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スライムクラスタ転生~異世界も みんなで渡れば 怖くない と思ったけど スライムだからナチュラルに死にそう~  作者: リコピン
第二章 人化成功(一部スライムを除く)、冒険者デビュー
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2-19

だけど、仕事の出来るスライムは違う。


次の日の朝、ユージーは交渉の末、リヤカーを「灰鹿の肉一頭分」でレンタルすることに成功した。


テイムモンスター可のお宿であるクローバー亭では、モンスター用の(しょくじ)も提供している。モンスター用なら、「あんまり美味しくない」で定評のある灰鹿の肉も使えるんじゃない?と売り込んで、現金買取りではなく、リヤカーのレンタル料と相殺でどう?と粘ったところ、「まあ、それなら」と交渉が成立した。


これでレンタル料が浮き、鹿肉一頭分の引き取り先が決まった。正直、鹿三頭とか尋常じゃないと思ってたから助かった。


その日から始まったルーチン、ユージーの宣言通りに鹿を三頭とウサギを数頭狩って、あればカブ草を採取する。「ちゃんと食べる、活用する」を心の免罪符に狩りを続け、収支がトントン、たまに微々たる黒字に傾きかけ、冒険者で食べてけるんじゃない?って、そう思い始めた頃、新たなピンチが訪れた。…何でやねん。


「…『毛皮の買取り中止』、ですか?」


査定所に戦利品を持ち込んだところで告げられた、非情な宣言。


「うん。今日の分の持ち込みまでは買い取るけど。ごめん、明日以降は暫く買取りを中止させてもらうことになったんだ。」


「それは…」


「需要が無いってわけじゃないんだよ?ただ、持ち込み品の処理が追い付かなくてさ、本当、申し訳ない。」


そう言って頭を下げるお兄さんの向こう、作業場には、確かに灰色の山が出来上がっていて、


「本当にねぇ。もう、毎日毎日、夜中まで作業しても未だ終わらない。はは。流石に逃げ出したくなる。」


「…」


文句の一つも言いたいところだけど、お兄さんを見上げて沈黙。なるほど。これが、ハイライトが失われた目か―


「…今たまってる分の処理が完了したら、買取りも再開するから。そうしたらまた、改めてお願いするよ。」


「…」


お兄さんは再び頭を下げて、本当に申し訳なさそうにしてるし、作業が追い付かないくらい忙しいんならしょうがない、けど。


(死活問題…)


何しろ我々の生活は自転車操業。いつ再開するかもわからない毛皮買取りをノホホンと待ってられるような余裕皆無。


そして何より、漸く潤ってきていたヒナちゃんのお食事事情が―


『…ユージー。』


『…何だ。』


査定所の隅、ユージーを引っ張ってって、内緒の家族会議。


『…ユージー、私、パートに出る。』


『は?』


『パート。査定所(ここ)って人手不足でしょ?仕事が溢れてる。そしてここに、皮剥ぎに関しては、プロも認める実力の持ち主が。』


『…いや、でも…』


躊躇うユージーを説得する。


『昼は今まで通りにみんなと狩りに行くよ。で、帰ってきてからここで働くの。』


『働くって…。いや、能力としては問題無いだろうが、そもそも、スライムじゃ雇ってもらえねぇだろ…?』


『そこはユージーが何とか上手く売り込んで。そしたら、お給料ももらえるし、私が頑張れば毛皮の買取りも再開するかも、でしょう?』


『…』


ユージーの沈思黙考タイムスタート。だけど、今日は待つよ。茶化さずに大人しく待つよ。口を挟まない苦行に耐えて頑張ってたら、


『…駄目元で言ってみるか。…シノ、通訳オンにしてくれ。』


『うん!』


(おお!キリッとしたユージー!)


頼もしい!やる気だ!これは期待出来る!BGMがワイルドになった。ん?いや、これはエンディング?一仕事終えた後?まあ、いいや―


受付で、ザックのおやっさんを呼び出したユージー、すこぶる機嫌悪そうに出てきたおやっさんを隅っこまで連れ出して密談開始。


売り込みたい新人スライムを、ズズイっと押し出して、


「…こいつを雇ってくれ。ここで使って欲しい。」


「…」


おやっさんの眉間の皺と圧が、無言で増した。


「…俺が持ち込んだ灰鹿の毛皮、あんた、見たことあるだろ?あれをやったのはコイツだ。剥いだんじゃなくて、こいつに食わせて毛皮にした。」


「…」


怯まないユージーの売り込みに、おやっさんの視線が、一瞬だけこちらを向いた。


「毛皮の処理が追い付いてないんだよな?こいつなら戦力になる。剥ぎ残しだけを食うような細かい作業もこなせるから、補助としてでも使ってくれれば…」


「…駄目だ。」


「試しでいい。一度やらせてみてくれ、そうすりゃこいつの実力がわかる。」


「そうじゃねぇ。お前が持ち込む毛皮の質はわかってる。それをこのスライムがやったってんなら、まあ、能力に関しては及第点だ。ただな、作業場にスライムを入れるわけにはいかねぇんだよ。」


「…」


「ここにあんのは、灰鹿だけじゃねぇ。もっと貴重な素材も転がってんだ。下手に食われでもしたら、目も当てられねぇ。」


不採用通知の理由が不名誉すぎる。食べないのに。そんなに何でも拾い食いとかしないのに―


「…それにな、冒険者だからって、モンスターが平気なやつばかりじゃねぇんだよ。スライムなんかが作業場に出入りしてみろ、血の気の多い連中が何やらかすか…」


ちょっと、何か、今のは若干、私の身を案じてくれてるようにも聞こえたけど―?


「…査定所を閉めた後、ならどうだ?」


「…」


「作業場を閉めた後まで貴重な素材がその辺に転がってるわけじゃないだろ?閉めた後なら人目も無い。夜中まで作業やってるってんなら、その時間、こいつに手伝わせてみてくれ。」


「…」


「…」


見られてる見られてる。今度はハッキリ見られてる。キリッてしなくちゃ、キリッキリッて。キリッとしたスライム。


「…まあ、いいだろう。試してやる。…査定所は七時に閉める。その時間に、もう一度そいつを連れてこい。」


「!」


「…わかった。」


なんと、仮採用が決まった。嬉しくて、ペコペコプルプル必死に頭を下げた。おやっさんには訝しげな顔されて、ユージーには頭ガシッてされたけど、


(やったー!)


記憶にある限りで初就職!まさか、スライムの身でそんな日が来るとは。ウキウキ気分でヒナちゃん達の元へと戻る。浮かれすぎて、おやっさんに「じゃあ、また後でねー!」って振ろうとした手はユージーにガシッて止められた。


マリちゃん達に就職を報告した後も、「一匹歩きはさせない」って譲らなかったユージーによる職場への送迎(徒歩)が決まったり、「私も一緒に働く」って言うマリちゃんを、「ヒナちゃんとお留守番する人が居なくなるから」って説得したり。まあ、それなりにモメはしたけど、何とか皆に認めてもらえた夜間パート。うん、これはもう、本採用目指して頑張るしかないよね。







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