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『死んだとか!勝手に決めないでよ!』
ユージーの推測に、マリちゃんが岩から出てきて怒り始めた。
『こんなの!絶対、現実じゃない!夢とか、幻覚とか!っとにかく!死んでるとか、そういうこと言うの止めて!』
『…別に、お前がどう思おうと勝手だが、俺はこれを現実だと判断して動く。どういうわけかわからんが、死んで、スライムに生まれ変わったんだってな。』
『何でスライムなんかになんなきゃいけないのよ!?』
『そんなん、俺だって知るか。』
『はーい、ストップストップ。』
ユージーに食ってかかるマリちゃん、二人の間に身体を割り込ませる。緑、水色、黄色が並ぶ。あ、くっついた。
『え?あれ?これ、大丈夫かな?混じったりしないかな?』
『おまっ!?恐いこと言うな!?』
三人の接触面を確かめてたら、二人がバッて離れた。
『ごめんごめん。投稿動画でスライム混ぜて、最終的にヤバイ色になるのとか見たことあるから。』
『お前!思い出したのか!?』
『ん?あれ?思い出した…?スライム動画は何度見ても面白いのは思い出した。いや、でも、名前とかバスに乗ってた?とかは、全く。』
『…はぁー。まあ、いいや。』
『うん、ごめんね?えーっと、そう、それで、そうだ。ケンカは良くないよって話だった。』
『…』
まあ、もう、二人とも白けちゃった感じだけど。
『ユージーは、ちょっと言い方がキツいと思う。マリちゃんはまだ高校生なんだよ?そりゃ、いきなりこんなことになったら混乱するよ。ビビるよ。もっと優しくしてあげて。』
『…』
『ユージーがこれからのこと、何とかしなきゃって考えてるってのもわかった。私も、それは賛成。ていうか、考えなきゃまずいよね。』
なんせ、よくわからん洞窟に放置。救助が無ければ、人間だったとしてもヤバい。
『だから、マリちゃん?とりあえず、ユージーの話を聞こう?マリちゃんにとっては現実じゃなくてもいいから、ここは夢の世界のままでもいいから、抜け出すまでは、ここでどう生きてくか、考えよう?』
夢の中だからって、何もせずに死んでいくのは怖いと思うんだよね。
『…おい、水色。お前さ、俺の名前、何か変な呼び方してないか?』
『え?ニックネームだよ?「UG」。』
『んな呼ばれ方したことねーよ。何だよ、その、どっかのファストファッションみたいなのは…』
『いいでしょ?』
三十三の男を呼び捨てにすることに、何故か激しく照れがあるんだ。察して欲しい。
『まあ、何でもいい、好きにしろ。…お前、本当に自分の名前は思い出せないのか?』
『うん。』
『じゃあ、適当に名前つけろよ、呼びづらい。』
『えー?何がいいだろう?』
自分の名前をつけるって、ハードル高いな。リアルで呼ばれるわけだから、あんまりだと恥ずかしい。いや、いっそ、ここは開き直ってキラキラネームを、
『…「シノちゃん」。』
『ん?「シノちゃん」?ヒナちゃんがつけてくれたの?』
ヒナちゃんが、コクコク縦に揺れる。
『ヒナちゃんの家族の名前?』
ヒナちゃんが、プルプル横に震える。
えーっと、もしや、
『…ヒナちゃんのペット、とか?』
良かった。横にプルプルだ。
『…えーっと、ヒナちゃんはもしや、私のことを知ってる?心当たりがある?』
『…』
『うーん、違うか。えっと、じゃあ、その「シノちゃん」って人に似てるのかな?』
お?お?これは、縦?小さく縦?
『そっか!うん、シノちゃんか!いい名前だね?じゃあ、私の名前は「シノちゃん」にするね?ありがとう、ヒナちゃん。』
ヒナちゃんがコクコクしてくれてる。喜んでくれてるのかな?良かった。
『…決まったな?あー、じゃー、次は、今後のこと、話すぞ。』
ユージーの声に、改めて、黄色スライムと向かい合う。マリちゃんは、まだちょっと、物理的にも距離があるけど、
『…マリカ、納得出来なくてもいいから、話だけは聞け。俺達の、命に関わることだから。』
うん、ユージーは、言い方を考えてくれてるみたい。
『俺達は、スライムだ。』
うんうん。プルプル。
『当たり前だが、俺達のいた世界にはスライムなんて生き物は存在しなかった。だから、ここは俺達の世界じゃなく、スライムみたいなモンスターが存在する異世界、そこに俺達は居る、そう仮定する。』
マリちゃんが、プルプルしてる。これは、否定、とかより、恐怖、怖いんだろうな、やっぱり。
『仮定して、こういう世界では、スライムは最弱種だと考えておいた方がいい。』
『…スライムって、積極的に殺されるの?』
『そこまではわからんが、他のモンスターや人間がその気になれば、あっさり殺される。俺達はそういう生き物なんだって考えて行動しなきゃなんない。でなきゃ、』
でなきゃ?
『死ぬな、秒で。』
おお、ヘビー。