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今日の私はやる気に満ちている。いやもう、やる気しか感じられない。純度百パーのやる気に満ちたスライム。
(カブ草を刈りまくる!)
それ以外のことなんて、全て些事。ただひたすらに目的地へ向けて歩を進める―
「そう言えばさぁ、マリちゃんの『フォロワー承認』って、スライム以外にも使えたんだね。私、てっきりスライム専用かと思ってた。」
「…うん。」
(あれ?)
マリちゃんが、ユージーをチラッてした。後ろめたさタップリに。
(うん。これはアレだ。)
「…ユージーは知ってたんだね?」
「…まあ、な。」
「ふーん。私だけ知らなかったんだ。教えてもらえなかったんだ。ふーん。ほーん…」
疎外感から来る一抹の寂しさを「不満ですが、なにか?」という態度で表してみる。結果、ユージーには無視されたが、ヒナちゃんが「ヒナも知らなかったよ」って一生懸命慰めてくれた。ヤバい、うちの子がマジ天使の可能性が出てきた。
「…シノさん、あの、私、洞窟居た頃とか、あと、最近だとヒナちゃんと遊んでる時とかに自分のスキル、色々試してみてて…」
ヒナちゃんの優しさに感極まってたら、マリちゃんはマリちゃんで一生懸命説明を始めてくれる。こんな大人げないスライムの茶番に付き合ってくれるJKとか居るの?って、戦いた。
「それで、あの、『フォロワー承認』は種族とかレベルは関係ないんだけど、私に興味、くらいは持ってくれてる相手にしか効かなくて…」
「興味?」
「うん。好意まではいかなくてもいいみたいなんだけど、こっちに脅えたり、全く興味無さそうなモンスターとか動物には効かなかったから、多分、そう。」
「へえー。」
「逆に、最初はこっちに興味無かったり、私よりレベルが上の子でも、餌付けとかで懐いた子は承認出来るようになったから…」
「なるほどねー。」
面白いな、と思う。あくまで相手の能動、ベクトルが向けられてから有効になるスキル。だから、「承認」なのか。
「…あの、だけど、結局それだけって言うか、だから何?って感じのスキルだから、ユージーには一応、報告したけど、何か、みんなの役に立つわけでもないし…」
語尾がゴニョゴニョってなっちゃったマリちゃん。自信が無いのか何なのか。これは、マリちゃん自ら、スキルについてユージーに口止めしてたんじゃないかって気がしてきた。
(…スゴいと、思うんだけどなぁ。)
スキルの有用性云々よりも、自分で色々試して調べてわかったってことを、もっと誇ればいいのに。思考を止めなかった自分をもっと自信満々に、どやぁって。
「…マリちゃんのスキルって、人間相手にも効くのかなぁ?」
「え?どうだろう?…人間相手に試したことは無いから。わかんない。」
「フォロワー承認した相手なら識別出来るって言うのは、それで相手の個人情報、レベルやらスキルやらまで見れるってことなんだよね?」
「…えっと、種族とレベルと、後は名前があれば、それも。」
「うんうん。じゃあ、それでさ、少なくても友好的な人間のレベルとかは知れるじゃない?友好的なら、スキル使ったのバレても瞬殺ってことは無いだろうし、それで『人』の強さの大体の平均値とかも分かれば、」
「それは、…どうだろうな?」
「…」
日頃使わない脳みその領域使って精一杯考えたアイデアだったのに、ユージーが疑問の形をとった否定をぶっこんできた。
「…どうだろうなって、何がどうなの?」
「まだ確証ある訳じゃないが、一つ気になるってか、不安要素があんだよ。…そこがハッキリするまでは、少なくとも人間相手にフォロワー承認ってのは止めといた方が無難だ。」
「うーうー。」
ほのめかし反対。「もっと、分かりやすい言葉での断定を求める」って主張したら、「確証無さすぎて言いたくなかった。けど、お前は暴走しそうだから止めた」という、理不尽極まりない回答を頂いた。それが、ユージーの選択か―
じゃあ、まあ、仕方無いんで、純度百パーのスライムに戻ることにして、また、黙々と目的地へと歩を進める。距離がそこそこあるから、ヒナちゃんをチアアップして、たくさん誉めて、たどり着いた一面の花畑。
「うん!一面過ぎてカブ草が見えない!青、邪魔!けどアッチだよね!方角的に、確かアッチの方だった!」
転がる勢いで花畑を通過して、昨日、カブ草が群生してた辺りまで駆け抜けた。
原っぱって、何でこう、人を開放的な気分にさせるのか。置いてきた三人に、「ここだよー!」ってやろうとして、気がついた。木立の奥から感じる複数の視線。葉ずれの音、少なくない数―
『っ!ユージー!止まって!!』
『ああ。…居るな。二十近い…』
『っ!?』
隠れる気が無いのか、木々の間に垣間見えるのは、黒い蜘蛛脚。昨日遭遇したばかりのモンスターの特色ある身体の一部―
(…待ち伏せ?騙された?嵌められたってこと?)
『っ!?』
だったら―
『ユージー!襲われたら、取り敢えず一気に水で流すから!その間に逃げるか、挽回策!』
『シノ!待て!』
ユージーの制止と同時、木々の奥の影が動いた。




