだと思っていた。

だが先ほど小木老人が口にした大霊障という言葉。

その意味するところとは?

ヨミによる集団自殺が大霊障?

だとしたら結界の必要性は?

小木氏の質問に答えながら考えを整理する。

「あなた達のやっていることはこうです。悪霊による大掛かりな結界を構築して、日本国に対して継続的に呪詛を仕掛ける。それと並行してヨミによる集団自殺で国民を脅す。将門の結界を壊すかのような陣を敷いている。他にもさまざまな陣を仕掛けているし、これからも大規模な陣を構築して大霊障と呼ぶにふさわしい厄災をもたらそうとしている。誰もが目にする形で」

天道宗のやっていることはバラバラだ。

「あなた達の呪術には『終わり』がない」

私の言葉に小木氏とタツヤが目を光らせる。

「これを達成したら終わり、という着地点がない。投げっぱなしで後始末をするつもりがない」

小木老人が口をニイと広げる。

「ヨミによるテロ。日本国を呪い続ける撤去不能な五芒星。武蔵野の大怨霊である将門を封じる結界を壊しかねない陣。そしてさらなる厄災を招く陣。それら全てをまとめて大霊障と呼ぶ」

フェッフェッフェと小木老人が笑う。

悪意を隠そうともしない。

「あなた達の仕込みはすでに完了している。この国を守護している結界の破壊とヨミという脅威。それがもたらす混乱そのものが着地点。破壊と混乱があなた達の目的、なのではないですか?」

満面の笑みで大きく頷く小木老人。

楽しそうに目を輝かせる小木氏とタツヤ。

最悪の予想だがしっかり当たっていたということだろう。

「とても素晴らしい考察だと思います。仮に篠宮さんの考察の通りだとするなら、大変な事態になっているということですね」

「ええ、そうですね。あとは新たな陣を構築するなり、ヨミによるテロを繰り返すなり、あなた達のやりたい放題ということになります」

「ではどのようにしてそれらを防ごうとお考えですか?」

あくまで仮の、という但し書きを付けつつも、止められるものならやってみろと煽ってくる。

が、私はそれに乗ることはない。

「正直言ってどうすれば良いのか全然わかりません。もちろん警察には通報しますし誌面でも告発します。それでもあなた達を止められるとは思えない。呪術には呪術で対抗しろと仰ってましたが、専門にやってるあなた達に呪術で勝てるとも思わない。私達に出来ることといえば皆に相談して知恵を出し合うくらいしかないですね」

私があっさり上げた白旗に小木氏が面食らったような顔をする。

しかし小木老人はいっそう楽しそうに肩を震わせた。

そして、言った。

「とても素晴らしいですね、お嬢さん。他力を自力とすることこそ人間たる所以ですよ。自分の力を頼りにすれば必ず足を掬われるものです。その年でそこまで達観しているとは、あなたのご両親はとても聡明で、あなたを大切に育ててくれたのですね」

まさかの天道宗に両親を褒められるという展開に驚きつつも、どうやら間違ってはいなかったようで安心する。

「天道宗さんの言う大霊障とは、あなた達がこれまで仕込んできた悪霊と結界。それらを使って行う霊的テロリズムの全てを総称している言葉だと考えています」

口から出る言葉で思考する。

完全なアドリブ。

もはや喋っているのが私かどうかもわからない。

「つまり大霊障とはあなた達であり、哀れな霊を捕らえて妖化させている悪霊もあなた達であると。先ほど大魔縁と仰ってましたが、大魔縁とは生きながら天狗になった存在であると言われています。あなた達の目的とは自らが大魔縁となりこの国を呪う怪異となること。そしてすべきはこの国に対する破壊と混乱であると、私はそのように思います」

パチパチパチパチと小木老人が大きく頷きながら手を叩く。

まだ何かぶっちゃけそうな老人の様子に小木氏が慌てたように口を挟む。

「大変に興味深い仮説だと思います。篠宮さんの仰る通りでしたら我々はとんでもない輩ということになりますが、我々としてもまともに信仰をやっているわけで、少ないながら信徒さんも抱えている。あまり不用意な発言はご遠慮いただいた方がよろしいかと思いますね」

煽ってきたのは自分だろうに、小木氏はこの話題を締めにかかってきた。

私としてはこのまま喋り続けたかったが、テロリストを煽ってもロクなことにはならないだろうと堪える。

「もうちょっとお話していきたいところですが、予約した電車の時間が迫っておりまして、今日はここまでとさせてください。ボケ老人の体力も心配ですし、もしよろしければ今度また取材をお願いできればと思っております」

そう言って立ち上がる小木氏。

これ以上小木老人にぶっちゃけられると困るのだろう。


「最後に確認させてください」

私は今日の要点を確認すべく声をかける。

「天道宗さんとしては、丸山理恵さんと個人的な関係があったものの、ヨミ事件には関与していないし丸山理恵さんがヨミになった理由もわからない。霊を集めて悪霊に変化させる箱を作っているけどそれは長い目で見ると霊のためであると考えている。さまざまな人を脅迫したり鎮物をして邪悪な結界を構築したのは天道宗さんではない。天道宗さんとしては今後大霊障なるテロ行為を行う予定だが公式には認められない。こんな感じでよろしいでしょうか?」

悪意に塗れた私のまとめ方に小木氏が噴き出す。

「とんでもない三流記事でよければそのようにお書きください。我々としては仮定の話には否定も肯定もしませんが、あくまで篠宮さんの想像の範疇として考察を述べられる分には全く問題ありません」

そう言いながら立ち上がる小木氏。

タツヤも立ち上がって小木老人の車椅子に手をかける。

「これは完全にオフレコでお聞きしますが」

最後の最後にダメもとで声をかける。

天道宗の3人が顔を私に向ける。

「あなた達の最終的な目標、大霊障の先にあるのは何ですか?」

「…………」

小木氏が目を細めて私を見る。

タツヤは無表情で、小木老人はクシャッと顔を歪めた。

「オフレコとは完全に非公開でお聞きするということです。お答えいただいたことは記事にもしませんし、お望みなら他言もしません。この場にいる私達だけに教えてくれませんか?」

小木氏の目を真っ直ぐに見つめる。

倍以上も年の離れたテロリストの親玉に精一杯の気合いを込めて向き合う。

そんな私に何を思ったのか、小木氏がわずかに口の端を引いた。

「何も難しいことはありません。あるべき姿に立ち返ればよいのです」

「…………」

また思わせぶりな言葉だが、今までの思わせぶりとは少し違う気がする。

そう感じた。

「では今日はこれで失礼します。とても有意義な時間でした。ありがとうございます」

そう言って大袈裟な身振りで頭を下げて、小木氏はドアに向かって歩き出した。

その後に小木老人の車椅子を押してタツヤが続く。

見送りも挨拶もせず、私は彼らが会議室を出ていくのを黙って見ていた。


「いや~、ほんととんでもねえ奴らだな」

天道宗の3人が出て行ってさらに数秒の沈黙の後、神宮寺さんが大きく息を吐くように言った。

「今日だけで何人死んだんだ?まさかここまでやるとは」

そう言ってつけっぱなしにしてあるテレビを見る。

画面の中では引き続き集団自殺のニュースが報じられている。

「篠宮さんごめんね。今日は私なんの役にも立たなかった」

和美さんが声をかけてくる。

今日のインタビューで喋っていたのはほとんど私だけで、時々神宮寺さんが話に入ってきたが、和美さんは怒りをこらえていたのか全く話に入ってこなかった。

そのことを言っているのだろう。

「いやいや、今日は私が彼らを取材するために来てもらったんですから。居てくれただけで助かりました」

そう答えながら和美さんに顔を向けると、和美さんも疲れた顔をしていた。

「まさかまた集団自殺をやるとはね。しかもあの様子だとこれからもやるってことでしょ?」

そう言ってため息をつく。

「……やるでしょうね。止められるもんなら止めてみろって言いに来た訳ですし」

答える私の声もため息になってしまう。

「篠宮さんの予測どおりになっちゃったね。第二第三のヨミが出るっていう」

「ですね。しかも一気に4か所。考えてた最悪の想定をさらに超えてきました。これはもう完全に宣戦布告ですよね。ヨミが単独犯じゃないってバラしたわけですから」

「だよねえ。これからどうなるの?」

「全然わからないです。さすがに今度は警察も徹底的に調べるでしょうし、今日のインタビューを記事にしたら今までとは比べ物にならない反響になると思いますけど……」

言いながらまたため息が出る。

「今は正直言ってお手上げ状態ですね。ひとつひとつ個別に対処していくしかないって感じです」

そしてまず考えなければいけないことがある。

「まずは今日のインタビューの検証からですね」

もしも今日のインタビューの提案を受けなかったら、集団自殺は起きなかったのではという可能性。

「篠宮さん?」

腹の底に重く沈み込む不安。

もしも私のせいで何人も死んだのだとしたら。

「ちょっと、篠宮さんっ」

和美さんが私の肩に手を置いて顔を覗き込んでくる。

「大丈夫?顔色悪いよ?」

その声に顔を上げてテレビを見る。

相変わらず集団自殺のニュースが流れている。

和美さんの声に神宮寺さんもジローさんも阿部さんも私に顔を向ける。

「いやー、もしかしてコレ、私がインタビュー断ってたら起きなかったんじゃないかと思うと……」

「…………」

私の言葉に和美さんが息を呑んだのがわかった。

「違うでしょ、篠宮さん」

和美さんの代わりにジローさんが声をかけてくる。

「コレをやったのは天道宗であって篠宮さんではない。篠宮さんはアイツらと対決する立場なんだから、インタビューするのは必然だったわけでしょ?」

「…………」

ジローさんが何を言いたいのかはわかる。

単純に私の気持ちの問題だと。

「仮にインタビューをしなかったとしても、天道宗はヨミを使ってテロを続けるって宣言してるんだから、遅かれ早かれ起こってるはずだよ。だから篠宮さんが悩む必要はない。そうでしょ?」

そう言って片眉をヒョイっと持ち上げて見せる。

「…………」

意味深な仕草は確信犯だぞという意思表示だろう。

この前ジローさんに私が言ったことをそのまま言い返されてしまった。

それがおかしくて吹き出してしまう。

「そうですね。ジローさんの言う通りです」

私達を牽制するためだけではない、彼らは日本国にテロを仕掛けているのだ。

タイミングを合わせられただけで萎縮していてはそれこそ彼らの思う壺だ。

「ありがとうございます。いやあジローさん、良いこと言いますね~笑」

そう言いつつ近寄って、肘でジローさんの腕を突っつく。

「そうでしょ?いや俺も誰かに似たようなこと言われたことがあってさ。篠宮さんがヘコんでるの見てドヤ顔したくなっちゃったわけ笑」

心配かけたと思って周りを見ると、コロコロとテンションの変わる私に皆が苦笑していた。


「そんで、今日はこれからどうする予定なんだ?」

和美さんとジローさんに励ましてもらって元気が出たところに神宮寺さんが声をかけてきた。

「さっきのインタビューについて皆で検証したら、私はこのまま編集部で今回のインタビュー記事を作っちゃおうと思ってます」

久しぶりの出社なので溜まっている雑務も消化しなければならない。

「俺と阿部ちゃんも民明放送に戻ってデータの取り込みとチェックですね」

休日出勤のジローさんと阿部さんをこれ以上拘束するのも申し訳ない。

「そうか。てことはこの場は一旦解散だな」

「あら、それなら神宮寺さん、この後ちょっとご一緒させてもらってもいいですか?」

和美さんの目が好奇心に輝いている。

怪談ナイト騒動の時に神宮寺さんの術を見た時と同じ目だ。

きっと根掘り葉掘り聞きたいに違いない。

「ああ、それは全然構わないよ」

そう言ってから私に目を向ける神宮寺さん。

「どうよ篠宮さん、俺、実はモテモテなんだわ」

その言葉に和美さんは「なに言ってんだコイツ」という顔をしていた。

「はいはい。夕飯までには帰ってきてね、お爺ちゃん」

私もいつものように適当に返す。

今日のインタビューとヨミによる集団自殺。

これからもテロを繰り返すと予告されたわけだ。

改めて天道宗の脅威を目の当たりにして、暗く沈んでしまいそうな心を無理やりにでも持ち上げる。

萎縮してしまったら天道宗の思う壺。

そう心に念じてから元気を振り回す。

それから私達は今日のインタビューで感じた天道宗の印象や思惑を話し合った。


「1番ヤバいのはあのジジイだな」

こちら側のジジイである神宮寺さんが小木老人の印象を口にする。

「肝の据わり方もそうだが、老い先短いのを自覚してるから無茶もするだろう。下手すりゃ自分の命すら呪術のタネにしかねない怖さがある」

「あの男、タツヤ。丸山理恵さんから聞いてた以上にクズっぽかったね。ヘラヘラヘラヘラ。上っ面の笑顔が気持ち悪くてずっとぶん殴りたかった」

和美さんはやはりタツヤへの怒りをずっと押し殺していたようだ。

全然押し殺せてなかったけども。

「でも今日のインタビューってぶっちゃけ犯行声明みたいなもんですよね?これ警察に渡したら流石に捜査されるんじゃないですか?」

阿部さんは撮れ高に満足してハイテンションになっている。

「先代本部長の爺さんも言ってたけど、法的根拠の部分でどうなるかが微妙だよね。天道宗だって弁護士を用意してるだろうから、一時的に勾留できたとしてもせいぜい数日でしょ?ヨミと天道宗の関係をきっちり解明できるのかな」

「そもそもこっちの言い分に警察が聞く耳を持ってくれるかも微妙だしなあ」

ジローさんの意見に神宮寺さんがため息を吐くように返して話が途切れた。


『……えー、最新の情報が入ってきました。新宿、渋谷、池袋、道頓堀。全ての現場において黒いワンピースの女が屋上にいるのが目撃されたということです。視聴者から提供された複数の動画にも同様の女性が映っており、今年○月に起きた連続飛び降り事件との関連が予想されます。繰り返します……』


「これで明日からまたヨミヨミヨミって報道になるわけか。上手いことやりやがるなあ」

神宮寺さんが呆れたように言う。

「単なる自殺テロじゃないですからね。謎の女ヨミが多数の人間を自殺させている、つまり無差別殺人の犯人が捕まってないわけですから、明日から新宿とかに行く人が減るかもしれないインパクトだと思いますよ」

私の言葉に神宮寺さんがうんざりした顔を向けてくる。

「実際のところどうなんだ?ヨミはマジで思い通りに人を自殺させられるバケモンってこと?」

「わかりません。けど、さっき先代の本部長が言ってたことが引っかかってるんです」

「……というと?」

「老人はこう言ってましたよね?

『洗脳ですか。脅しですか。お金ですか。いったいどのような手段であればこれほど多くの人に自殺をお願いできるのでしょうか』って。

自殺をお願い、あるいは強要、する手段なんてない、って言ってるんです。人間にそんなことはできないと。さっきは神様的な存在の力を借りて他人に自殺を強要してるんだっていう意味で聞いていたんですけど……」

「自殺は強要できない。にもかかわらずヨミは人を殺してる。そのカラクリだよなあ」

「タツヤが言ってたネット担当の仕事、覚えてますか?」

「あん?」

私はタツヤの気障ったらしい口調を再現する。


『お手伝い出来そうなことがあれば声かけたり、逆に協力してくれそうな人がいたら声かけたり、まあそういう地味なことをやってます』


「自殺は強要できない……協力してくれそうな人に声を……ああそうか!死ぬつもりの奴らを集めて同じ場所で死んでる、ってことか!」

「そう考えると辻褄が合うんですよね。自殺をお願いしてるわけじゃない。我々は人を殺していない。そういう言い訳が成立してしまう」

「おいおいなんだよ。随分とお優しいテロリストだな。てことはあれか?ヨミには人を自殺させる力なんてない。ただそう見せてるだけだってか?」

「でも丸山理恵さんに取り憑いていたあの霊がそんな器用なことできるかな」

和美さんが疑問を口にする。

「わかりません。ただしヨミに関しては『思い通りに他人を自殺させる能力なんて無い』と考えていいと私は思います。もちろんただの思いつきなので検証する必要はありますけど、そうであるならギリギリ呪術とか悪霊の範疇のような気がするんですよね。それ以上はもう本当に神様とかのレベルになってくると思うので」

思い通りに人を自殺させるバケモノなんて、とてもじゃないが人の手に負える相手ではない。

それこそ歴史上の大怨霊のような存在でもない限りあり得ないだろう。

それは天道宗も同じで、そんなバケモノを使役できるような術者なんているはずがない。

それこそ呪術全盛の中世にだってそんな記録はない。

過去に無かったものは今あるはずがない。

こと呪術に関しては現代が過去より優れているはずがないからだ。

「呪術という道が廃れてしまった現代において、過去より優れた呪術が存在する可能性よりも、天道宗が何かしらのトリックを使って我々や世間を欺いている可能性の方がよほど現実味があると思うんです」

「たしかになあ。そう考えると、量産できるヨミにそこまでの力は無いと考えるのが妥当か」

「ただし私達がそう考えてるとしても、世間は全く騙されてるわけですから、自由自在に人を殺せる魔女としてヨミを恐れると思うんです。しかも実際ヨミの体にはタチの悪い悪霊が取り憑いている」

「あーなんかこんがらがってきた」

神宮寺さんがガシガシと頭の後ろを掻く。

「あくまでそう見せてるだけだとしても、やり方が巧妙でわかりづらいし、もし仮にヨミを捕まえてもじっくり検証しようとする人なんてなかなかいないでしょうから、世間の認識としては恐るべき魔女ヨミに対する恐怖は定着しちゃうでしょうね」

「だよなあ。いくら警察でも自分を殺すかもしれねえ魔女を検証したいとは思わねえよな。最低限の聴取だけやって精神病院行きってところか」

「そうこうしてるうちに次のヨミ、その次のヨミが現れるわけですからね。その時点で警察もヨミは使い捨ての人間爆弾だって気づくでしょう」

「人間爆弾。いやな言葉だねえ」

私の暴言に神宮寺さんが顔を顰める。

口に出した私自身、自分の口の悪さに驚いた。

「すいません。口が過ぎました」

「いや。言い方は悪いがまさにその通りだと思うよ。天道宗の連中の言い分がどうであれ、人間をそんなふうに使う時点で最悪の連中だよ」

「そして天道宗が悪意のある結界を構築して日本国を呪ってるのは間違いありません。老人も明言してましたし。ヨミ自体はある意味での『見せびらかし』だとしても、彼らの目的である破壊と混乱、その手段としての大霊障は既に始まっていてこれからもっと続きます。私達はそのひとつひとつを冷静に対処していくしかない」

「いや参ったねえ。ヨミだけでも対処のしようがねえってのに、悪霊の結界のこともある。しかも連中のやる気次第でそれが増えてくってか。こりゃ本気で呪殺でも仕掛けるしかねえかもな」

「できるんですか?そんなこと」

「いや俺にはできねえ。そういったことを生業にしてる連中を知ってはいるが、天道宗とどっこいのイカれた奴らだから関わりたくはねえな」

「この件が片付いたら是非とも詳しく聞かせてください」


そんなことを話し合ってから、私達はそれぞれの予定を消化するために解散した。

久しぶりの編集部で自分のデスクに荷物を置いて周りを見る。

編集部の同僚達はみんな新たな集団自殺の内容確認に躍起になっている。

編集長のデスクに向かい、ざっくりとしたインタビュー内容と、今日起きた集団自殺も天道宗の仕込みであることを伝えると、編集部内の空気が固まった。

そんなヤバい奴らがつい先程まで会議室にいたのかと顔を青くさせる同僚もいれば、許せないと声を上げる同僚もいる。

「まさかここまで来てビビったりしませんよね?」

編集長に念を押す。

眉間に皺を寄せながらも、編集長は次の特集は天道宗のインタビュー記事でいくと宣言した。


続きます。

お久しぶりです。

ようやく更新できました。

今回は天道宗との初めての対話となります。

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[一言] 来月号は対談録画DVD付録がついてくるよ!嘘
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