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『で、ユージー、この「魔石」って何?』
『ドロップ品。』
『え?なに?ドロップ??』
『…だったら良かったんだけどなぁ。倒しただけで落ちてくりゃあ、最高なのに。まぁ、それ言うなら肉や毛皮にしてもそうか…』
何か、急に黄昏れたユージーが、「ハァッ」てため息ついて、
『魔石ってのは、モンスターの体内にある魔力の源。強力な魔法やスキルを持つモンスターはそれだけデカい魔石を持ってて、それを素材に武器や道具を作ることが出来る。』
『へぇー。』
『…って記述が図鑑に、それぞれ「何の素材になる」ってとこまで詳しく書いてあるはずなんだがなぁ?』
『…へぇー。』
気づかなかったなー。ユージーの圧がスゴいなー。
『…モンスターの体内、心臓辺りにあることが多いみたいだが、図鑑にあんだけ詳しく「魔石の位置」なんてのが載ってるのは、…多分、まあ、そういうことだろ。』
『?』
『…倒したモンスターを捌いて、取り出す。』
『え!?うそ!?』
本気で?だって、
『に、人魚とか、ハーピーとか、魔女とかも載ってたよ!?』
『ああ…』
『…』
ウサギや鹿は頑張るって決めたところだけれど、正直「うっ」てなった。この世界のモンスターと、私の意識にあるモンスターは全然別物、なのかもしれない。けど、限りなくヒトに近いモンスターを―
『…無理かも。ごめん、今のとこ無理かも。』
『人型は、どうしてもな…。ただまあ、人型の高位モンスターなんて直ぐに遭遇するようなもんでもない。実力考えりゃあ、心配すんのは自分達の命の方だからな。…あるとしてもずっと先のこと。今はあんま考えんな。』
『うん。』
そうだった。私、スライム。ヤる心配より、ヤられる心配のが普通に高い。
『あ。てことは、私たちにも魔石があるってこと?だよね?モンスターだもんね!どこだろ?核の中とかかな?』
『「不明」だ。』
『え?』
『「魔石の位置:不明」。…核の中にあることはあるらしいが、クズ石過ぎて取り出せないって、注釈付きだ。』
『…』
クズ魔石最高やん?素材集めで狩られるスライムなんておらんかったんや。
『…シノ、お前、図鑑全然見てねぇだろ?』
『み、見てるよ!今も見てた!けど、意味わかんないとこは読み飛ばして、』
『意味わかんなきゃ聞け!そのまんまにすんな!』
『はい…』
怒られた。懐かしい感覚の怒られ方。学生時代か、ペーペー社会人の頃か。こんな感じの怒られ方をした気が、するような―?思い出せない。
『魔石の話で言えば、もう少しランク上の依頼には、魔石の納品依頼もあるみたいだな。一瞬見ただけだが、多分、Dランク辺りの依頼にあったはずだ。』
『…魔石ってさぁ、お高いのかな?』
『モンスターの種類によっては、多分そうなんじゃねぇか?』
『じゃあ、別に依頼とか関係無しにモンスター狩って、ゲットした魔石売ればいいんじゃない?そうすれば、我が家の財政難も建て直せる!』
『…無理だな。』
『なんでー!』
人型じゃないモンスターならイケる。抉り出さなくても、倒して、食べて、魔石だけ「ペッ」てすればいいと思ったのに―
『図鑑を見ろ。モンスターってのは、魔法やスキルでの攻撃手段を持ってんだよ。お前の防御力強化は物理防御しか上がんねぇだろ?魔法攻撃なんてくらったら、一発でアウトだ。』
『私のこの有り余るMPで回復しまくれば!』
『無理だ。一発でアウトだって言ってんだろーが。洞窟で死にかけた時の、あんなんが飛んでくるんだぞ?魔法防御が紙、HPがゴミのスライムじゃあ、即死だ即死。』
『…』
前回、当たり所が悪ければ本当に即死だったっていうユージーがそう言うのなら、そうなんだろう。「そんな勝算低い賭けには出ない」って言うユージーに、反論の余地なく。ベットするのが自分たちの命なんだから、そりゃそうだと大人しく引き下がる。
再び、異世界会話の習得に戻ったユージーとマリちゃん。仲良くお勉強する二人を眺めながらアレコレ考えてたら、うつらうつら。気づいたら、床で寝落ちしていた。




