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スライムクラスタ転生~異世界も みんなで渡れば 怖くない と思ったけど スライムだからナチュラルに死にそう~  作者: リコピン
第二章 人化成功(一部スライムを除く)、冒険者デビュー
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2-21

マズイなーってのはわかってる。けど、円滑な職場関係を築くには上司に阿るってのも一つの手だと思うんだよね?


食べちゃ駄目だ食べちゃ駄目だと思いつつ、パート開始から一週間、毎日のように何かしらの「一口だけな?」をくれるおやっさんに逆らえず、流されるままに夜食を重ね、流石の私も気づいた。


私、愛玩され(かわいがられ)てるわ。


最近は、持ち込まれる毛皮の量も減ったらしく、「もうすぐパパ」のハンスさんは定時になると飛ぶようにして帰っていく。絶対に残業しませんマンになってしまったけれど、入れ替わりになる私に向かって「後は頼むね!」ってキラキラの笑顔で帰っていくから、全力で頼まれてあげてる。


結果、作業場にはおやっさんとスライムの二人きり。意外なことに、おやっさんはスライムと二人きりだと良く話す。


雑談?一人言みたいなもんなんだろう、「少し前に街に居たS級冒険者が、面倒な素材を大量に持ち込んだせいで難儀している」っていう「多分、うちのマスターがすみません」な話や、「ギルマスはそのS級冒険者への依頼完了報告をしにギルド本部に行ってる」って初耳話。それからユージーに関しても、「わざわざこんな小さな街で冒険者になるなんざ、どんなロクデナシかと思ってたが…」っていう、ちょっと見直したぜ話まで。


きっちり、しっかり、丁寧に仕事をこなすユージーと彼のスライム達は、その真摯な態度によって、いつの間にやらおやっさんに認められていたらしい。


そして、そのおやっさんの方も、我々に対してとっても真摯。私がスライムだからって、処理した毛皮の枚数をチョロまかしたりせず、働いた分のお給料をきちんと支払ってくれる。


だから本当は、毎日でもシフトに入りたいくらいなんだけど、パート八日目にしてとうとう、おやっさんに「今日は作業なし、休みだ」と言われてしまった。


毛皮の数自体が減ってきてたから、これは、うん、仕方ない。私の作業に問題があったわけではなくて、まだ、あと何回かは手伝って欲しいって言われたから。解雇ではない。


査定所への持ち込みからの帰り道、これから先、パートの臨時採用が終わっちゃったらどうするかなぁって考えながら歩いてて、取り敢えず一つ、浮かんだ。


『ユージー、パーティーしよう!』


『…何だ?突然。』


『まだ、ユージーとマリちゃんの「人化おめでとうパーティー」してなかったじゃない?あと、私の就職祝!』


『就職祝は違わねぇか?…大体、パーティーっつっても…』


『前は、全然そんな余裕無かったから言わなかったけど、皆でワイワイしたい。今なら、ちょっとだけど余裕あるでしょ?』


買取り再開で毛皮が売れて、生活は安定。プラスで、私のパートのお給料があったから、今の我が家の財政はそこそこ潤っている。だから、


『パーティーじゃなくてもいいけど、外食!皆で同じテーブル囲んで、同じご飯が食べたい!』


『…』


『まあ、同じテーブルは無理かもだけど、せめて椅子?クローバー亭の食堂でいいから、ね?やろうやろう!』


ちゃんと「ヒト」らしい食事を、「みんなで」楽しく、食卓を囲みたい―


『…まぁ、それくらいなら。』


『やった!』


まともな異世界料理は初めて。味はまあ、超薄味であろうことは覚悟済み。でも、料理は目でも楽しめるから。


『よし!ユージーには、ビールもつけちゃおう!』


『…旨くはねぇだろ?』


『気分だよ!気分!』


大体、スライムはアルコールで酔うのか?とか、まだそんなことゴチャゴチャ言ってたけど、そういうのもお試し。飲んでみようじゃない。「スイーツ食べたい」っていうマリちゃんに「イイね」して、私も飲んでみようかなぁって考える。


帰りついたお宿。いつもなら、お食事をテイクアウトで二階に持ち込んで夕飯にするんだけど、今日は先にヒナちゃんのお風呂。便利スライムの我々は、どういう仕組みか体表が汚れるってことがない―おかげで、皮剥作業でスプラッタになることもない―けれど、ヒナちゃんの中は別。


残念ながら部屋にお風呂はついてなかったので、大きなタライにお湯をもらって、ヒナちゃん用の浴槽代わりにしてる。ヒナちゃんはキャッキャしてるけど、その内ちゃんと手足の伸ばせるお風呂に入れてあげたいなぁ。


あれやこれやで時間を潰してから、食堂が込み合うであろう時間をずらして、階下へ降りる。既に出来上がった空気の中、目敏く奥のテーブル席を見つけた。他の席も空いてたけど、ヒナちゃんの食事の不自然さに気づかれるとマズイ。ヒナちゃんは一番奥の席に隠す作戦。


他の席では、犬系モンスターが椅子にのってテーブル上のご飯を食べてたり、蛇系モンスターがテーブルの上に乗っかっていたりして、


(うん、よし!スライム系モンスターも許される空気。)


ベンチタイプの椅子に座って、ユージーに手書きのメニューを読みあげてもらう。聞きなれないメニューに、ヒナちゃん、マリちゃんと「アレがいい」「コレがいい」って気になるものを注文して、出てきた料理を「何じゃこりゃー!」しながら、分けっこ。


椅子の上に置いてもらった料理にかぶりつく。おいしくは、ない。うん、味はあんまりしないから微妙。けど、見た目がね!ちゃんとご飯!ちゃんと料理!それだけで幸せ。


ユージーも「味がしねぇ。苦味しかねぇ」って文句言いながらもエール?ビールみたいなアルコールをお代わりしてる。酔ってんのかなぁ?文句言いながら飲み続けてるんだけど。


まあ、そんな感じのパーリナイ。食べて、飲んで、意識共有で黙々と騒いで、


『なんか、普通だ!普通に楽しい!』


『…私も。』


『ヒナも!』


『…良かったな。』


幸せだ。まごうことなき幸せ。なんか、本当、遠くなってた感じの。懐かしい、普通の生活を感じられて、幸せホルモンがほとばしってる。


けどそれも、ヒナちゃんがコックリし出した時点でお開き。部屋に戻るかぁってなった時に、こちらに近づいてきた人の気配。オーダー取りに来たのかな?「あ、(しめ)でお願いしまーす」って思ったら、お店の人じゃなかった。


テーブルの横、金髪ロングのキツメ系美女が、腕組みをしながらユージーを見下ろしている。


「…モンスター相手に一人で飲んでるとか、あり得ないんだけど。」







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