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4-11 <第一章終>

変態金髪野郎、改め、マイマスターのノアは、どうやらあれでも忙しい身、らしい。私に幾つかの誓約をさせると、銀髪少年改め、ブルードラゴン(爺)のブラウに引きずられるようにして街へと帰っていった。「シノの仇は僕がとるから」という不穏な言葉を残して。


まあ、うちの子達を殺しかけた男達がどうなろうと知ったこっちゃないから、いいかって流して、やれやれと一息。…ついたのも束の間、今度は我が家の長男ユージーに捕まり、あれやこれやと問い詰められている内に、結局、全てをゲロする羽目になった。


『…まあ、大体の話はわかった。』


『うい。』


『言いたいことは色々あるが、取り敢えず、お前のエクストラスキル、要するに、自爆して、自分の身体で同じ群の「子」と認識した相手を回復する、ってことなんだな?』


『いえす、さー。』


『…いつ、使えるようになった?スキルの詳細がわかったのは?』


問い詰めてくるユージーの、厳しい声。


『えーっと、それは、本当に使う瞬間というか、直前。皆を何とか助けなきゃって思ったら、「あ、このスキル、そういうことかー」ってわかった。』


『…なるほど、な。まあ、一応、それで納得はしておくが。シノ、お前はもう二度とエクストラスキルを使うな。』


『…』


『あいつ…、ノアの味方をするわけじゃないが、ヒナコや俺達のためだろうと何だろうと、お前が犠牲になるような真似、二度とするなよ?いいな?』


『…』


『お前の犠牲で自分が助かったりなんかしてみろ、ヒナコやマリカは死ぬほど苦しむことになるぞ?…俺もな。…後悔しっぱなしの人生になる。だから、絶対に使うな。』


『…鋭意、努力致します。』


『…』


ユージーに、「こいつ、また使う気だな」という疑いの眼差しを向けられているけど、仕方ないじゃないか。私だって、今この瞬間は、二度と使うつもりなんてない。死ぬほど痛いぞだったし。けど、いざ同じような場面になった時に、絶対に使わないとは言い切れないから黙る。ユージー相手にこういう嘘はつきたくない。


『ハァー…』


ユージーが深く息をついて、


『…まあ、心のどっかに留めといてくれ。』


『うん。』


諦念漂う言葉には、ニッコリ頷いといた。


『…あー、で、まあ、後は、アレだ…』


『?』


『だから、その、なんだ…。あー、ありがとな、今回のこと、お前のおかげで助かった。』


『ユージー?』


『…実感無くて悪いけどよ、お前に命救われたこと、感謝してる。』


『!』


まさかここで、突然のおっさんのデレとか、


『っ!私、おかんだからね!何なら、ユージー助けたのはついでだよ?ついで!ユージーなら、ほっといても大丈夫だった気もするんだけどさ、ヒナちゃんとマリちゃんを助けるついでだったから!もちろん、これは照れ隠しだからね!突っ込まずに素直に受け取めるんだよ!』


本当、勘弁して欲しい―


『お前なぁ…』


呆れを含んだユージーの声に、ヘラリと笑って息をつく。


ここ何時間かで怒涛のように押し寄せて過ぎ去っていった出来事に、すっかり疲弊してしまっている。それが、いつも通りのユージーの態度に、漸く息がつけた。


本当に、失ってしまうかと思った―


過ぎ去った恐怖、落ち着きを取り戻し、戻ってきた現実感の中、だけど今度は、したくなかったのに自覚してしまった自分の気持ちにちょっと落ち込む。


(やだなー、こういうの。)


身体全身でついた、重いため息。


『…調子悪いのか?』


『うーん…』


こちらの身体を案じる男に、適当にふざけてみる。


『驚くほどの自分のチョロさと、落ちた恋の不毛さを嘆いてるの。』


『…ノアか。』


『…なんでわかるの?』


ふざけて吐露した心情、想いの相手をズバリ言い当てられて動揺する。


『このタイミングでわからないわけねぇだろ。お前がこっちに来て出会ったのなんて、あいつ以外は俺かガキしかいねぇんだし。』


『…じゃあ、ユージーに惚れたって可能性も、』


『やめろ、気色悪い。』


『ヒドい!』


何だその、本気でお断りします口調は!?こっちは内心疲弊しまくり、結構センシティブになってるというのに!


『…俺はお前の、「息子」なんだろ?』


『!?』


『お前が命張ってまで守ろうとしてくれた「子ども」なんじゃねぇのか?…まあ、絶対、俺のが年上だとは思うけどな。』


『ユージー!』


何か、よくわからないけど、弱ってる心にグサって来た。感極まって目の前、体積が減って高級感が増したチョコプリンに飛び付く。


『…おい、止めろ。下りろ。』


『ユージー!ユージー!』


『…なにしてんの?』


はしゃぎまくってたら、様子を見に来たらしいマリちゃんとヒナちゃん。マリちゃんの、呆れたような声。


『ユージーが!ユージーが!やっと反抗期を抜けたの!お母さん!感動しちゃって!』


『…本気で止めろ、誰が反抗期だ。』


思いっきり、ブルンって振り落とされた。地面にベシャッてされた状態でも、フツフツ沸き上がってくる「嬉しい」「楽しい」にニヤニヤしてたら、


『シノ、お前さ、前に、俺に「どこ目指してんだ」って聞いたよな。』


『うん。』


見下ろしてくる、三つのプルプル。降ってきたユージーの、真剣な声。


『俺は、地上最強は目指さない。けど、最低限、お前達、シノやマリカやヒナコの命が危険に晒されないですむ、それだけの強さが欲しい。これから先、命の危険に脅えずに生きてける強さが。』


『…うん、そうだね。それは、私もそう思う。』


というか、わかった、痛感した。強くならなくちゃ、駄目なんだって。この世界では、絶対的な安全なんてない。庇護者がいようとなんだろうと、最終的に自分達の身を守るのは自分達の力だけ。


だから―


蹂躙されることを理不尽だと感じるのなら、簡単に散る命に耐えられないのなら、強くなるしかない。


(うん、なろう。強くなる。だって…)


見上げた先、視界に映る三つの影。


これはちょっと、絶対に失えないって思うから―









<第一章終>




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