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スライムクラスタ転生~異世界も みんなで渡れば 怖くない と思ったけど スライムだからナチュラルに死にそう~  作者: リコピン
第二章 人化成功(一部スライムを除く)、冒険者デビュー
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1-5

タイム明け―どうせ、ノアにステータスを見られればバレるから―、ブラウには新しい通訳スキルについて明かし、ユージーとも意思疎通が可能になったことを説明した。


それに案外あっさり頷いたブラウ曰く、高度な知能を持ったモンスター間では、種族を越えた―異言語間の―意思疎通はままあること、らしい。それが他者に及ぶ、「私のスキルがユージーに影響する」というのは珍しいそうだから、この辺は私達の意識共有が関係しているのかもしれないけど。


あと、ブラウ自身も似たようなスキルで人語を話しているそうで、「これでシノも人語を解するようになるだろう」とのお墨付きももらった。ただ、千年を越えるブラウの竜生の中でも言葉を話すスライムを見たことはないらしいから、この姿でのおしゃべりは自粛。


そういうブラウの説明を一通り聞いたユージーはまた何か考え込み始めてしまって、そんなユージーをブラウがジーッと観察してから、


「…我にもあまり時間は無い。そろそろ、人化の術を授けるぞ?」


「あ、ああ。」


「お願いします!」


今回、ブラウ先生の教えを受けるのは、私とユージーとマリちゃんの三人。イケそうなら、改めてヒナちゃんにも習得してもらうつもりではあるけど、先ずは年長者三人でのチャレンジ。ユージーの作戦では、この中の一人でも人化出来ればオーケーで、最悪、後の三人はテイムモンスターだと偽ればいいからってことらしい。


気を引き締め直して、ブラウ先生に向き合う―


「…では初めに、消費魔力についてだが、これは、自身の最大魔力の一割ほどを消費すると考えておけば良いだろう。」


「一割か、デカイな…。人化していられる時間はどのくらいだ?一度の人化でどれくらい持つ?」


「魔力は、術の発動時に消費するが、術の維持には必要ない。必要なのは、魂の親和性。人の姿をどれだけ己自身だと思えるか、固着の問題だと言える。」


「…『自分をどれだけ人だと思い込めるか』ってことか?」


「そうだ。それも、なるべく具体的にな。…我が長じて後も童の姿をとり続けているのは、幼体の頃よりこの姿に馴染んでしまっておるからだ。今さら別の姿では魂が受けつかない。」


「なるほどな。具体的に描ける、『人である自分の姿』か。」


ユージーの呟きに、それってやっぱり前世の自分の姿を描くことになんのかなぁなんて考えながら、二人の会話に耳を傾ける。


「魂の結び付きさえ出来てしまえば、余程の身体的ダメージや精神的ショックを受けない限り、人化が解けることはない。」


「わかった。…まあ、取り敢えず、やってみるか。」


「ふむ。ならば、手順を教えよう。先ずは体内に巡る魔力の流れを感じろ。全身に流れるそれに、自身の形を意識しながら、到るべき人としての姿へ己が身を変じていけ。」


「ああ、ちょっと待て、そういや、人化後は素っ裸なのか?服とか、そういう…」


「必要ならば服ごと創造すれば良い。己の想像が及べば、どのような姿、どのような服装であろうと思いのままだ。」


「呪文…、詠唱とかは?」


「無いな。初めは(われ)が魔力を導いてやるが、感覚さえ掴めれば後は自身で変じられるようになるであろう。」


ブラウの言葉に覚悟を決めたらしいユージーが、大きく息をついた。ユージーと繋いでいた意識が遠ざかっていく。


マリちゃんと二人、動かないユージーの姿を固唾を呑んで見守れば、一瞬、チョコプリンが溶け出したように見えて、


「ほぅ?」


再び盛り上がっていき―


「ふむ。一度で成功するとは、なかなか…」


「…出来た、か?」


目の前、スラリとした手足のイケメンが自分の手足を唖然としながら確かめている姿に、テンションがぶち上がった。


「スゴい!ユージー!スゴい!本当に人間だよ!しかも、イケメンじゃん!」


「お、おう。」


「ユージーってイケメンだったんだね!ごめん!正直、かなり意外だったんだけど、それはそれでって、…え?あれ?」


「あ、くそっ。」


「え?え?」


褒め称えた次の瞬間、イケメンがビックリするくらいホラーな感じで溶け出して、気づけば元通り。残されていたのは、がたいのいいチョコプリンの姿。


「な、なんで??」


「…」


上手くいってたように見えたのに。自分でも敗因がわからないのか、黙り込んでしまったユージー。その目の前でマリちゃんが、スッゴくこれ見よがしのため息をついた。


「今の、俳優の『カイトウユウジ』でしょう?ユージがカイトウユウジのわけないじゃん。何で、そんな意味わかんない無茶するの?」


「え?え?」


「…」


何か、うちひしがられたチョコプリンが、ビクッて震えてから、また、ノソノソと動き出して、


「あ。」


「…」


再び現れた人の姿。今度は、ラフなTシャツ姿の、目付きの悪いおっさんの姿が―


「…うん。だよね。わかってた。」


「…何だよ?」


「いいえー?」


自分でハードル上げといて、逆ギレってどう思います?ってマリちゃんとコソコソしようと思って横を向いたら、何故か、マリちゃんが固まってた。しかも、人型ユージーを凝視しながら。


「え?え?マリちゃん、嘘でしょ?そんな、まさか。人型ユージーにヒトメボ、」


「っ!?違う!全然違う!全然そんなんじゃないから!」


完膚なきまでの否定に、ユージーがぐぬぬとなってしまっているが、私には、マリちゃんのコレは照れ隠し的なアレに見えるんだけどな。まあ、乙女的思考から黙っていようと思う。







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