1-6 ユージLv.1
『次は、あー、先に、俺か?…まあ、くそっ、言い出したのは俺だからな、仕方ねぇ。…送る。』
『ん…』
ユージーが躊躇ってる?渋ってる?
そんな態度とられたら、何だ何だと、ちょっとワクワクするじゃないか。マリちゃんの意識を覗く。見えた画面。
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名前:ユージ
種族:スライム
LV:1
HP:10/10
MP:5/5
スキル:
意識共有(スライム)
開眼
????
エクストラスキル:鑑定
称号:第三の眼開きし者
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画面最下段、視界に飛び込んで来たパワーワードに、他のもの、全部、吹っ飛んだ。
『第www三wwwのwww眼www』
『…っくそ!』
毒づくユージーが更に笑えて、
『「おかん」を笑ったやつがwwwまさかのwww』
『っ!』
『第三どころかw第一も第二も無いのにwww突然のwww第三の眼www』
盛大に嘲り続けてやる。やばい、可笑しい、笑える。
『うるせぇ…。さっさと、詳細も確認しろ。』
言われたから見るけど。笑い過ぎて、集中しづらい。あ、だめだこれ。見れない。
『笑ってないで、早く見ろ!』
『はー、最高。』
何とか笑いをおさめて、どれどれ?と覗けば、
「開眼:第三の目が開く。消費MP1/秒」
『こwwwれwwwはwww』
駄目だ。ユージーが、ユージーが私の腹筋を殺しにかかってる。
『ユージーwwwやってwwwやるしかないよ、これはwww』
『お前、本当、覚えてろよ!くそっ!「ステータス」!』
さっきは、心の中で唱えるだけでいいって自分で言ったのに、叫んじゃってるし。
『開いちゃうwww?開いちゃうwww?』
ニヤニヤ見てたら、ユージーが全身ウニョンウニョンさせながら、
『お前に言われたからじゃねえよ!どんなスキルか確認するためだ!後は、MP消費して、回復時間確かめんだよ!』
ブチキレの返事が返ってきた。それを更にニヤニヤ、プルプルして煽り続けた。
けど、
『「開眼」!』
自分の浅慮を、一瞬で後悔した――
『ひっ!?』
ヒナちゃんの、小さく飲んだ息――
『っ!イヤー!!!』
マリちゃんの、甲高い悲鳴――
それに被せるようにして、本気で、叫んだ――
『ギャァァァアアア!恐い恐い恐い恐い!!』
自分と変わらぬ大きさのスライムの身体、そのど真ん中に、巨大な目玉がギョロリと一つ。しかも、どう見ても人間の、白目も虹彩も瞳孔も、バッチリある、リアルなソレが、動いてる。キョロキョロ、パチリって、
『っ!?ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!無理無理無理!閉じて!もう、閉じて!』
『…うっせーなぁ。』
最後にまたパチリ、瞬いた目が、閉じた。というか、消えた。
『まあ、五秒だから、こんなもんか?MP回復の様子見て、全回復したらもう一回、』
『ダメだ!止せ!止めろ!!』
『何でだよ?』
私の本気の制止がわからないのか!?
『メチャクチャ恐かったんだぞ!!』
『ふーん。でも、まあ、やるけどな?今、「開眼」してた時に、「鑑定」が使えるようになってたんだよ。多分、「開眼」がエクストラスキル発動の前提条件だから、確かめねーと。』
『っ!?ダメだって!マリちゃん!動画!さっきのユージーの目!動画にして送れる!?』
『…記憶から引っ張れば。正確では無いかもしれない、』
『大丈夫!あのインパクトはそうそう歪まない!上げちゃって!』
コクコク頷くマリちゃんも、思いは一つなんだと思う。あの惨事を、繰り返させちゃいけない!
『ユージー見て!鏡無いから、ユージーには皆の恐怖がわからないんだよ!見て!』
『…しつけえなー。…って、うぉっ!?』
これ、やべーなーと他人事のように感想を言う男が信じられない。
『恐いでしょう!?メチャクチャ恐いでしょう!?』
『ああ、まあ、子どもに見せるもんじゃなかったかもな。』
『私にも見せちゃ駄目だよ!』
『わーったよ。次は、一人で確認する。』
『そうして!!』
仕方ねーなーみたいな、そういう態度違うから、そういうの許されるレベルのあれじゃないから!