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洞窟から三十分ほどの散策を終え―ヒナちゃんは文句も言わずよく歩いた、偉い―、たどり着いたパラドスの街。その中心部にある「冒険者ギルド」とやらが見えてきた瞬間、
『え?何あれ?ガラ、わっる!?』
『…マリカ、視線向けるなよ。』
『わかってる。』
ヒナちゃんの前なのに、第一声が思わず乱れてしまった。反省。
それでも、ギルドの建物からはみ出してる男達の姿、雰囲気が、とてもじゃないがヒナちゃんやマリちゃんを近づけられない感じのアレで、
『…何か、私イメージで西部劇。「破落戸」って難読漢字が浮かんだ。』
『まあ、自分の腕一本で身を立てるような職業だからな。』
荒くれになるのは仕方ないってことなんだろうけど、
『もっと、ノアみたいな人ばっかりだと思ってたのに。』
『え?…私、それはそれで嫌かも。』
ちょっと乙女心を呟いた結果、ナチュラルにディスってくるマリちゃんがツラい。
『…取りあえず、ギルドの雰囲気はわかった。先に宿をとるぞ。』
『…りょうかーい。』
ユージーの言葉に従って、ギルドの横を通り過ぎる。たむろしてる男達の、マリちゃんを見る目が、もう、なんか、本当に、本当に、嫌な感じだった―
そこから、更に歩いて五分程の距離にあったお目当ての宿『クローバー亭』。プンスコしてたせいで、ユージーがどんな顔して受付したのか見逃してしまったけど―通訳しなきゃなので、一応、頭の片隅で話は聞いてた―気づけば部屋割りは、ユージーとユージー以外の二部屋になっていた。
荷解きの必要も無いから、部屋を覗いた後は直ぐにユージーの部屋集合、直ぐ様の作戦会議。ギルドに入ることさえ出来なかった現状、これからどうするか―
ユージーの部屋の中、一脚だけある椅子に座るマリちゃん。難しい顔をしてベッドに腰を下ろすユージー。それから、ベッドの上で、キャッキャ跳ね回る二体のスライム。危ない、ヒナちゃんの傘がめくれそうに、
「…思ってた以上に、ギルドの雰囲気が悪い。」
あ、何か真剣な話始まった。
ベッドを下りて、イソイソとマリちゃんの元へと近づく。そしたら、膝に乗せられた。うん、確かにこっちの方が話しやすい。ありがとって抱きついてから、ユージーを振り返る。
「もうさ、いっそのこと冒険者とか諦めて、他の仕事探すとか?お花屋さんとか、ケーキ屋さんとか、」
「却下だ。まだ、定住は考えてないからな。いつ、俺の『鑑定』みたいなスキルで、正体がバレるかもわかんねぇ。対処法が見つかるまでは、いつでも逃げれるようにしときたい。」
「…わかりました。」
「それにある程度は、…いや、どうせ20までしかないんだ、レベルはマックスまで上げる。そのためには、冒険者になってモンスター狩りを生業にするのが手っ取り早いからな。」
「…了解しました。」
レベルを上げて出来ること、つまりスキルを増やしたいって言ってたユージーの考えには賛成だから、神妙に頷いとく。
「後は、狩ったモンスター、全部ギルドで買い取りってことは無いだろうから、余った部分は自分達で食えばいい。そうすりゃ、レベルアップもいくらか早くなる。」
「…」
「食い物も確保出来て、節約にもなるな。」
「…」
手元にはまとまったお金、これから仕事に就いて稼ごうって人が、ご飯はその辺で手に入れた謎の肉で済ますつもりらしい。
(…せめて火は、火は通してもらおう。)
あと、ヒナちゃんにはバランスの取れた食事を、って考えてたら、
「マリカ、お前、やっぱりスライムに戻れ。」
「何で?…私、人間が良い。」
ユージーの、説明省きまくった結論に、マリちゃんが遺憾の意を示してる。
「…部屋ん中とか、人目に触れない場所なら好きにしていい。けど仕事、ギルドなんかに関わる時は、人化は止めてスライムでいてくれ。」
「でも、それじゃあ、人間が一人しか居なかったら、ユージの負担…」
渋るマリちゃんの気持ちに―慮られてる本人は知らんが―、私がトゥンクした。けど、でも、まあ、ここは、
「私もユージーに賛成。マリちゃんも見たでしょ?あの、ヤバめな冒険業の方達。あんなとこに、マリちゃんみたいな可愛い子を放り込んだらどうなるか!もう、想像すらしたくないね!」
「…」
「ユージーの負担って話なら、マリちゃんがあの視線に晒される方が、ユージーにはよっぽど負担だと思うよ!」
「…まあ、概ねシノの言う通り、だな。ここの人間にとっちゃ、俺達は異質。ギルドじゃ、マリカは特に人目を引くだろうから、俺が側に居る限りは、スライムの方がまだ安全だろ。」
「…わかった。けど、じゃあ、部屋はどうするの?」
「部屋?」
「『人間』の私が居なくなるなら、二部屋もとるのは不自然でしょ?まさか、スライムだけのために部屋とったりしないよね?」
「…まぁ、それはそう、だな…」
「なら、部屋は一つってことね?」
「ああ、まあ…」
「それに、部屋の中ならこの格好、人間のままで良いのよね?」
「お、おう…?」
「わかった。じゃあ、部屋の中ではずっとこうしてる。」
「…」
マリちゃんにコンボ決められて、ユージーが黙した。え?本当に私とヒナちゃんの存在忘れてるの?ってくらい、見事に固まってらっしゃる。




