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スライムクラスタ転生~異世界も みんなで渡れば 怖くない と思ったけど スライムだからナチュラルに死にそう~  作者: リコピン
第二章 人化成功(一部スライムを除く)、冒険者デビュー
75/149

3-3

―信じられない


自分の引き起こした大惨事が信じられずに、目の前の惨状から目を背ける―


でも、気になって、もう一度、チラッと見た。


(うん。やっぱり、大惨事。)


ジャイアントビーの巣があったはずの巨木は根本から倒れ―多分、枯れてたから根が弱ってたんだと思う―、あったはずの蜂の巣は跡形もなくなり、濡れた地面には、ただ点々と、ジャイアントビーの亡骸が転がっている。


(うん。それも、わりと広範囲に。)


「…」


「…ユージー?」


隣で、人化してるはずなのにスライムみたいにプルプルしてるユージーに声をかけてみる。


「…お前は、」


「?」


「っ!お前は!濁流で手を洗うのかぁ!?ああ!?」


「ぎゃー!!イタいイタい痛い!止めて止めて!」


ユージーがグリグリしてくる。核をグリグリ。


「わざとじゃない!わざとじゃないの!攻撃しなきゃって思ったら力が入りすぎたの!初めてだったから!加減が難しかった!」


「…」


想定を越える量の水が滝のように流れていったのは、初心者ゆえのミステイクだとアピールすれば、ギリギリしていたユージーの握り拳が徐々に弛んでいき―


「それに、だって、ユージーが。別に、倒してしまっても構わんって、」


「倒すだけならなぁ!」


「痛い痛い痛い!!」


「あんなに勢い良く洗い流しやがって!こんだけ散らばって、どうやって針と魔石回収するつもりだよ!?なぁ!?」


「怖い怖い怖い!?」


荒ぶるユージーが怖い。どうしたっていうんだ、一体。


「クソッ!何でお前は、そう!」


「なになになに!?」


「使えるスキル持ってて、何でやらかすんだよ!?もっと、こう、上手い具合にやれば、俺だって素直にスゲェと思えんのに!」


「ごめんなさい!」


やっちゃいけないやつ。何で怒られてるのかわかんないけど、取り敢えず謝る!だって、グリグリ痛い!


「っ!…はぁ、くそ、…もういい…」


「…うん?」


「…ジャイアントビー、転がってんの集めて、針と魔石回収するぞ。…マリカは、見つけたら魔石ごと食って、針だけ残しといてくれ。」


「…わかった。」


「…りょうかーい。」


力なく、一番近くに転がってる蜂を拾いにいったユージーを見送って、自分も動き出す。マリちゃんも、何も言わずに作業を始めたから、私も何となく黙ったまま、黙々と蜂を拾いに―


「っ!?っ!?っ!?」


「…シノさん?」


「ビリビリ!ビリビリ!ビリビリする!刺された!蜂に刺された!これ、まだ生きてる!」


「え?あ!ちょっと待って!ユージ!シノさんが!」


「…聞こえてる。」


視線を向けれないから見えないけど、近づいてくるユージーの足音。真後ろで立ち止まる気配に、


「ユージー!これ動けない!え?え?どうするの?どうすればいい?」


「ちょうど良かったじゃねぇか。」


「え?」


「気ぃ失うわけでもないんだな。そんだけ意識はっきりしてりゃ、自分で状態異常治癒かけれんだろ。」


「あ!そうか!そうだった!」


ビリビリして動けなくて心細くなってるスライムに対して、「ちょうど良かった」とかどういうこと!?って憤ったけど、そうだ、言われてたんだった。スキルを確かめる。


「『早く起きな、』」


「あ。ちょっと待てシノ。」


「っ!?なに!?」


止められた。早く動きたいのに止められた。え?何この人?もしかして鬼?金縛りにあった時の恐怖とか知らない系の人?


「治癒する前に状態異常チェック、あーっと、『おかえりなさい』だったか?それも試して、」


「『おかえりなさい』!はい!見えた!『状態:麻痺』ってなってる!うん!知ってた!じゃあ、『早く起きなさい』!っ!動けたー!!」


「…ちょっと待て。状態異常、『麻痺』って見えたんだな?」


「見えたよ!ユージーも調べてあげようか!?『状態:鬼畜』って出るかもよ!?」


「…」


「…」


「…あー、悪かったよ。お前がそんな怯えてるとは思わなかった。…すまん。」


「…」


まあ、正直、すっごく怖かったけど、素直に謝られたら仕方ない。許そう。けど、二度とこんな悪ふざけは―ふざけてなくても―許さない。


表面上許して、けどまだ若干プリプリしたまま、地面の上を這いずり回る。「誰だ、こんな広範囲に蜂散らかしたの」、「お前だろ」というお約束を、ツッコミまで一人セルフでこなしながら集めまくった。


ユージーの探知範囲の蜂を全て集めきった蜂の山。ついでに、マリちゃんが針の部分だけ残したその針も拾って隣に置いとく。


「…で、ユージー?これは勿論、今からこの蜂を食べるっていう解釈で間違ってない?間違ってたら、遠慮せずに指摘してくれれば、秒で修正するよ?」


「…合ってる。食うんだよ。」


うん。知ってた。


「あー。じゃあ、流石にヒナちゃん、あそこでずっと一人で可哀想だから、ユージーはあっちでヒナちゃんのご飯に付き合ってあげてよ。その間に、マリちゃんと蜂食べちゃうから。」


「いや、シノ、お前がヒナコと居てくれ。ジャイアントビーは、俺とマリカで食う。」


「え、でも…」


絵面が。蜂、大きくて一口とか無理だろうから、バリバリ食い千切ってムシャムシャしないといけないと思うんだけど―


「一度、人化を解いて食うから問題ない。…今日はほとんどMP消費してないから。後でまた、人化し直す余裕がある。…お前のMPもあるしな。」


「ああ、なるほど。」


言ったそばから溶け出したユージー。お久しぶりのチョコプリンが現れた横には、ハチマキとナイフとポーションが転がっている。


「…ユージーの主原料は、スライムとハチマキとナイフ。オプションでポーション。」


「止めろ。」


蜂の山にニュルニュルし始めたユージーとマリちゃんを置いて、ヒナちゃんの元へと向かった。







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