4-9 Side N
「…は?」
ベシャリと、顔に貼り付いたナニか。粘性を持ったソレが、ドロリと頬を伝い、地面に流れ落ちた。見慣れた色、水色の、
「え…?なに、コレ、え?」
腕の中、救ったはずの生き物。お気に入りだった。それが、光って、爆発して、散らばって―
「え?何?何なの?時限式の攻撃魔法?え?でも、そんな気配…」
「違う。ノア、良く見ろ。」
「は?」
ブラウの指差す先、散ったスライムの欠片が蠢いて、
「…動いてる?」
「…結合しているな。」
「は?」
蠢く欠片が、丸焦げで転がっていた他のスライムににじりより、
「…回復?復活させてるっていうの?」
他の個体を?自爆した自分の欠片で?
「っ!」
理解した瞬間、怒りで血が沸騰した。
せっかく、自分が救ってやった命を。あっさりと投げ出したっていうの?この生き物は―
「シノ!シノの核は!?」
「…そこだ。」
「!?」
転がっていたのは、今にも活動を止めてしまいそうな剥き出しの核。
気に入っていたのに。だから、救ってやったのに。助かったことを、あれほど喜んでいたくせに。それも、
(他の奴らを助けるためだったって言うの!?)
信じられない事態に、史上最高にイラついている。
「ブラウ!鱗!鱗ちょうだい!」
「…今度こそ、死ぬぞ。」
「僕の魔力で中和するから、さっさとちょうだい!」
見えるシノの体力は、残り僅か。いつ死んでも可笑しくない。いや、辛うじてでも、体力が残っていたことの方が奇跡か?この状態で、これから行う力業にどれだけ耐えられるか。だけど、勝算はゼロではない。テイム済みだからこそ出来ることがある。救って見せる。どれだけ死にかけようが、何度でも回復して。それが、どれだけの苦痛、苦しみであろうと、
「…許さない、からね?」
絶対に、許さない。このまま、死に逃げすることだけは、絶対に―




