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スライムクラスタ転生~異世界も みんなで渡れば 怖くない と思ったけど スライムだからナチュラルに死にそう~  作者: リコピン
第二章 人化成功(一部スライムを除く)、冒険者デビュー
55/149

2-8

ビッグ餃子を頑張って一個半食べたヒナちゃん。残りをムッシャムシャするユージーに食レポお願いしてみたけど、人化してても味覚は変わらないらしく、「汁気の無い超薄味の小籠包」という感想をいただいた。なるほど。


食費節約のため、私とマリちゃんのご飯は現地調達だから、じゃあ、次は本屋か雑貨屋だね、と歩き出してすぐ、小さめの店がいくつか並んだ長屋風の店舗の一つが本屋さんだった。奥行きもあんまり無い狭いお店に、さすがにスライムは入ってけないなぁーと店先に並ぶ商品を眺めてたら、


『ユージー!あった!あったよ!地図!』


『…ああ。いくつか種類あるな。この辺りの、街周辺のがいんだけど…』


クルクル巻いておかれてる地図。大きさが違うのがいくつかあって、その「見本」みたいなのが壁に貼られている。日光浴びて色あせしちゃってるけど、まあ、何とか読み取れる地図の一つに、この街が中心に描かれた一枚があった。


『ユージー、これみたい。この一番小さいサイズ。』


『これか…。』


クルクル巻かれた一枚を取り上げたユージーが、「『これ、いくら?』は何て言えばいい?」って聞くから、答えた瞬間、


「これは、いくらですか!?」


店先から、店の奥にいるらしいお店の人に向かって叫んだユージー。その叫びに、奥からノソノソーッとご老人が出てきてくれた。眼鏡の似合うナイスオールドが、ユージーの手にある地図を認めて告げた値段に、固まる―


『…ユージー、一万レン()だって…』


『ああ…。聞こえた。』


ユージーが、手に持ってるクルクルと壁に貼ってある「見本」を交互に眺めて、それから、見本をジーッと眺め始めた姿にハッとする。


(こ、これは!さっきの、依頼書見てた時と同じ!)


『ユージー!ダメ!それはダメだよ!?』


『…』


『デジタル万引きは、限りなく黒に近いグレー!』


『…わかってる。やってない、…まだ。』


『ユージー!?』


グラグラしてる!ユージーが、一万レンという高額商品を前に、悪魔に魂を売り渡そうと、


『…これさ?別に撮影禁止とも書いてないし、絶対バレない、バレようもないし、』


『考えて!この地図を作るために苦労した人達の労力!その人達の生活!人様の糧を奪う行為だよ!』


『…』


『見てる!ヒナちゃんが見てるよ!ヒナちゃんの目を見て、それでも出来るって言うなら、』


『はぁ。…わかってるよ、やらねぇ。』


ガックリしちゃったユージーだけど、それでも大人しく「これ、下さい」をした。それから暫しの値切り交渉の末、最終的に8000レンで地図をゲット。ユージーもちょっと復活。「最悪、一日宿をとらずに野宿すれば取り返せる」とか不穏なことを呟いてたけど、聞かなかったことにする。


ゲットした地図を早速マリちゃんにアップさせたユージー。紙の方はクルクルっと巻き直して、「ほぼ新品。これだけの美品なら高く売れるはず」とか何とか、また何か呟いてたけど、うん、流しとこう。


けど、それからわずか十分後、ユージーは最初にハチマキを買った雑貨屋で、本当に地図を売り飛ばした。3000レンで。


「予備にとっとこうよ」「いつか要るかもよ?」というこちらの言葉はガン無視。「これで実質半額。半額で新品の地図を買ったことになる」とホクホクしてらした。ついでに、地図を買い取った雑貨屋のお兄さんの方もホクホク。中古の地図はそこそこ人気があるけど、これだけの美品はなかなか出回らないらしく、「何か買うなら、まけとくよ」とのこと。


まあ、結果、ユージーは、バックパックやらロープやら火打石?やらの「初心者冒険者セット」をお兄さんに見繕ってもらい、お兄さん曰くの「超破格」一万レンで準備を整えることが出来た。ので、「とても良い取引ができました」なんだろう。多分「またの機会」もありそうだから、「よろしくお願いします」っぽい。


そんな感じで準備は万端。さあ、いよいよだね!と街を出て、ユージーの先導で歩き出した道のり。聞き流してたら言葉覚えるのも早いんじゃない?ってことで、通訳スキルをオンにして、しゃべりながら歩いてたら、何か、見覚えある―


「ユージー、これって洞窟の方。旅立ちの地に戻りつつない?」


「まあな。『薬草採取』の依頼にあった『カブ草』っての、これ、洞窟周辺に生えてたろ?マリカが画像に上げてたやつ。」


「…」


「多分、探せばもっと近くで見つかるんだろうけど、情報皆無だからな。『探知』で見つけるにしても、手当たり次第じゃ時間とMPの無駄になる。『ある』ってわかってる場所で探す方が効率いいだろ?」


そう言われて、改めて依頼書の画像とマリちゃんがタグづけしてくれてた草を比べたら、確かに同じ。見覚えはないけど、「カブ」の葉の部分にそっくりなこれは、5株1束100レンという格安報酬、「ランクF」から受けれるお仕事らしい。


(…50株で1000レン。100株見つけても2000レン。)


どう考えても完全な赤字収支。宿代にさえ満たない稼ぎに不安を覚える。その辺、ユージーはどうするつもりなのかなって聞きたいんだけど、躊躇うのは他の二つの依頼書、依頼品を見てしまったから。


「草原ウサギの肉」

「灰鹿の毛皮」


犬猫に次いで、ハムと並んで愛される国民的愛玩動物の肉と、観光地でキャッキャしながら餌やり出来る偶蹄目の毛皮を求められてる。


(…やれる?やれるかな?)


チラッとお隣、ご飯を食べて元気になったヒナちゃんを盗み見。ヒナちゃんの見てる前で、モフモフの息の根を止める瞬間を想像してみた。


(…大量出血は無いから、そこまでグロくはない、と思う…)


後はもう、ヒナちゃんがおうちや幼稚園でウサギも鹿も飼ってなかったことを祈るしかない。







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